第233話:温泉とおもてなしと騒動と 31

 この日の密談はこれで終了となり、翌日は大臣たちも交えたとなった。

 話の流れのほとんどが温泉、料理、お酒、布団の四つに絞られており、どれも王都へ持っていけないか、というものだった。

 料理に関しては最初に陛下と取り決めていた通り、すでに同行してくれていた料理人たちにレシピの伝授を始めており、調理魔導具の使い方も指導されている。

 こちらから調理魔導具の献上を行うことも話がついているので、料理についての話し合いはすぐに終了した。


 次に話があがったのはお酒について。

 ただ、こちらは少しだけ話が難航してしまった。

 ……いや、難航したといってもこちらが渋ったり条件をつけたりしたわけではない。


「むむむ……この条件を常にクリアしなければならんのかぁ」

「多少逸脱しても構わないけど、そうすると味が落ちる原因になるんだよねー」

「それは困る! この美味さを知ってしまえば、これ以下の日本酒を飲むなど難しいぞ!」

「どうにかこちらに来ていただき、指導をお願いすることはできないだろうか?」


 こちらで作った分を出荷することも可能だが、それだといずれ量に限界がきてしまう。

 ならばと製法をそのまま伝えてみたのだが、やはりというか魔導師たちからは苦しそうな声が返ってきた。

 一定の温度、清潔であるかどうか、またお酒を入れておく保存容器の管理など、森谷の口からはスラスラと条件が口にされていったのだ。


「うーん、製法を売ることはできるんだけどなぁ。僕がそっちに行くことで、繋ぎ止めようとかはないですかね?」

「もちろんですよ、様」


 ちなみに、今の森谷は姿を幻惑魔法で大人の姿に見せており、名前をリキと偽っている。

 さすがに三歳児の姿のままお酒の作り方を説明させるわけにもいかず、代わりに別の誰かに説明させるとしても細かな部分まで答えられるとは思えない。

 というわけで、今回は森谷の力を借りて説明をお願いしていた。


「うん。そういう取り決めなら問題ないよ。でも、約束を破ろうとする人がいたら、僕はその時点で手を引くからそのつもりでね」


 陛下や宰相を相手にまったく引く気がない森谷を見て表情をしかめる者もいたが、多くの者が日本酒の虜になっており、さらにいえばその先にお金の匂いを嗅ぎつけているので文句は言わなかった。

 日本酒の製造には森谷が直接指導するということで話がまとまり、お酒の話もようやく終わった。


 さて、三つ目の話題は布団についてだ。

 実をいうと、陛下たちの宿屋に置いていた布団一式が温泉街でも最高級の素材で作られたものであり、他の宿屋には一つから二つ下のランクで作った布団を置いてあった。

 しかし、それでも騎士や魔導師、大臣たちの全員が布団に大満足しており、このまま持って帰りたいと口にする者が多数現れていた。


「な、なんと! あれよりも一つ上のランクがあったのか!」

「いや、まあ、我々が陛下たちと同じものを使うわけにはいかないか」

「しかし、それでも最高の眠りを体感することができましたわ! 屋敷で使っているものよりも数段上でしたもの!」


 誰もが布団を褒め称え、低いランクのものでも構わないと口にし始めていた。


「こちらに関しては、どうしても素材が魔の森の魔獣からしか取れないので生産を委託することは難しいです。ですが、温泉街やグランザウォールには十分に行き届いているので、今後は優先して王都へ卸すことも可能です」

「「「「ありがたい!」」」」

「ですが……販売の委託先をどの商家にするか、それが問題ですけれど」


 最後にアリーシャがそう口にすると、大臣たちがお互いに睨み合いを始めてしまった。

 日本酒もそうだったが、布団にもお金の匂いを嗅ぎつけたからで、自分たちの息の掛かった商家に販売を委託してもらいたいと思うのは当然のことだろう。


「そこに関してはまた後日、こちらで話し合いを終えてから伝えることとしよう。このままではこれ以上、話し合いが進まなくなりそうだからのう」

「「「「わ、わかりました、陛下!」」」」


 陛下もそのことを理解していたのだろう、すぐに口を挟んできて布団の話し合いを終わらせてしまった。

 ……まあ、陛下には最高級の布団を献上するので問題はないんだけどね。




※※※※

【一週間の宣伝マラソン!七日目!】

発売から五日が経過しました!

そして、宣伝マラソンもラストとなります!皆様、お付き合いいただきありがとうございました!


タイトル:職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職で自由にいきたい~

レーベル:MFブックス

イラスト:ゆのひと先生

発売日:2022/03/25

ISBN:9784046812827


とはいえ、まだまだ発売から五日と一瞬間も経過していないので、まだまだ売れてほしい!

皆様、書店でお見かけしましたら、ぜひともよろしくお願いいたします!!


なお、次の更新からは今まで通りとなりますので、三日に一回の更新となります。

今後とも『職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職で自由にいきたい~』をよろしくお願いいたします!!!!!

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