第194話:予定外のサバイバル生活 61
――森谷が三歳児の肉体を手に入れてから、三日が経過した。
森谷は剣の女王の居場所がわかった途端に飛び出していってしまい、残された俺たちはどうするかを話し合った。
その結果、レレイナさんを除いたグランザウォール勢には戻ってもらうことにした。
開拓地の維持をするだけなら問題ないのだが、何にでもイレギュラーを存在するからね。
アリーシャは残ると口にしていたが、そもそも領主である彼女がこんな場所まで出てきていることが異常なのであり、そこはライアンさんとヴィルさんに引っ張って行ってもらった。
リコットさんは苦笑を浮かべていたものの、彼女も下級職業であり、そろそろ限界が近づいてきている。
そのことについてはリコットさんが一番実感しているだろうし、そこもライアンさんには話をしている。
説得は上司に任せて、俺はこの地を拠点にできるようレレイナさんと一緒になって考え始めていた。
「……あの、トウリ様? 本当に私もここに残ってモリヤ様と管理をしなければならないんですか?」
「軌道に乗るまではお願いします。管理も他の人に任せられるようになれば、戻ってきてもらいますから」
「うぅぅ……頑張ります」
ここは魔の森だということを除けば非常に暮らしやすい場所だと思うんだけど、どうしてそんなに嫌なんだろうか。
「そんなに嫌ですか? 森谷はいい人ですし、食事だって美味しい、温泉もあって健康的になれると思いますよ?」
「確かにモリヤ様が悪い人ではないということはわかりましたけど……でも、やっぱり私にとっては悪魔タイキ・モリヤの印象がなかなか抜けないんです」
「あー、そっちかぁ」
グランザウォール勢の方が特殊なんだろう。
アデルリード国の王都に生まれ、そして貴族の子女として育てられてきたレレイナさんは、小さい頃から悪魔タイキ・モリヤの話を聞かされてきたはずだ。
それは違うのだと今さら言われても、すぐには受け入れられないのかもしれない。
「でも、短い時間とはいえ森谷から怖い印象は受けなかっただろう?」
「……はい。陛下もモリヤ様の存在をお認めになられていますし、受け入れなければと思っているのですが、なかなか気持ちの部分で落ち着かなくて」
苦笑しているものの、レレイナさんにとっては大きな問題になっているのだろう。
鑑定スキルでどうにかなればいいのだが、新が立ち直る時もそうだったけど、気持ちの部分は本人が乗り越えるしかない。
俺にできることはそれをサポートすることくらいか、それ以外だと――
「……よーし、レレイナさん!」
「なんですか?」
「森谷が戻ってくる前に――拠点を広げましょう!」
「……はい?」
「できるだけのことを進めて、森谷を驚かせてやりましょう!」
「……ええええぇぇっ!? な、なんでそうなるんですか!!」
簡単なことである。忙しくしていれば、考える暇もなくなるじゃないか。
ここに残っている円、ユリア、新、先生はレベル上げに行っちゃったし、俺とレレイナさんにできることは拠点を広げることくらいだしな。
「考える暇もないくらい、働きましょう!」
「い、嫌ですよ! そこまで急ぐ必要もないですし――」
「さあさあ、やりますよ! 温泉のために!」
「本音はそっちですよね! 私もグランザウォールに帰してくださいよおおおおぉぉっ!」
ふふふ、帰すわけがないじゃないか。
温泉がある拠点のために、やるべきことは今のうちにやらないとね!
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