第4話 沿革 | 国家概要
小さい頃オレが読んだ本に書かれていた「夢の国」の概要はこうだ。細かい年号は忘れた。
-ハピヒコ・シュリンガがうさちゃんの可愛さを世の中に伝えるオープンテラスカフェ「うさちゃんカフェ」をオレアレス国海沿い(ハッピーラッキーランド現在地)に開業
-「うさちゃん草刈りレンタルサービス」を開始
-2号店設立。社名を「うさちゃんだらけ」に変更
-温泉の堀り当てを機にスパ事業に参入
-オレアレス国王の湯治場に認定
-オレアレス国王全快の褒美として、海沿いの領土と住民を新しい国として下賜される
-社名もとい国名を「ハッピーラッキーランド」に変更
-アトラクションを建築
-国全体を複合型うさちゃんテーマパーク「ハッピーラッキーランド」として開国
昔から本を読むのが好きだった。本を読んでいる時だけは、ここではない場所で自分ではない何者かになれるからだ。
ファンタジー小説ももちろん好きだったが1番のお気に入りはウッチェロ・ミグラトーレ著「着の身着のまま旅行日誌」だった。載っている画図や著者の体験が、観光客というよりはその地に根差す住人寄りで、妙に生々しく、本当に自分がそこにいるような感覚になれた。
そんなリアルな日誌においてもこの「ハッピーラッキーランド」だけはまさしく「夢の国」であった。
アトラクション、温泉、そしてこの地域にしか生息できない真っ白でふわふわで耳の長い可憐な生き物「うさちゃん」を求めて、世界各国から富裕層がひっきりなしに訪れるので財政は豊か、そのためこの国の住人は何もしなくてもお金が入ってくる仕組みなのだが、何故か皆このテーマパークで率先して働きたがるのだという。
ウッチェロ氏が「この国の住人は我々の遥か先の幸せを知っているのかもしれない」と締め括っていたのがとても印象的でよく覚えている。
そんな「夢の国」にこのオレがいるなんて!
金髪君は興奮覚めらやないオレを宥めてベッドに押し戻し、リンゴを剥き始めた。なにやらV字の切り込みをいれ半分ほど皮を剥いている。も、もしや…。
金髪君がほいっとリンゴの載った皿をオレの膝の上に置いた。
「うさちゃんカットにしてみたよ。遠慮せず食べな」
何て可愛いりんごさん。オレのためにわざわざ? 金髪君を見やると、こくんと頷かれた。オレのためのりんごさん。こんな幸せ許されるのだろうか。
身に余る幸せに体がフリーズする。そのとき、扉をノックする音がした。
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