第12話

「どうして処刑魔法をノータイムで、しかもそんなに連発出来る!」

 そんな質問が今まで、カシウスには投げかけられることはなかった。何故なら、基本的にカシウスと戦ったものは救済たる死を迎えるからだ。

 今回の相手はまたもや悪魔。

 街を抜け、出て行こうとした時に偶然にも出会してしまったのだ。どうにも、この街に潜り込み、人間の動向を観察していたのだとか。

「分からないな、私にも」

 悪魔からしてみれば明らかにおかしいと思うものであった。

 悪魔は魔を扱う者。であれば、人間以上に魔法に精通している。だが、目の前の男はただの人間。乱発される処刑魔法に驚きを隠せない。

「ほざけ!火炎魔法第六位階、火炎球!」

「おっと!危ないっ」

 火炎球が襲いかかる。それを体を捻ることでカシウスは何とか回避する。

 魔法を防ぐ手段は、発動をされて仕舞えばカシウスにはない。

 だからこそ、常々、発動される前に対処をしているのだが、どうにも今回はそうもいかないようだった。

 先ほどから断切を幾度となく放っているのだが、その全てを避けられる。それは断切があまりにも直線的過ぎるからであろう。

「燃え尽きろ!」

「ーーっ!」

 悪魔の放つ火炎球がカシウスの目前に迫り来る。カシウスはそれを全力で後ろに走り、避ける。

「……第四位階、磔刑」

 それは以前にアークを倒した処刑魔法。地面から這い出る十字は悪魔を捕えようとするが、速度が足りない。カシウスは焦りの表情を浮かべる。

 勝機は見えた。これ以上のものは無い。

「貰った!」

 そう確信して悪魔は突っ込んでくる。

「ーー第三位階、串刺し」

「は?」

 真っ直ぐに突っ込んでくる悪魔を磔刑以上のスピードで迫り上がった、鋭い杭。それが悪魔の体を容赦なく刺し貫く。

「ぐがっ……!」

 喉にも杭が突き刺さり、悪魔は発声をすることができずにいる。

「馬鹿だね」

 血だらけの悪魔に近づき、カシウスはその頭をコンコンと叩いた。

「魔法でも放っていたら勝てただろうに。処刑魔法には防御用に作られたものは無いからね」

 カシウスの言葉に悪魔は何も言い返すことができない。それは悪魔が話すことのできるような状況では無いからだ。このまま放置をしていても悪魔は死ぬだろう。

「そういえば、この前のアーク君はどうなったんだい?」

 そう尋ねるが、悪魔は答えない。

「うーん、答えられないならいいや」

 仕方ないと言うように、カシウスは呟き、その悪魔から二、三歩、後ろに下がり、距離を取る。

「第二位階、火刑」

 カシウスが魔法を唱えると、獄炎が悪魔を包んだ。

「もしかしたら、火への耐性があるかも知れないけど、それ、死ぬまでは燃え続けるんだよね」

 燃え盛る悪魔に背中を向けて、放置したままカシウスはその場を去ってしまった。

 今度こそ、カシウスはその街を出た。

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