第140話『パラノキアの幽霊船』
かの世界この世界:140
『パラノキアの幽霊船』語り手:テル
体が夜を欲している。
R18的な言い回しだが、そんな意味ではない。
ヘルムの守護神ヤマタが活動を停止して地上から光が無くなった。
そのピンチヒッターに世界樹ユグドラシルの三神の一人ヴェルサンディが現れたのだが、いかんせんヴェルサンディは現在の時間を司る女神。過去の時間を司るウルズ、未来の時間を司るスクルドの三神が揃わなければ時間は動かない。
我々は世界樹の島ユグドラシルを目指して船出した。ウルズ、ヴェルサンディの二神を起こすためだ。
当直を終えてキャビンに戻るのだが、なんせ二百トンのフェリーボート。駅の待合室ほどでしかないキャビンはカーテンを閉めても真っ暗にはならない。アイマスクなどもしてみるのだが、体が夜とは認識しないのだ。露出した手足だけではなく、服を通しても光は感じるようで、熟睡することができない。
エンジンがうるさいから!
ケイトは言う。たしかにマーメイド号のエンジンはうるさいし、振動もハンパではないが、四号のそれと比べるといい勝負だ。それでも四号の狭い車内で睡眠はとれた。
「おい、次の次の当直だろ、そろそろ起きておけよ」
ケイトの方を揺さぶる。
キャビンに戻ったら、次の次を起こすことになっている。起こしておかないと交代の時にブリッジが無人になる時間ができてしまうためだ。
……ところが、ケイトは起きない。
あれほど「熟睡できない!」と文句を言っていたが、疲労のレベルが高くなると自然に眠れるのだろう。これが子どもの健康さだ。他の者を起こしてもまずい、時間になったら起こしてやればいい、どうせ微睡む程度の眠りしか得られないのだからな……。
そろそろ起こそうかと体を起こすと、スピーカーからタングリスの声がした。
――テル、ちょっとブリッジまで来てくれ――
わたしが眠れないでいるのはお見通しのようだ、ケイトをそのままにしてブリッジに向かった。
ブリッジへのラッタルに足を掛けたところで気づいた。左舷十時の方角に見覚えのある船が見えるのだ。
パラノキアの巡洋艦……
シュネーヴィットヘンを襲ってきた巡洋艦……たしか撃沈させたはずなのに。
一人では判断できない、一気にブリッジに向かった。
「同型艦か?」
「これで覗いてみろ」
タングリスの双眼鏡で覗いてみる。あちこち傷だらけで、第二砲塔のあたりはハッキリと断裂の痕がある。そうだ、あの巡洋艦は艦首がぶっ千切れて、砲塔が吹き飛んでしまったはずだ。やはり、同型艦?
いや……あきらかに五海里ほど彼方の海を白波を蹴立てて進んでいる。
洋上を航行中だったら、時間が止まった時に静止してしまって動けないはずだ。
「おそらく、クリーチャーと融合してしまったんだ」
「クリーチャーと?」
「パラノキアは、クリーチャーとの共存を謳っている。沈没したところに時間が止まってしまって、クリーチャーに憑りつかれてしまったんだろう、クリーチャーは時間が停まっても活動できるからな。まだ憑りつかれて間が無いんだろう、修復と変態の真っ最中といったところだな」
「逃げを打つしか手が無いな」
「面舵三十度……逃げるぞ!」
タングリスは、ソロリと舵輪を回した……。
☆ ステータス
HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
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