第43話『え、マジか!?』


かの世界この世界:43     


『え、マジか!?』  






 ああ、なんでも使ってくれ




 グリが鷹揚に返事をすると、小さな敬礼を返してこちらのゲペックカステンを開けた。


「なんだこりゃ、この二号でお菓子屋でもやるつもりなのかい?」


「シュタインドルフのヴァイゼンハオスの慰問を兼ねているんだ。ツ-ルはノルデンハーフェンで補給してもらうことになっている」


「ヴァイゼンハオス……戦災孤児たちのだな」


「ああ、仰々しい慰問じゃ、シスターたちもかえって困るだろうからな」


「なるほど、いや、停めてすまなかった。ツールは他の奴から借りるわ」


「せっかくだ、キャンディーなら一袋進呈するよ」


「いや、孤児の取り分をいただくわけにはいかないだろう」


「乗員用のがある。ブリ伍長、ポケットのを軍曹に渡せ」


「え? あ、イエスマム」


 一瞬あっけにとられたが、素直に軍曹にくれてやる。


「じゃ、行ってくれ。停めてすまなかったな」


 軍曹たちはキャンディーを口に放り込み、我々は前進を再開した。


 


 ムヘンブルグの北には荒川ほどの川があり、川を渡って、そのまま北進すればノルデンハーフェンに至って船旅になる。




 城塞の北方も必ずしも平穏ではないが、街道を走っている分には安全であろう。


 ところが、橋を渡ったところで我々の二号は左に曲がったではないか。


「グリ、どこへ行くんだ?」


「軍曹にも言ったじゃないか、我々はシュタインドルフのヴァイゼンハオスに寄っていくんだ」


「え、マジか!?」


 ブリが目を剥く。


 シュタインドルフは九十度方角が違う。道中の安全も保障されてはいない。


「方便とは言え、口にしたことです。向かわねばなりません」




 ハッチから身を乗り出して見える空は、この道中を暗示するかのように曇り始めていた……。




☆ ステータス


 HP:500 MP:500 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト


 持ち物:ポーション・15 マップ:2 金の針:5 所持金:5000ギル


 装備:剣士の装備レベル5(トールソード) 弓兵の装備レベル5(トールボウ)


 


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘


 グリ(タングリス)   トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る