第120話『四号戦車試乗会・3』


かの世界この世界:120


『四号戦車試乗会・3』語り手:ブリュンヒルデ       






 丘の上はお祭り騒ぎになった。




 一度に九人の子どもたちを乗せて丘に登る。


 その様子は、町内どころかヘルム中は大げさだけど三キロ離れた所からでも見えるのだ。


 ロートルの四号はエンジン音が大きく一キロ先からも聞こえ、五百メートルくらいだと試乗している子どもたちの歓声まで聞こえるらしい。


 その音やら歓声やら武骨な四号の姿を見た人たちが予想外に集まった。


 歩いてくる人やマウンテンバイクで登って来る若者、車でやってくる人、中にはブルドーザーやユンボに乗って、少しでも戦車に近い気分で登って来ようという人などで、四回目の九人を運び終わった時には数百人のヘルムの人たちが集まってしまった。


「だれか仕切らないと収拾がつかないぞ」


 タングリスが呟いたのはもっともだが、これは――自分以外に誰かが――という意味が隠れている。


 じっさい、テルは視線を逸らすし、ヤコブは工具箱を弄りだす。ロキとケイトはMCが入るほどにおもしろいイベントになるのかとキョロキョロ。ポチまでも「探してくるう~!」と飛び立っていく。


「し、仕方がない。わたしがやってやろうじゃないの」


「それは良い考えです!」


 タングリスが白々しくガッツポーズをするのに送られて丘の上に雛壇状になった岩に駆け上がる。


 雛壇は二段になっていて、一段目に足を掛け、ジャンプして空中一回転をして二段目に着地したときには漆黒の姫騎士の出で立ちになっていた。我ながら気合いが入ってしまった。


「よく来た皆の者! 我こそは主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士にして四号戦車の車長、ブリュンヒルデなるぞ!」


 調子よく名乗りを上げると、ファンファーレが鳴り響いた。


 パッパカッパッパッパーーーーーーン🎵


 いつのまにか雛壇の下にブラスバンドが並んでいる。ポチが自慢げにその上を飛んでいる。


「麓で練習していたら、面白そうなので登ってきたんです。この妖精さんに声をかけていただいて!」


 よく見ると、シュネーヴィットヘンで入港した時のハイスクールのブラバンだ。


 さらに目を凝らすと①~⑧までの小さなプラカードが並んで、そのプラカードごとに出演者たちが屯している。


「いったい、どこから集めてきたんだ?」


 得意そうに飛んでるポチに聞いてみる。


「なんか、この丘はいろんなグループの練習場になってるみたい!」


「よし、というわけで、ヘルム市民文化フェスティバルをやっちゃうぞ!」


 なんか、スゴイことになってきた。


 ブラバンのほかに、ジャズのビッグバンド、マジック友の会、大道芸研究会、大学のグリークラブ、チアリーディング、詩吟の会、ハングライダークラブと色々だ。


「よし、一チーム十分づつの出し物をやってもらうぞ! なに? そんなに長くはできない。そっちは、もっと時間をくれ? よし、出たとこ勝負でいっくぞお!」


 オオーーーーーー!!


 突如始まった『ヘルム文化フェスティバル』はノッケからのハイテンションになってきたぞ! 




☆ ステータス


 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 




 

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