第97話:自由とは程遠い異世界生活 35
まさかの一撃討伐で呆気に取られていた俺だったが、後ろからディートリヒ様に声を掛けられて我に返った。
「マヒロ様、レベルの確認をお願いできますか?」
「……あ、はい。そうですね、確認してみます」
こんなに弱くて本当にレベルが上がるのか。ブルファング50匹相当の経験値を持っているのか。
そんな疑問を感じながらステータスを開いてみたのだが……おぉ、マジかよ!
「ほ、本当にレベル5に上がってる!」
「いや、普通だとレベル4から一気に三つや四つは上がってもいいんですけどね」
興奮する俺とは違い、ディートリヒ様はやや呆れ顔だ。
だが、俺にとってはとても素晴らしい結果なので興奮しないわけにはいかなかった。
この調子でレベルスライムの討伐を続けていけばレベル10に到達する事もできるんじゃないだろうか!
「もう一度鑑定をしてもよろしいですか?」
「もちろんです。神級職ですか……うん、とても楽しみです」
ディートリヒ様の許可も得られたので、俺はもう一度レベルスライムの居場所を鑑定する。
すると、意外にも近くに鑑定結果が現れた。……いや、近くというかこれは……。
「……ここに、まだいますね」
「そうなのですか? また結界魔法ですか?」
「いえ、違うみたいです。先ほどディートリヒ様が塞いでくれた穴、その中にまだいるみたいなんです」
「あちらに? ……レベルスライムは群れる傾向があるのでしょうか?」
「鑑定してみましょうか?」
きっとディートリヒ様は研究畑の人間なんだろうな。
そう思った事もあるし、ディートリヒ様にはお世話になっている。これくらいなら問題ないと思って口にしたのだが、あっさりと断られてしまった。
「いいえ、まずはマヒロ様のレベル上げを優先いたしましょう」
「……いいんですか?」
「もちろんです。では、アースロックを解除いたします」
「ありがとうございます! もし逃げ出そうとしたレベルスライムがいたら、ディートリヒ様が倒してくださいね」
「おこぼれがいれば、ですがね」
軽くウインクしながらそう口にしたディートリヒ様を見て、この人は本当に良い人だなと思ってしまった。
自分の気持ちではなく俺の事を優先してくれるし、わざとおこぼれを作らなくてもいいと言ってくれたように感じたからだ。
だけど……まあ、うん。わざとというか、絶対におこぼれは出てくると思うよ?
「アースロック解除!」
「い、いくぞ!」
そして、穴から飛び出してきたレベルスライムは――15匹。
「こ、こんなに!?」
「おこぼれはお願いしますねええええっ!」
今の俺に全てのレベルスライムを一人で討伐する事は不可能に近い。
倒せるだけ倒して、後ろに逃げたレベルスライムはディートリヒ様に任せてしまおう。
慣れない剣術でレベルスライムを斬って、斬って、斬りまくる。
それでも5匹を倒したあたりから後ろに逃げていく個体が出てきた。
「ウインドアロー!」
しかし、そこはディートリヒ様が素早く魔法で倒してくれるので問題はない。
まあ、逃がしてしまってもいいとは思うけど、わざわざ面倒な案内を引き受けてくれたんだから少しくらいは旨みがないとやってられないよな。
そんな感じでレベルスライムの討伐を続けていき、俺が9匹でディートリヒ様が6匹のレベルスライムを倒した。
必死に剣を振ったせいもあって息切れを起こしているが、その場から一歩も動かずに魔法で倒していたディートリヒ様は普段と変わらない表情をしている。……いいなぁ、魔法は。
「……そうだ、レベルを確認しよう。ステータス」
ステータス画面を開いてすぐにレベルの項目に視線を向ける。
……よし……よし、よしよし!
「レベルが8になりました!」
「おめでとうございます、マヒロ様! おこぼれで私のレベルも一つ上がりました」
「おぉっ! 良かったですね、ディートリヒ様!」
「それにしても、まさかあれだけのレベルスライムを目撃する事があるとは思いませんでした」
俺の言葉に照れ笑いを浮かべながらそう口にしたディートリヒ様を見て、勝手ながら鑑定を行う事にした。
「鑑定、レベルスライムの習性」
十日や五日でようやく見つけられるかどうかのレベルスライムが15匹も見つかったのだから、習性が分かればこれからの王家のレベル上げが楽になるはずだ。
ディートリヒ様の役にも立てるのであれば、これくらいはね。
「……ディートリヒ様の言っていた通り、レベルスライムは群れる傾向にあるようですよ」
「そうなんですね。しかし、ならばどうして見つけられても一匹だったのでしょうか?」
「あくまでも、群れでいるのは巣の中でだけのようです。洞窟内の見回りを行うのは一匹や二匹だけのようです」
「という事は、我々が見つけていたのは見回りのレベルスライムだったという事ですね」
「はい。巣を見つける事ができれば、案外簡単に討伐ができるかもしれませんね」
鑑定結果を伝えると、ディートリヒ様はレベルが上がった俺のように興奮した様子を見せていた。
「これならば結界魔法のレベルが高い者がいれば……っと、すみません、マヒロ様」
「いえいえ、お力になれて良かったです」
「ははは。……で、では、このままレベル上げを行いますか?」
「できればレベル10まではお願いしたいです」
「分かりました、続けましょう」
そしてもうしばらく北の洞窟でレベルスライムの討伐を続けて――俺はレベル10になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます