第二章:自由とは程遠い異世界生活
第60話:プロローグ
俺、
今いる国とは違うが、クソな王様が治めるシュリーデン国で勇者召喚として一クラスが丸ごと召喚され、俺は追放された。
魔の森と呼ばれる強力な魔獣が跋扈する場所に転移させられたが、あれやこれやがあって生き残っている。
細かな説明は省くが、今の俺は同じ異世界人を祖先に持つアリーシャ・ヤマトの世話になっていた。
魔の森から生き残り、同じ勇者召喚で異世界に召喚された先生や二人の同級生とも再会できて、俺はようやく自由を手に入れられる……そう思っていたのだが。
「みんなのことも助け出すべきです!」
そのように意見してきたのは、幼馴染の
友達の
二人は俺と数学教師である
そして、その話によれば残りの同級生たちは何かに操られているようだと口にした。
「無理やり従わされているのであれば、絶対に助けてあげるべきです!」
「そうは言っても、その術がないのです」
円の意見に難色を示しているのは、俺を助けてくれたアリーシャだ。
彼女は俺が今いるアデルリード国、そこの魔の森に面している防衛都市グランザウォールの領主様である。
「ですが!」
「八千代さん。無理を言ってはいけないわよ」
「……秋ヶ瀬先生」
興奮している円の両肩に手を置いて、先生が宥める。
「……ねえ、桃李」
その時、俺に声を掛けてきたのはユリアだ。
「どうした?」
「桃李の職業とスキルについて教えてもらったけど、それでクラスの奴らを助ける方法を探し出せないの?」
「そうだよ! 桃李君、お願い!」
おいおい、そこでいきなり俺に話を振るなって。
確かに二人が追放された後、落ち着いたタイミングで教えはしたけど全てを伝えたわけじゃないんだ。
「それは無理」
「どうして!」
「鑑定できないからだよ」
「え? 真広君、できないんですか?」
どうやら先生も俺の鑑定スキルの可能性を見い出していたようで驚きの声を漏らした。
まあ、検証の結果をこの場にいる誰にも伝えてなかったし、仕方がない事かもしれない。
「追放直後は緊急事態だったし、ぶっつけ本番で色々と試してたんだ。それで、転移の祠が出来上がったあたりから俺なりにスキルについて色々と検証していたんです。その結果から、無理だと分かったんですよ」
「……どういう事なの?」
そこからは俺の説明の時間となった。
俺の鑑定スキル……いや、職業の鑑定士(神眼)は非常に万能だ。使い方によってはマジで国を一つ手に入れる事も、もしかすると世界を手にする事だってできるかもしれない。
だが、それだけの事が今の俺にはできないという事も判明した。……まあ、そんな事はしないけど。面倒くさいし。
「まず、鑑定するにあたりそのものとの距離が重要になります。離れていればいるほど、消費する魔力量が多くなります。今まではたまたま近い場所の鑑定だけだったから問題ありませんでしたが、国を二つも挟んだ先の物事となると俺の魔力が持ちません」
これは魔の森へ向かった際、グランザウォールの兵士であるヴィル・トーマスさんの助言から検証したものだ。
あの時は鑑定する対象によって魔力消費量が変わるか否かというものだったが、そこから距離によって変わるか否かを検証した結果だった。
「そんなこと、いつ検証したのですか?」
「あー……ごめん、実はアリーシャが王都へ魔の森の現状を報告へ行った時にね」
アリーシャが離れていくたびに居場所の鑑定を掛け続けていた。
その結果、離れていくほどに魔力消費が増えていき、王都に辿り着くだいぶ手前で鑑定ができなくなってしまった。
「というか、魔力が一回の鑑定で尽きて気を失ったんだ」
俺が検証結果を簡単に報告していると、何故だかアリーシャは顔を真っ赤にしてこちらを見てきた。
「ご、ごめん、やっぱり怒るよね。勝手に鑑定していたわけだし――」
「違います! 倒れるまで検証するなんて、何を考えているんですか!」
「いや、別に悪い事じゃないですよね? 自分の能力について見極めるのは大切な事ですし」
「そうですけど! 何かあったらどうするつもりだったんですか!」
「一応、対策はしていたよ。なあ――グウェイン」
「「「「……え?」」」」
アリーシャ、円、ユリア、先生の視線が壁際に立って一言も発していなかったグウェイン・ヤマトへ向いた。
「……グウェイン、知っていたのね?」
「えっとー……まあ……そうだねー……」
「どうして教えてくれなかったんですか!」
「ト、トウリが教えていると思ったんだよ! 今回は僕、悪くないからね!」
アリーシャとグウェインは姉弟だ。
二人がいなかったら今の俺もいなかっただろうし、感謝の気持ちしかない。
ただし、グウェインはいたずら好きのようで以前に死にかけた過去がある。
これくらいの仕返しは問題ないだろう。
「という事で、俺の鑑定でみんなを助けるのは無理。円もあまりアリーシャたちに迷惑を掛けるなよ」
俺の言葉に円は悲しそうに俯いたのだった。
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