第165話『非常食』
かの世界この世界:165
『非常食』語り手:ポチ
宿のオーナーのオジサンがハンマーが頭上で炸裂して目の前が真っ白になって……意識が飛んだ。
意識が戻ると、真っ白な中を漂っている。
もし、真っ白じゃなくて真っ暗闇で、無数の光のドットが点滅していたら宇宙空間に放り出されてしまったのかと思う。だって無重力で浮かんでいるんだからね。
自分の手足を見ると、もうベスの姿じゃない。フェンと出会った時の女の子の姿。
他に比較できるものがないので、等身大なのか1/6サイズに戻ってしまったのかは分からない。
しばらく漂っていると、頭の方から風を感じる……あ、こっちが下なんだ。
そう思って、頭を巡らすと、白の真ん中が緑が浮かび上がってきて、緑の先が細かいトゲトゲになっているので森の上に落ちているんだと分かる。
ちょっと、いろんなものが焦げる臭いと血の臭いがしたかと思うと、緑の真ん中が開けてきて、いろんな戦車の残骸が転がっているのが見える。
このままでは、戦車の残骸たちの上に墜落してしまう!
いそいでエアブレーキをかけると落下傘で降りるくらいの速度になって、下の様子が、さらにはっきり見える。
え…………!?
目を疑った。
二両の戦車に挟まれたところに大の字に転がったトール元帥。
そのトール元帥のお腹の上に裸の女の人が寝っ転がっていて、不自然にピクピクしている。
なんだろうと思っていると、トール元帥が女の人をひっくり返したので顔が見えた。
え!?
そのショートヘアーの美しい横顔は……タングリスさんだ!
関節が壊れた人形のようにグニャグニャになって、体がひっくり返されても首と手足が、すぐにはついてこないで、緩くぞうきんを絞ったように捻じれている。
何してるの……?
ぞうきんみたいになってるわけだ、タングリスさんの体から中身が抜けてきているんだ!
上向きになった身体には肋骨が浮かび上がり、腰の所も腰骨でつっぱらかって、手足の肉もしぼんでいっている。
ムシャムシャムシャ グチャグチャグチャ ズルズルズル ムシャムシャムシャ
音まで聞こえてきた。
トール元帥がタングリスさんを食べているんだ((((;'∀'))))!
ダメエエエエエエエエエエエエ!!
叫びながら落ちていくと、トール元帥と目が合ってしまった!
元帥は、タングリスさんの頭を掴んで、真っ赤な口を開けて丸かじりにしようとしているところだ。
「あ」
元帥の目が正気に変わったのが分かった。
元帥の頭に着地する寸前にタングリスさんの頭に抱き付いて横っ飛びに転げる。
すっかり中身のなくなったタングリスさんは空気の抜けた浮き輪を捩じったみたいになってしまっていた。
捻じれタングリスさんを体の後ろに隠すと、元帥が上半身を起こした。
むかし見かけた時ほどじゃないけど、それでも起き上がった上半身だけでも二メートルほどの大きさがある。
正直怖いよ(;'∀')。
「すまん、あやうく全部食べてしまうところだった」
「な、なんで、こんなことを!?」
「タングリスと、タングニョーストはわたしの非常食なんだよ」
「カロリーメイトですか(^_^;)」
「大丈夫、骨と皮が残っていれば再生するよ……おまえは、ポチか?」
「う、うん……あ、あたしは食べられるために戻ってきたんじゃないからねえ!」
「タングリスとタングニョーストの他は食べないよ。さ、タングリスをここに入れてくれ」
元帥はポケットからエコバッグみたいなのを出した。
「そのままでは、みんなビックリするからな。なに、時がたてば回復して出てくるよ」
骨と皮になったタングリスさんを詰めていると、どこかに隠れていたのか、四号のみんなが集まってくるところだった。
☆ ステータス
• HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
• 持ち物:ポーション・300 マップ:13 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
• 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
• 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
• 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
• オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
• テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
• ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
• ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
• タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
• タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
• ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
• ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
―― この世界 ――
• 二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
• 中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
• 志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
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