第108話『ヘルム島間近』


かの世界この世界:108


『ヘルム島間近』語り手:ブリュンヒルデ         






 ヘルム島で修理をすることになった。




 ポチの働きでパラノキアの巡洋艦を撃沈させたが、肝心のシュネーヴィットヘンがグラズヘイムまでの航海に耐えられなくなってしまったのだ。


「無茶をせずに帰還できるな」


 あいにくの霧の中、島の輪郭が見え。船の応急処置の手伝いから戻ってきたヤコブに声を掛ける。


「船の修理に一か月はかかります、その間に解決できればいいんですが」


 レーゲ海の宝石と言われるヘルム島だが、ヤマタという邪神が居て四年に一度、十七歳の処女を生贄に捧げなければならない。


 今年はヤコブ伍長の妹が指名されているのだ。折からの休戦、彼は脱走同然に部隊を抜け出し島を目指しているのだ。


 相談したわけではないが、我々はシュネーヴィットヘンの修理が終わるまではヤコブを助けてやろうという気になっている。


「しかし、せっかくの島が見えない」


 ケイトが女の子らしい不満を言う。レーゲ海の宝石とあって、少女らしい期待を持っているのだ。ロキは船のコックから美味しいと聞いたシーフードに涎を垂らしている。タングリスは渋い顔をしていたが、グラズヘイムで待ち構えている試練の予行演習になるだろうと思い直してくれた。テルは「あ、そうか」と頷いただけ、ムヘンで知り合ってから気心は知れたと思ったが、ときどき分からない表情をする。ポチは……


「チョロチョロしてると首輪をつけるぞ!」


 テルに作ってもらった新しい服が嬉しいのと、未知のヘルム島への期待で四号やら甲板やら手摺の上やらを子犬のようにチョロチョロしている。子犬とちがって空中も飛べるので視界に入ると煩わしくて仕方がない。


 かくいうわたし、ブリュンヒルデはひしひしと闇の力が漲るのを感じている。予知能力などは備わっていないと思うのだが、漆黒の姫騎士の血が来たるべき試練を予感して暗黒エナジーのたぎりを感じているのかもしれない。




 おおーーーーーーー!




 船のデッキから一斉にどよめきが起こった。


 立ち込める霧の中に刀の刃文のような輪郭しか現わさなかったヘルム島。それが、神の力によって蒸発させたように数秒で霧が文字通り霧消して、フルカラーの姿を現したのだ!


 世界でただ一つ我が父であり主神であるオーディンに服ろわざる(まつろわざる)島。


 それは、世界中の画家を集めても書ききれないほどに光と色彩に満ちた夢の島だ。


 近づくにつれ、色彩に遠近感が現れ、差し渡し一キロほどの間隔をあけた岬、いや、半島が女神の腕(かいな)のごとくに奥つ城のヘルム湾を抱いている。


 ヘルム湾は西北に奥まっていて、船が岬に近づくにしたがって装いを顕わにし、 船は十ノットほどの微速になり、しずしずと湾内に入っていく。


 ドーーーーーン


 岬の灯台を過ぎたところで砲撃の音がした!


 


☆ ステータス


 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 




 

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