第4話 パーティ抜けます4

「ねぇフラン、リーシア。女二人、男一人のパーティってどう思う?」


 俺のその問いに対して、フランとリーシアは。


「男が邪魔ね」

「男の人がいない方が良いと思います」

 

 と、あっさり答えた。

 思い出してみよう。俺たちのパーティの構成を。

 俺、フラン、リーシアの女二人、男一人のパーティなのだ。しかもフランとリーシアは明らかにデキている。

 いつからかは分からないが、いつの間にか手を繋ぐようになり宿の部屋が同じになり、そして所かまわず抱き着きキスをするようになった。

 そう、所かまわずだ。

 

「……俺さ、最近間男あいだおとこって呼ばれてるんだよ」

間男まおとこではなくて?」

 

 そう、間男まおとこではなく間男あいだおとこ

 その呼び方を初めて聞いたのは約一年前。

 由来はただの妄想だからと切り捨てていたその呼び方。

 しかし、約半年ほど前からそう呼ばれることが急激に増えた。

 その理由は——

 

「お前たち2人が宿でもギルドでも食堂でもいちゃいちゃいちゃいちゃするから俺は百合の間に入る邪魔な男、略して間男って呼ばれてるんだよ!」

「まぁ……」

 

 なんだよ百合の間に入るって。

 最初からいたわ! むしろ俺を挟んで百合ができたわ!

 それなのに!

 

「それなのに俺が後から入ってきたみたいに言ってきてさ! 抜けろとか独立しろとか挙句の果てには女になれとか言われるんだよ! 意味分からなくないか!?」

「いいえ、よく分かるわ」

「そうですね。分かっていますね」

「そ、そうなのか……」

 

 分かるのか。

 結構ショックかもしれない。

 やっぱり独立した方が良いって思われていたのか。


「でもそんなこと言われたからってノエルが抜けることなくない?」

「そうですよ。私達三人で願いを叶えるって誓ったじゃないですか!」

 

 うん? 数秒前と違うこと言ってないか?

 それはそうとして、確かに、俺たちは誓った。

 体格から中々パーティに入ることができなかった俺、火属性魔法特化だからと敬遠されていたフラン、回復魔法しか使えずお荷物とされていたリーシア。

 余り物と揶揄されていた俺たち三人でパーティを組み、ダンジョンに潜り、レベルを上げていつか叶えたい願いを叶えると誓った。

 それぞれ誓いは秘密にして、叶うレベルになった時に言おうと誓っていた。

 だけど。

 

「悪い。俺はパーティを抜ける。これはもう決めたことなんだ」

 

 いくら引き留められようとも、俺の心は変わらない。

 これはもう一月以上考えて出した結論なんだ。今更変えられるようなものではない。

 それが二人にも伝わったのか。

 

「そう、ですか」

「分かったわ。これからはどうするつもりなの?」

 

 二人は納得してくれた。

 

「この後は、ギルドに報告してからウォルフを出て、そうだね。——リューマンにでも向かおうかと思ってる。あそこならダンジョンの生成量が多い代わりにレベルが低いから、ソロでも戦えるからね」

 

 リューマンはダンジョン都市と呼ばれるくらいダンジョンの生成量も多い。

 募集できるなら臨時の冒険者としてパーティを組んでも良いし、最悪レベルⅣくらいのダンジョンなら俺一人でも攻略できるはずだ。

 

「二人に悪いところなんて無いしむしろいつも助けてくれたりして本当に助かってた。だからその、私のせいで、みたいに気負うことだけはしないで欲しい。今まで、ありがとう」

 

 二人のような冒険者と長年パーティを組めたことはとても幸運なことだったのだろう。

 感謝を伝えて、二人より先にダンジョンの出口へ向かう。

 

「ノエル、またね」

「ノエルさん、また会いましょう」

 

 こんな一方的な抜け方をしたというのに、二人はそれを許してまた会おうとまで言ってくれるのか。

 思わず足を止めそうになったけれど、俺は振り返らずに転移魔法陣の上へと乗った。

 きっと振り返ってしまったら元に戻りたくなってしまうから。

 

「またね、か」

 

 生きてさえいればまた会える。

 またいつか会う時は、女神様に願いを叶えてもらった後かもしれないな。

 そう。

 

――男らしい肉体を手に入れるという夢を

 

 

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