第127話『ポチのデジカメ』


かの世界この世界:127


『ポチのデジカメ』語り手:テル         






 なるべく早く帰ってきてくださいよ(~o~)。




 お手上げというジェスチャーをして荒れ地の万屋はあきらめた。


「ペギーさん困らせるんじゃないぞ」


「「分かってる!」」


 これ以上ないというふくれっ面でロキとケイトの声が揃った。


 転送販売に来て帰れなくなったペギーは、我々がヤマタの神をやっつけてユーリアを連れ戻すまで子守をしてもらうことになったのだ。


「あんな顔の二人は初めてだね」


 体と精神年齢では二人以上に子どもなのだが、空を飛べるポチは偵察と連絡役のために連れてきている。


「どうだ、上から見て、この道があってるかどうか分かるか?」


 タングリスが聞くと、上空五メートルくらいのところでキョロキョロする。


「分かんないよ、灌木の葉が茂って見当がつかない」


「ち、使えないやつだ」


「あ、いま舌打ちしたね! たとえ王女様だって、舌打ちはゆるさないぞ!」


「だったら、役に立ってみろ!」


「姫、罵倒されて発奮するものではありませんよ。いちど下りてこい、ちょっと考えてから進もう」


「らじゃー」


「打ち合わせなら出発する前にしておくべきではないのか」


「すみません」


 タングリスは謝るが、わたしには分かる。ロキとケイトの前で相談すれば二人の疎外感を強くするばかりだ。


 ここらへんで体制を整えるのが上策だろう。


「なにか使えそうなアイテムはないだろうか……」


「同じことを考えていたな」


 目の高さの空間をクリックしてウィンドウを出す。アイテムをクリックするとペギーから買ったばかりの福袋のフォルダーが目についた。三人共用のフォルダーになっているので献策がしやすい。


「種類も量もハンパじゃないぞ」


 ブリュンヒルデがぼやく。ぼやくのも無理はない、スクロールしてもきりがないほど続いているのだ。


「十キロの純金と交換したんだ、これくらいには……」


「ジャンクじゃないのか……」


「とりあえず、系統別に分けましょう」


「そうだな、回復系、補助系、白魔法、黒魔法……」


 三人で忙しく指を動かす。


「分けても、それぞれ千以上あるし……」


「追尾アイテムはないだろうか……それをポチに持たせれば……」


「『しるべ虫の粉』がある」


「ああ、モンハンの必須アイテム!」


「でも、これってモンスターにしか効かないのでは?」


「ポチはもともとシリンダーの変異体だ。シリンダーならモンスターだろ」


 三人の目線がポチに向く。


「し、失礼な! いまのあたしは妖精だもん!」


「いや、悪かった(;^_^A」「すまんすまん(^_^;)」「もっと探そ」


 ゴソゴソ ガサゴソ


 やがて、本来の目的を忘れて整理することに夢中になってしまい、ヘンテコなアイテムを見つけてはヘーとかホーとか声をあげているだけになった。


 ポチの方が偉かった。


「見つけたよ! 正解のルート!」


 我々が整理に没頭している間に、ポチは地上スレスレに獣道を飛んで調べてきたのである。


「これ、見てよ!」


「おまえ、デジカメなんか持ってたのか!?」


「ブリュンヒルデのフォルダーからこぼれたのを拾った」


「ああ、画素が百万しかない三世代前のジャンク」


 ブリュンヒルデはバカにするが、問題が解決すればノープロブレムだ!


 ポチのデジカメには『ヤマタ神方面』と表示の付いた洞窟が映っていた……。




☆ ステータス


 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 福袋 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)


 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 


 

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