第97話 生徒会追加メンバーと来訪者




 翌日の朝。



「へ~え。来月デビューする子、しばらく延期になったんだって……」


 早朝のトレーニングから帰宅しリビングに行くと、夏純ネェがテレビの情報番組を見ていた。


「誰のこと言っているの?」


「プリティ・ムーンの御手洗くんよ。チャラげでいつも腰を振っているけど、それがセクシーだって評判になっていたディニーズJrのアイドルよ」


「御手洗って……あの『御手洗みたらい 勇李ゆうり』か!?」


「サキちゃん詳しいんだぁ。ははぁ~ん、実は私と一緒でディニオタだな~? うん、流石親戚♪」


 ディニオタって何?

 夏純ネェ、やたら詳しいと思ったら……。


「デビュー延期って、どんな理由?」


「そこまではテレビで言ってないわね……待って」


 夏純ネェは自分のスマホでぐぐって見る。


「ふ~ん。体調不良とかがメインだけど、掘り下げてぐぐると……スキャンダルとか暴行にあって入院したって噂もあるわね」


「スキャンダル? 暴行?」


「あくまでネットの呟き記事よ。女の子に声を掛けてラブホテル街に消えた所、週刊誌記者に撮られているわ。その後、御手洗くんがゴミ捨て場で大怪我した状態で倒れていたって……誰かに暴行されたんじゃないかって」


「へ~え……その週刊誌、売っているかな?」


「サキちゃん、気になるの?」


「うん、実は俺、昨日そいつに会っているんだ。だから気になっていてね」


「流石、ディニオタね。わかったわ、売ってたら買っておくわ。私、ニートだからコンビニに行く機会は結構あるし……だから、サキちゃんお小遣い頂戴ッ!」


「夏純ネェ……俺、ディニオタじゃねーし。後、高校生に小遣いせびらないでくれる? バイトしろよ」


 昨日、絡まれた限りじゃ、そんな目に合っても自業自得野郎だが。


 暴行受けたとか聞くと、なんか気になってしまう。






 学校でも、詩音とその事が話題になる。


「サキ、ニュース見たぁ?」


「うん、あのアイドル男な……」


「びっくりしたよぉ。しかもぐぐったら結構ヤバイこと書かれているしょ~?」


「う~ん……誰かに仕組まれた感があるんだよなぁ」


「やっぱり、そう思う?」


「ああ。でも、そういう目に合っても不思議じゃない奴でもあるし……」


「だよね~。まぁ、あたし達に関係ないと言えばそれまでなんだけど~」


 詩音の言う通りだ。


 別に知人でもなんでもない。

 寧ろ、ざまぁって感じだ。


 昨日の件があるだけに、何か気になってしまっただけ。


 ただそれだけのこと。


 俺と詩音はそう割り切ることにした。






 放課後、生徒会室にて。


「体育祭は11月中旬だから、まだ少し余裕があるわ」


「その後、期末テストで冬休み……なんかあっと言う間だよな」


「ええ、でも生徒会は忙しいわ。サキ君やみんなの力が必要よ」


「わかっている。その為に副会長になったんだから、麗花のサポートはしっかりやるよ」


「うふふ、頼りにしているわ、サキ君」


「ちょっとぉ! 会議中に何、二人で桃色オーラ出してんのぉ!?」


 俺と麗花が話している所に、詩音がチャチャ入れてくる。


「俺達は別に……普通に支え合おうって言っているだけじゃないか?」


「でもレイちゃんのキャラゆるすぎ~! 普段、絶対にああじゃないよね~、クロッチ(黒原)!?」


「……え? ええ、まぁ(確かにあの東雲会長の絶対に見る事がないデレデレ具合、それも『異端の勇者』故かい、神西くん?)」


「失礼ね! 微笑んだらいけないわけ!?」


 普段冷静な麗花が珍しくキレている。


 愛紗はその光景を母のような眼差しで温かく見守っており、シンはしれっとして黙って書類に目を通していた。


 あの『王田』の件から、もう少しで1ヶ月が経とうとしている。


 修学旅行も無事に終わって、こうしてみんなと生徒会活動ができて、とても充実している。

 きっとこういうのが「何気ない幸せ」っというのだろうか。


 ふとそう思えてしまう。



 コンコン。



 誰かが扉をノックする。


「どうぞ」


 麗花が声を掛けると、ギィと音を立て扉が開けられる。


「あれ、キミは?」


 その姿を見て、俺が声を掛ける。


 ロータイプのツインテールが似合う、可愛らしい一年生の女子。


 軍侍ぐんじ 路美ろみだ。


「お、お久しぶりです。サキ先輩……」


「どうしたの?」


「あ、あのぅ、宜しければ、私も生徒会に入れてもらいたくて……」


「え? 路美が?」


 路美は頬を染めて、こくりと頷く。


「ロミロミ、魂胆見え見え~! どうせサキに近づくためでしょ~!?」


「北条先輩に言われたくありません! どうせ北条先輩だって、サキ先輩に傍にいたいから生徒会に入ったんでしょ!?」


「ちがうよ! アイちゃんが生徒会に入るっていうから、取り残されそうで寂しいから志願したんだよ! 言い出しっぺはアイちゃんですぅ!」


「ちょっと、詩音!? わたしまで巻き込まないでよ!」


 いきなり振られた愛紗も珍しく動揺して怒っている。


「知ってます。だから、私だって……傍に」


 路美は俯き瞳を潤ませる。

 その様子を見て、詩音はちょっと言い過ぎたと思ったのか、しゅんとして黙り込む。


「麗花、どう?」


 俺はとりあえず生徒会長に意見を求めてみた。


「そうね……正直、数は足りてるわ。でも、見ての通り二年生ばかり。来年のことを考えると、一年生の加入は必要よ」


「うん、俺もそう思う」


「けど、軍侍さん。貴方確かバスケ部に入ってたわよね? 一応、部活との兼務はできるけど大丈夫なの?」


「はい。大会が近くなれば、そっちに集中しなければならないけど、それ以外なら問題ありません!」


「そう、なら二人で担える役割がいいわね。会計監査なら、もう一枠作れるわ。黒原君、フォローできる?」


「……構いません、会長。(ま、まさか、神西くん! 生徒会にまでハーレムを作る気か!? なんてぇ、なんてぇ恐ろしい男だぁ!? そしてぇ、あんな可愛い後輩にまでモテて羨ましいぞぉ! ヒェェェェェェェェイ!!! ……おっと、ブレーキ、ブレーキ)」


 ※黒原氏が心の奥で何を考えているのか誰も知る由もない。



 こうして、軍侍 路美が生徒会の会計監査として加入した。


「あっ、そうだ!」


 俺はふと思い出し、自分の鞄から小さい袋を取り出した。


「路美これ――」


「サキ先輩……これは?」


「修学旅行のお土産。親戚のお土産を買う……そのぅ、ついでにね。会ったら渡そうと思ってたんだ」


 俺は気恥ずかしくなって照れ笑いする。


 ニコちゃんへのお土産を買おうと選んだ時、ふとこの子の顔も浮かんでしまったんだ。

 なんで浮かんだのか俺にもわからない。


 きっと純粋に好意を持ってくれる子だからか……。


 そういや、どこかニコちゃんとキャラが似ているなぁ。

 まぁ、ニコちゃんはチョロくないけどね。


「開けていいですか?」


「勿論」


 路美は頷き、袋を開ける。


 北海道らしく可愛らしいクマのキーホルダーだ。


「やばぁ、かわいい……先輩、ありがとうございます! 一生大事にします」


 路美はキーホルダーを両手に握りしめて喜んでくれる。


 うん、買ってきて良かった。


「ぐぬぬぬぅ~、サキ~、あたしには~!?」


「あるわけないだろ!? 一緒に修学旅行、満喫してたじゃないか!?」


 詩音がまた妙な焼き餅をやいてくるのでツッコミを入れる。



 コンコン。



 また誰かが扉をノックしてきた。

 今日は珍しく来客者が多い。


 麗花が「どうぞ」と言うと、扉が音を立てて開けられた。



 今度は二名の女子高生。


 まず一人は……。


「麗ちゃん、しぃちゃん元気~? 神西くん、先日はありがとうね~!」


 神楽 美架那先輩だ。


「ほうっ! め、女神ぃぃぃぃ! ヒィィィヤァァァッ!!!」


 黒原が奇声を発して、ソファーから転げ落ちて倒れる。

 こいつは特別アレだが、普通の男子生徒なら驚いても仕方ない。


 だが、シンはしれっとしているがな。


 そして、もう一人は初めて顔を合わせる女子生徒だ。


 気品に溢れた綺麗で可愛いらしい顔立ちだ。

 長くウェーブのかかったハイタイプのツインテールヘアのお嬢様系。

 身長は神楽先輩と同じくらいで、スタイルもなかなかいい。


「神楽先輩、そちらの人は?」


「この子ね、私の同級生で親友のアムちゃんよ」


「壱角 亜夢ですわ。どうぞ、よろしく」


 壱角先輩はやんわりと微笑み挨拶をしてくれた。

 

「あ、悪役令嬢!?」


 この中の誰かが、彼女に向けてそう大声で呼んだ。






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