明滅

作者 辰井圭斗

FULL AUTO

  • ★★★ Excellent!!!

『アヴィニョンの娘たち』を思い出した。とある書籍で読んだその絵画に関する解説──あれは人体の展開図なのだと。顔一つとっても前から見た顔、横から見た顔、あるいは斜めから見た顔、あらゆる角度から見た人体のパーツを凝集させて、一枚の画に収めたものなのだと。だから、目に見えている光景をただ忠実に描いたそれよりも"情報量"で勝っている。

一見すると歪な、それでも確かにあなたの一片であるものから成っている、うつくしいもの。うつくしくあろうとするもの。

最初は、あなたというただ一人の浮き沈みを眺めている心地だった。気づいた誰かが沈みゆくあなたに手を差し伸べて、あるいはあなた自らが声を発して。救いを求めて──。これが、再三再四繰り返されるのだろうと。そう思っていた。

ただ、いつだったかを境に。これは、何か違うのではないかと。

あなたはいつだって薄氷の上を奔走していて、終わりを迎えようとするあなたを見つけては手を差し出している。その手を振り払い、拒絶を露わにするあなたもいれば、元よりその手を取る気がないあなたもいる。あなたの手に縋りつく振りをして、"そこ"へ引きずり込もうとするあなたもいる。

それでも、救い続けて。かと思えば、今度は希望だったはずのあなたが溺れてしまって。いつかあなたの救ったあなたが、新たな奔走の役目を担う。

私は、それをただ見ている。苛立ちも呆れも諦めもなく、ただ──何なのだこれはと思う。私が歯止めになったのだと、力になれたのだとつかの間思ったあなたは、すぐ目の前から消え失せてしまって。何処かで、もう別のあなたが叫んでいる。けれど、それが誰かを求めてのものなのかどうかは判別がつかない。

某所にてなされた「私のコミュニティは一人入ったところで崩れるほど脆くはない」という主張を目にしたとき、正直なところつい笑ってしまった。もちろんあれは思い遣りゆえの強い断言だったのだろうが──やはりそういうところは解っているのだなぁと。

あなた一人が吸い取ったところで、あなたを取り巻く人たちのリソースが底を尽きたりはしない。そういう人たちが図らずも集まったからこそ、あなたのコミュニティは脆くはないのだろう。それは、あなたが広げたコミュニティだろう。集った理由はそれぞれ異なれど、あなたの内にこの繋がりをときにしがらみを維持したいと切に望むあなたはいるだろう。

きっと、この繰り返しなのだと思う。現状弾は尽きることをまだ知らないが、弾を撃つべき相手がいなくなることはない。いなくなる兆しは見えない。「ありがとうございます」と云ってくれるあなたの後ろで、また別のあなたが溺れ苦しんでいる。こんなもの一つの視界に収まっていい画ではないだろうと思いながら。

それでも

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