第65話若党坂田力太郎熊吉12
「うぉおおおお、やっちまえ」
野次馬達が無責任な声援を送る。
力太郎熊吉の人気が鰻登りだ。
江戸中の博徒や香具師の親分が、剣客や子分を果たし合いに送り込んできた。
名の知れた剣客も五十を越える子分も、熊吉に勝つ事はできなかった。
熊吉は、その全てを金砕棒で粉砕してきたのだ。
熊吉では危険な相手が出てきた時には、我は負けを認めるつもりだったが、そんな相手は出て来なかった。
いや、熊吉が日に日に強くなるので、伊之助と最初に話し合った時に思っていた相手よりも、もっと強い相手であろうと勝ってくれた。
そして我は伊之助が書いた絵図通りに、浅草の寺社と町名主に挨拶する。
「我が浅草を護るつもりであったが、どうやら余計なことであったようだ。
新右衛門の後継者に相応しい相手がいたら、その者に全てを任せる」
我の挨拶を聞いて、所場代なしで露店を出す心算でいた、寺社や町名主や町民は慌てていたが、もう我には護る気などなくなっていた。
性根の腐った身勝手な人間の為に、自分はともかく、大切な家臣や弟子を危険に晒す気がなくなっていたからだ。
太平楽な生活を送りたければ、それに必要な費用を負担しなけれなならない。
何の対価も支払わず、安寧な生活は手に入らないのだ。
全ての果たし合いを、車殿が支配する勧進場で行った。
我は興行にする心算はなかったが、車殿が見物料ををとるのを止めはしなかった。
七番目の勝負では、四つの博徒の親方が連合を組み、百近い子分衆が集まって熊吉に挑もうとしたが、流石に百近い相手を熊吉一人に押し付けられない。
ただの博徒の子分衆百人なら、今の熊吉なら金砕棒で簡単に粉砕してくれるが、中に九人ほど強い剣客が混じっていたので、我も銀次郎も虎次郎も加わった。
博徒共は、我が加わる事を卑怯と言ったが、我は四つの博徒が秘かに連合を組むことこそ卑怯と、博徒の親分の名を晒して論破してやった。
それを聞いた見物の聴衆が、一斉に親分の名を大声で罵ったので、面目が丸潰れなった親分衆が、居たたまれなくなって逃げて行き、腰砕けになった子分や剣客を情け容赦せずに突き殺してやった。
密かに悪事を企んだ心算でも、江戸中に張り巡らされた非人の情報網からは、逃れる事などできないのだ。
だがこれ以上やると闇討ちされる恐れがあるので、翌日には負けてやった。
二代目新右衛門を名乗る者達に、戦わずして降参してやった。
これで浅草の縄張りは二代目新右衛門を名乗る者達のものだ。
縄張りが欲しい奴らは、二代目新右衛門を殺せばいい。
伊之助が頭巾をかぶって、香具師になりすましている二代目新右衛門。
果たして探し出して殺せる者などいるいるのだろうか。
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