第253話:温泉とおもてなしと騒動と 50
赤城はグウェインと、彼の姉であるアリーシャの前では可愛らしい笑みを浮かべており、俺たちは怪訝な表情を浮かべてしまう。
それにもかかわらず態度を変えない赤城は強心臓の持ち主なのか、はたまた単に周りが見えていないだけなのか。
まあ、どちらにしてもグウェインがいれば赤城がこれ以上暴れることはないということで、とりあえず様子見かな。
しかし、様子見をするにはグウェインだけではなくアリーシャにも頑張ってもらわなければならない。
今もなお赤城はアリーシャと仲良くなろうと積極的に話し掛けており、グウェインにも笑顔を振りまいている。
……うん、やっぱりアリーシャには頑張ってもらおう。
「うわー! このお茶美味しいですね!」
「そうかい? アキガセさんに入れ方を教えておいてもらってよかったよ」
「……へぇ~? 先生がねぇ~?」
グウェインの何気ない返答を受けて、赤城の視線が先生へと向く。
それも二人に向けている優しい視線ではなく、まるで敵対者へ向けるような鋭い視線だ。
先生は即座に首を横に振ると、何やら満足したのか再び笑みを浮かべてグウェインに向き直った。
「……あいつ、ヤバすぎるだろう」
「グウェインの奴、大丈夫なのか?」
「あれだけ態度をあからさまに変えられても気づかないなんてねー」
「違うよ、ユリアちゃん。グウェインさんは笑奈さんの元の性格を知らないんだよ」
「私を睨まないでほしいわねぇ」
それぞれが意見を口にしていく中、アリーシャが気を取り直す形で一度咳ばらいを挟んだ。
「ゴホン! ……えっと、改めての確認になりますが、アカギさんは私たちの味方になってくれるということでよろしいですか?」
「もちろんです、お姉さん!」
「……はぁ。でしたらまずは、ロードグル国の現状について教えていただけますか?」
「もちろんです! あっ、でも、私がこっちに向かう以前の情報になっちゃいますがよろしいですか、お姉さん?」
「……それでいいですよ。それと、あの、最初の時のようにお話しされた方が……いいえ、なんでもありません」
おいおい、赤城よ。本性がバレそうだからといってアリーシャまで睨むなよな。
器用にグウェインから見えないようにしているよな、おい!
とはいえ、ロードグル国の最新の情報が手に入るのはありがたい。陛下もなかなか情報が手に入らないと溢していたからな。
赤城の話によると、ロードグル国は予想通りに内政に力を入れているのだとか。
マリアだけではなく勇者である生徒会長も積極的に動いているようだが、こちらも当初の話から操られているわけではないらしい。
残りの三人はマリアに操られているらしいが、名前を聞くとどちらかといえば素行の悪い奴らだったので、今となってはどうだかわからないと赤城は話す。
「土門君、渡辺さん、小田君……」
「あいつらは上級職だし、そう簡単にはくたばらない……いいえ、死なないんじゃないかしら?」
本性がポロリと出ているぞ、赤城よ。
それは本当に大丈夫なのか?
「まあ、戦争も一先ずは終わっているわけだし、問題はないんじゃないか?」
「先生、みんなを信じましょう」
「……そうね。ありがとう、八千代さん。赤城さんも、みんなのことを教えてくれてありがとう」
「これくらいどうってこと……ないですよ」
だから赤城、本性が出ているんだってば!
ほら、グウェインも笑わない! お前、絶対に気づいているだろうよ!
「アカギさん、普通に話してくれても構わないよ?」
「……え、えぇ~? 私、これが普通の話し方ですよ~?」
「そうかい? でも、無理しているように見えちゃったからさ。もしも辛かったら言ってね」
「――!? ……イ、イケメンだな~」
イケメンに自分のことを気遣われ、最後には笑顔で優しくされたのだ……これは、完全に惚れたな。
いつの日か、赤城笑奈が大和笑奈になる日も近いかも……しれない?
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