第11話 ふっ、神速の剣聖とは俺の事よ。え? 女じゃねぇし!3

 銭湯でさっぱりし、ギルドにやって来た俺は真っ先に依頼が貼ってあるボードを見に行く。

 しかしまぁ、時刻は既に昼をまわり、簡単な依頼を受けた冒険者なら帰ってきていてもおかしくないような時間になっている。

 そんな時間まで残っている依頼に碌なものがるはずもなく、どれを受ければいいのかと暫くの間頭を悩ませていた。

 

「いきなりダンジョン攻略は難しいからなぁ」

 

 なんせ今日から俺はソロ冒険者。

 今まで三人で行っていた仕事を一人でする必要があるわけで、何の練習もせずに行けばグダグダになって失敗するのは目に見えている。

 特に、夜は三人で回していた見回りを俺一人で、つまり眠ることができなくなってしまう。

 だから行くとしても日帰りで大丈夫な階層、大体一桁台しか無理な訳だ。

 もしもそれ以上、それこそダンジョンの攻略を目指すとしたら、結界石のようなマジックアイテムを手に入れる必要があるのだが、これがかなり高い。

 結界石が必要になるのはソロ冒険者くらいなお陰で需要自体が少なく届かないような値段ではないが、それでも今の俺の貯金金額では残念ながら届かない。

 

「あー、金がない」

「あら、リーシアは寄付しているから分かるけどノエルはどうして金欠なの? そこまで金遣いが荒いわけじゃなかった気がするけど」

「ソロになるからって個人用のマジックポーチを買ったら凄い値段でさ、貯金の桁が一気に二つくらい減ったんだよ」

 

 マジックバッグの一種であるマジックポーチは結界石と違って需要が高い。

 その分値段も相応に高く、しかもソロであることを考慮して一番人気なポーチタイプを買ったら更に値段が跳ねあがった。

 

「ほら、俺たちって運が悪いのか一回もマジックバッグが宝箱から出なかったじゃん? だからこそフランがアイテムボックスの魔法を――ってフランかよ!」

 

 自然すぎて平然と会話をしていたが、その声はフラン。

 バッと後ろを振り向くとリーシアも笑顔で手を振っていた。

 

「それで、どのクエに行く? 今からならやっぱりレベルⅣくらいのダンジョン?」

「うーん、流石に何の準備もせずにダンジョン攻略はしたくない――って何さらっと一緒にクエスト受けようとしてんの?」

「何って、おかしいの?」

 

 こてん、と首を傾げながら言った。

 可愛い。

 大人っぽいフランがやるとギャップが生まれて更に可愛い。

 ……じゃなくて。

 

「いやおかしいでしょ! だって俺たちもうパーティメンバーじゃないじゃん! 一緒に行ったら俺がパーティ抜けた意味ないよね!?」

「何言ってるの?」

「いやだから、俺はパーティを抜けてソロでやるって決めてリューマンまで来たのに一緒に行ったら――」

「いや、そっちじゃなくて」

「そっちじゃないって……」

 

 一体何がおかしいというのか。

 そう言おうとした時、それより先んじてリーシアが笑顔で言った。

 

「だってノエルさんは、パーティを抜けてませんから!」

「……え?」

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