第121話『四号戦車試乗会・4』


かの世界この世界:121


『四号戦車試乗会・4』語り手:ブリュンヒルデ       






 四号戦車試乗会はヘルム文化フェスティバルになってしまい、プログラムが進むうちにアイデアが出て、ますます賑やかになってきた。




 大道芸人友の会のパフォーマンスが終わると『大声コンテスト』になり、二十四人が手を挙げて声を競った。


 ウオーー! ガオーー! 猛獣のような叫び声をあげる者もいれば、バカヤローー!とうっ憤を晴らす者、愛してるーー!と叫んで、誰を愛してるんだーー!? と聴衆に迫られ、とうとうその場でプロポーズをさせられてしまう者まで現れた。子どもたちもなにかやりたい! ということで、ハングライダークラブが紙飛行機コンテストを始めた。丘の上には麓から上昇気流が噴き上がってきているので、どの紙飛行機も大空高く飛び上がり、優勝した紙飛行機は、とうとう姿が見えなくなるまで飛んでしまい「素晴らしい! 五年ぶりの視界没が出ました!」と盛り上がった。


 ……という段取りで。


 わたしがMCをやっている間に乗員たちと出し物グループとの話がついて、ハングライダーグループが子どもたちを連れて体験飛行をやり、それと並行して四号の主砲で花火を打ち上げることになった。


「わたしも参加する!」


 宣言したのはユーリアだ。


 いつの間にかハーネスを付けてヘルメットにゴーグルの飛ぶ気満々の出で立ちになっている。


「ユーリアは先月までうちのクラブにいたんですよ」


 グループのリーダーが準備を手伝いながらニコニコしている。ユーリアはなかなかの腕のようだ。


「花火のタイミングは、わたしが出すからね」


 ユーリアと無線のチェックをする。


「自分も飛ぼうかなあ」


 見ていたヤコブもその気になるが「体重減らしてからに……」とリーダーに言われて諦めた。


 ブラバンが『ペガサスマーチ』を奏でる中、ハングライダーチームは次々と空に舞った。


 子どもたちを抱えている者はゆるゆると安全飛行を心がけたが、単独で飛んでいる者は華麗にターンや宙返りなどのパフォーマンスを繰り広げ、丘の上で見物している者たちから喝さいを浴びた。


 それは、リーダーとユーリアがコンビでパラレルターンを決めた直後だった。




―― 花火! ――




 ユーリアの無線。テルにキッカケを出して四号は最大仰角に上げた主砲から立て続けに花火が打ち上げられた!


 七発上げたところで、ユーリアの声が木霊した。無線がビッグバンドのスピーカーにリンクしていたのだ。


―― 今から向かいます! ――


 どこへ?


―― これから、ヤマタの神のもとに行きまーーす! だいじょーーぶ! ちゃんと役目は果たしまーす! さよならお兄ちゃん! ありがとう四号のみなさーん! 行ってきまーーす! ヘルムのみなさーーん! ――


 そこまで言い切ると、サッとターンして、ハングライダーとは思えぬスピードで東を目指して飛んでいく。


 やられた、この漆黒の姫騎士までも、まんまとたばかりおった!


「乗員は四号に乗れ!」


「どうすんの、戦車じゃ追えないよ!?」


 ケイトが当然の疑問をぶつける。


「わたしの力を見くびるな、ユーリアは漆黒の姫騎士の心に火をつけおったぞ!……いくぞ! 四号発進!」


 ゴーーーー!!


 我が意を受けた四号は、唸りを上げて浮揚し始めた……




☆ ステータス


 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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