第三百四十一話 お城で一旦お別れしましょう
テイマー施設を後にした俺達は魔物達を伴って城へと向かう俺達。
雪虎の親子は子雪虎も目を覚まさないのと、父雪虎がいい感じでグロッキーになっていたので置いて来た。ダメ親父でもまだ見捨てていない母雪虎が健気である。
「オラ、もうちょっとラース君の家に居てもいいかなー? あのお父さんを鍛えなおしたいよー」
「僕はいいけど、どうかなラース?」
「ああ、いいよ。ウルカは?」
「僕はヘレナのお仕事を見たら帰らないといけないかな。名残惜しいけど、アンデットや【葬送】の依頼が来るんだよね」
<ふむ、となるとウルカだけ送り届けることになるか。任せておけ>
ガストの町だけではなく、他の町やルツィアール国でちらほら来るのだそう。今回は出食わなさ無かったけど、悪霊を退治して送るのが多いのだとか。
「ミルフィのことで名残惜しいのかしらね」
「それもあるだろうけど、ウルカは真面目だから依頼を待っている人のことも心配なんだよきっと」
「遠距離恋愛、大変そうだけど大丈夫かな?」
「ま、そこは当人に任せるしかないな」
マキナが小声で俺にウルカとミルフィの行く末を案じるが、こればかりはあまり関わりすぎるのも良くないと思うので、困ったときに手を差し伸べるくらいでいいと思う。
そんな話をしながら、町の人たちの注目を集めつつ城へと到着し、バスレー先生が口を開く。
「いやあ、魔物の園のアピールにはちょうどいい感じでしたねえ。アッシュ君は可愛いですし、無理もありませんが」
「くおーん♪」
マキナに抱っこされているアッシュを撫でると、嬉しそうに鳴く。バスレー先生、意外って言ったら悪いけど動物好きなんだよな。実はシュナイダーと仲がいい。
そのままバスレー先生は城の入り口にある受付へと走ると、しばらくして庭に続くと思われる道からあくびをしながら男が歩いて来た。
「ああ、来ましたね」
「何だ、バスレーじゃねぇか。お前か俺を呼んだのは」
近くで見るとかなりガタイのいい男で、無精ひげに若干のたれ目をしたいかつい人だ。髪型は角刈りとまではいかないけど、綺麗に切り揃えられていた。直後、俺達に気づき喋り出す。
「おお、なんだ! デッドリーベアじゃねぇか! そっちはヴァイキングウルフか? 大物を捕まえてきてくれたのかよ! そうならそうって言えよ!」
「あなたの為に連れて来たんじゃありませんよ。ちょっとこの子達と一緒に陛下の下へ行くんですが、連れて行くのはまずいので預かって欲しいんですよ」
「ちぇ、くれるんじゃないのかよ。まあ、いいぜ……お前がテイマーか?」
男は俺が首から下げているギルドカードに目を移し指差してきたので頷いて返す。
「ええ。この大きいのがラディナで、小さい子がアッシュ。ヴァイキングウルフはシュナイダーと言います。もしかしてあなたも?」
「おう。俺もテイマーだぜ! 俺が預かってやる。しかし、まだ若いのにやるじゃねぇか。デッドリーベアなんて倒すのも苦労するような魔物だぞ」
「ちょっと訳アリでね。バスレー先生、サージュはいいのかい?」
「んー、まあ知能レベルで行くとわたし達より高いですし、問題ないでしょう。ラディナ達には申し訳ないですがね」
そう言って肩を竦めるバスレー先生。そういうことならと俺はアッシュをマキナから受け取り、顔を突き合わせる。
「さあ、アッシュ。俺がこの前言ったことを実践してもらうぞ。俺達はちょっとあそこに行ってくるから、このお兄さんと一緒に大人しく待っていてくれ。セフィロも頼むぞ」
「!」
「くおーん……」
少し気弱な鳴き声を上げるが、俺にしがみつくことは無かったのでアッシュなりに頑張ろうとしているらしい。俺はラディナの背中にアッシュとセフィロを乗せて一歩下がる。
「アッシュはいけないの? 可哀想だよ!」
「アッシュもお留守番の訓練をしないといけないんだ。我慢することも必要なんだ。ならアイナ、アッシュと一緒に行くかい?」
「う……ラース兄ちゃんと一緒に行く……アッシュ、頑張って!」
「くおーん」
「それじゃ、バスレーは帰りに俺のところまで来てくれ」
「わかりました」
アイナは俺の手を握り、アッシュに手を振ると、アッシュはラディナの背中で両手を上げて鳴いた。頑張る意思表明だろうか? 遠ざかっていくシュナイダー達に少し寂しさを覚えながら俺達は謁見の間へと向かう。
「アイナちゃんじゃないけど、寂しそうだったわね」
「俺も心苦しいけど、甘やかさないと決めたからな。あいつも少しずつ分かってくれるはずだ」
「ラースはいろいろ考えているなあ」
「マキナちゃんとももっと考えてほしいけどねー、オラは」
「……」
テイマー施設の魔物達の体たらくにご立腹のノーラが俺達の仲に飛び火した。俺とマキナが顔を赤くしていると、謁見の間に到着。ウルカはガチガチになっているのだけど、例の件なら解決した当人なのでいないという訳にもいかない。
「バスレー=ベリファイン、参りました」
「入れ」
初めて聞いたバスレー先生の苗字を聞いて驚くと同時に、国王様の声が中から聞こえ扉を開ける。宰相のフリューゲルさんが前に立ち、国王様とオルデン王子が玉座に座って待っていた。こうやって向かい合うとやはり緊張する。
俺達は少し進んだところで膝をつき、次の言葉を待った。
「顔を上げてくれ、客人が来ているところ呼びつけてすまなかった。というかバスレー、大臣自ら行く必要はないだろう?」
「いえ、ちょっと野暮用がありまして」
「なんだいそりゃ?」
オルデン王子が呆れた顔をして呟くと、国王様が続ける。
「ふむ、知らぬ者もいるようだ。紹介をしてもらえるだろうか? そっちの女の子はラースに似ているようだが」
「あ、はい。この子はアイナと言って私の妹になります。ご存じとは思いますが兄のデダイトと、妻のノーラです」
「初めまして、アイナです!」
「お久しぶりです国王様。デダイト=アーヴィングです。父と共にお会いした以来ですね」
「初めまして、ノーラ=アーヴィングです」
「うむ、結婚したのだったな。そして妹か、私も娘が欲しかったから羨ましい限りだ。そして妻は幼馴染だったか。祝福するぞ後は……?」
「は、はい! ウルカと申します! ラースとは同じ学院でクラスでした! お声をかけていただけるなんて光栄です……」
「はっはっは、緊張しておるな。取って食うわけではない楽にしてくれ、なるほど君が今回の事件を解決に導いた功労者か。労いをしたいところだがまずは私の話から聞いてもらうとするか」
静かになったところで国王様があの他国の強盗についての話を始める――
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