明滅

作者 辰井圭斗

25

9人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

『アヴィニョンの娘たち』を思い出した。とある書籍で読んだその絵画に関する解説──あれは人体の展開図なのだと。顔一つとっても前から見た顔、横から見た顔、あるいは斜めから見た顔、あらゆる角度から見た人体のパーツを凝集させて、一枚の画に収めたものなのだと。だから、目に見えている光景をただ忠実に描いたそれよりも"情報量"で勝っている。

一見すると歪な、それでも確かにあなたの一片であるものから成っている、うつくしいもの。うつくしくあろうとするもの。

最初は、あなたというただ一人の浮き沈みを眺めている心地だった。気づいた誰かが沈みゆくあなたに手を差し伸べて、あるいはあなた自らが声を発して。救いを求めて──。これが、再三再四繰り返されるのだろうと。そう思っていた。

ただ、いつだったかを境に。これは、何か違うのではないかと。

あなたはいつだって薄氷の上を奔走していて、終わりを迎えようとするあなたを見つけては手を差し出している。その手を振り払い、拒絶を露わにするあなたもいれば、元よりその手を取る気がないあなたもいる。あなたの手に縋りつく振りをして、"そこ"へ引きずり込もうとするあなたもいる。

それでも、救い続けて。かと思えば、今度は希望だったはずのあなたが溺れてしまって。いつかあなたの救ったあなたが、新たな奔走の役目を担う。

私は、それをただ見ている。苛立ちも呆れも諦めもなく、ただ──何なのだこれはと思う。私が歯止めになったのだと、力になれたのだとつかの間思ったあなたは、すぐ目の前から消え失せてしまって。何処かで、もう別のあなたが叫んでいる。けれど、それが誰かを求めてのものなのかどうかは判別がつかない。

某所にてなされた「私のコミュニティは一人入ったところで崩れるほど脆くはない」という主張を目にしたとき、正直なところつい笑ってしまった。もちろんあれは思い遣りゆえの強い断言だっ… 続きを読む