誑斎先生怪談会
二河白道
序
簡素な門構えは却って老舗らしく、中は凝った趣向の料亭だった。
おそらくは、今夜の怪談会のために用意したのであろう。女将に案内された離れの床の間には、白いうなじを見せた女の、その黒髪をくわえた、痩せて眼窩の飛び出た男の幽霊画が飾ってあった。
離れのその一間には、すでに十人ほどが集まって、おのおの膳を前に飲み食いしていたが、話が弾まぬように見えたのは、それぞれ面識がなかったためであろう。
下座にまだ一つ空いていた膳の前に端坐した私に、一献差し向けてくる者はいなかった。
私が、酒杯にも箸にも手を触れずにただ待っていたら、わずかに時刻に遅れて蓬髪の男が現れた。それへ、上座に座っていた、鬢に白いものの混じった小柄な男が声をかけて手招きをすると、蓬髪の男はその隣に腰を下ろした。それをきっかけのように、白い鬢のその男が立ち上がった。
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