第132話 女神の弟妹を預かってみた
ミカナ先輩の弟である『
「――いらっしゃい。待ってたわ、お腹空いている?」
夏純ネェが笑顔で出迎え、早速神対応ぶりを発揮している。
二人はぺこりと頭を下げて「うん!」と元気よく返答した。
「ふふ、お行儀いい子達ね。サキちゃん、何か作って~」
一方でこっちのお姉さんは駄目な大人ぶりを発揮している。
天馬先輩達よりも悪影響を及ぼしそうで心配だ。
俺は「はいはい」と返事をして、有り合わせのモノを作った。
遅くなった夕食を四人で囲んで食べる。
「なんか、家族団欒って感じだよね?」
夏純ネェが微笑みながら言ってくる。
言われてみればそうかもなっと思った。
その響きで少し胸がムズ痒く照れてしまう。
「でも、俺って放置されてたから、あんまり記憶ないけどね」
「そうだったね……サキちゃんの家、教育方針独特だったからなぁ。特に叔母さん」
「ああ、母さんね。今じゃ割と有名なユーチューバーらしい」
「うん、知ってる。ここの家に住む前に話をしたけど、『チャンネル登録よろしく』しか言わなかったわ」
夏純ネェに対しても同じかよ。
俺なんて手紙での「PS」だけだし一番どうしょうもねぇな、お袋……。
「どうだい、美味しいかい?」
一応、子供達に聞いてみた。
「「うん、普通」」
普通かよ。まぁ、子供は正直だからな。
「サキお兄ちゃんは、姉ちゃんのこと好きなの?」
大智くんは聞いてくる。
「姉ちゃん? 目の前のかい? ニートの親戚だけと、それこそ『普通』かな」
「サキちゃんも毒を吐く年頃か……大智くんくらいの年頃なんて、まだ『夏純ネェと手を繋いで寝るぅ!』って駄々こねてたのにねぇ……時は残酷だわ」
「大智くんくらいって、もう小学五年生だろ!? ねーわ、流石に!」
だって俺が小学三年生で『もう駄目よ!』って拒否られた記憶がある。
「サキお兄ちゃん、違うよ……ぼくが言っているのは『美架那お姉ちゃん』のことだよ」
「ミカナ先輩? 俺が? どうして?」
「だって、姉ちゃん。家でいつもお兄ちゃんのこと楽しそうに話しているから……」
「ああ、最近仲良くしてもらっているからね。俺にとっては信頼できる先輩だよ」
「好きじゃないの?」
「好きだよ。けど尊敬する先輩としてだから、お姉ちゃんだってそういうつもりで話しているわけじゃないだろ?」
「うん……けど初めてだよ。姉ちゃん、学校の話とはほとんどしないから」
「え? そうなの? あんなに面白い友達が沢山いるのに?」
「うん、モデルとかアルバイトの話しかしないよ。だから気になって……」
へ~え。
まぁ、天馬先輩達に対して「浮世離れしている」とか「住む世界が違う」とか言ってたからな。
何も知らない、弟と妹に話しても仕方ないっと思っているのかもしれない。
気持ちはわかるけどね……。
「大智くん……このお兄ちゃんね。ガールフレンドが沢山いるのよ。しかも全員可愛い子ばかり……そして年上の女子に対して甘え上手なペテン師よ。お姉ちゃんに気を付けてって言っておいて、ね?」
ね、じゃねーよ! どさくさに子供相手になんちゅうこと言ってんだよ、夏純ネェ!?
地味に昔のこと根に持っているのか!?
「……そういえばガールフレンドはいっぱいいるって言ったね」
言ってたのかよ!? だったら恋愛云々関係ねぇじゃん!
「でもミカお姉ちゃん……サキお兄ちゃんは、とても優しいお兄ちゃんっだって言ってたよ」
8才の萌衣ちゃんに気を遣われる、御年17才の俺。
もう好きに言ってくれ……。
けど捉え方によっては、ミカナ先輩の口から話題にしてくれるだけでも光栄かもな。
あんな素敵な女性に……。
長年一緒にいる天馬先輩達よりもか……。
――俺は胸の奥で何かの引っ掛かりを感じていた。
それから、萌衣ちゃんは夏純ネェと一緒にお風呂に入り同じ部屋に寝ている。
やっぱり甘えん坊の所があるようで、夏純ネェをお姉ちゃんかお母さん代わりにしているようだ。
そんな夏純ネェも面倒見がいいので仲良くしてくれる。
きっと俺一人なら、萌衣ちゃんも寂しくて大泣きされていたかもしれない。
この時だけは本当に住んでもらって良かったと思った。
大智くんは俺の部屋で一緒に寝ることになった。
本当は一人でも大丈夫なようだけど、どうやら俺に気を遣ってくれたらしい。
次の日、学校の昼休み。
いつもの屋上だとすっかり寒くなったので、最近では生徒会室にてお昼を食べることが多い。
今日は俺と愛紗、麗花、詩音の三人が囲んで昼食を食べていた。
これも役員ならではの役得だと思う。
「……そう、サキ君が美架那さんの
「ああ、そうなんだよ、麗花……先輩から頼まれてね。事情が事情だし、俺に出来ることがあればって思ってね」
「サキ、わたし名指しして迷惑じゃなかった?」
「いや、詩音。いい判断だと思うよ。俺の家なら子供二人くらい預かれるしね。それに二人共、凄くいい子だから問題ないし、夏純ネェも面倒見がいいから今回ばかりは凄く助かってるよ」
「えへへ、やっぱりサキって優しいよね~」
「そうね、本当に優しい……」
詩音と麗花が俺のベタ褒めしてくれる。
この子達に言われると特に照れてしまう。
「サキくん、ご飯とか大丈夫?」
愛紗が尋ねてくる。
「うん……昨日は俺が頑張って作ったんだけどね。子供達に『普通』って言われたよ」
「じゃあ、しばらくわたしが作りにくるよ。その方がいいよね?」
「マジで!? ありがとう、助かるよ~」
良かった……これで食事面はなんとかなりそうだ。
「私達も何か出来ることはないかしら? 期末テスト前だけど……」
「だったらいっそ、三人で泊まっちゃう? 期末テストまで、勉強も教え合えるし一石二鳥じゃない?」
麗花の問いに、詩音が提案してくる。
三人だと? いつものこのメンバーでか?
「うん、わたしも賛成だよ! その方がサキくんの負担にもならないよね?」
愛紗が「ナイス・アイディア!」っとテンションを上げて素敵な笑顔を向けてくる。
どうやら拒否権はないようだ。
いや嬉しいよ……みんなが泊まりに来てくれて。
けど、キミ達、肝心なことを忘れてるよ。
――俺の理性について。
夏休みの頃と違って、みんなとも結構な感じで進展しているからね。
家であのノリで密着されたら、絶対に間違いが起こると思う。
しかもエログッズの隠し場所も考えてねーし。
「だったらさ~、このまま冬休みに突入して三学期まで泊まるのはどう~?」
「「いいね♪」」
やべぇ。彼女達の間で段々暴走し始めている。
もうミカナ先輩の話、どっかにブッ飛んでんじゃないか!?
「まぁ、とりあえず期末テスト勉強合宿ってノリで頼むよ……冬休みとか、それから話し合いましょう」
最後、何故か敬語でお願いする、俺。
三人ともすっかり盛り上がっているのか、「いいよ」って軽く返事をしてくれる。
果たして、俺の話を聞いてくれているのか怪しいもんだ。
学校から帰宅し、自宅にて。
ミカナ先輩が大きなボストンバックを持って俺の家に来た。
ちなみに、彼女はお母さんの付き添いで、しばらく学校を休んでいるらしい。
「――サキくん、本当にありがとうね。これ、大智と萌衣の荷物……」
「はい、大丈夫ですよ。どうか上がってください」
「うん……ありがとう、お邪魔します」
ミカナ先輩は家に上がり込む。
初めて招き入れるので、やばいくらい緊張してしまう。
リビングに大智くんと萌衣ちゃんがおり、夏純ネェもくつろいでいる。
妹の萌衣ちゃんは早速、ミカナ先輩に抱き着いて甘えていた。
「あら、貴方が萌衣ちゃんのお姉ちゃんね……なるほど、モデルと聞いてたけど本物ね。けど、サキちゃん……ほどほどにしないと、そろそろ私も言わせてもらうわよ」
夏純ネェは呆れ口調で、俺に向けて可笑しなことを言ってくる。
「何を言うつもりなんだよ……言っとくけど、先輩に失礼なこと言わないでくれよ!」
俺の強い口調で、夏純ネェは「へいへい」とムカつく口調で流している。
腹立つわ……このニート姉ぇ。
「フフフ、やっぱり私の目に狂いはなかったな……サキくん」
ミカナ先輩は萌衣ちゃんの頭を優しく撫でながら、楽しそうに微笑んでいる。
「え? そうですか……? なんか恥ずかしいです、ははは」
「そんなこと……ねぇ、サキくん」
「はい?」
「……私もしばらく泊まっていい?」
ん? ミカナ先輩……今なんと?
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