第58話:本当によくある勇者召喚 53

 兵士からはライアンさん、ヴィルさん、リコットさんの三人。

 そして冒険者ギルドからはギルマスが選抜した三人の冒険者が同行してくれることになり、二人が中級職でもう一人はなんと上級職だというのだから驚きだ。


「魔の森に面しているグランザウォールには数名いるぞ! がははははっ!」


 というのはギルマス談である。

 そこは置いておくとして、俺たちは和解したその日から魔の森に生息する魔獣の討伐と開拓を進めていったのだが、その中で一番の障害となるべき相手が一匹存在していた。


「まずはクイーンドラゴンを討伐したいと思いまーす」

「「クイーンドラゴンだとおっ!?」」


 うん、前回もこの反応は見た気がするよ。


「おいおい、いきなり無茶苦茶なことを言ってくれるじゃねえか!」

「いくらギルマスのお願いだからと言って、命を無駄にするつもりはねえぞ!」

「……策はあるの?」


 中級職の男性二人が声を荒げている中、上級職の女性冒険者だけは冷静に口を開いた。


「もちろんです。今回のクイーンドラゴンの討伐は、このメンバーなら絶対に成功するので安心してください」

「……そう、それならいいわ」


 正直なところ、俺も鑑定の成功率を見た時には驚いた。

 何せ、成功率100%だったからだ。

 これは一時的に能力を上げる果物を全員に使うわけでもなく、先生に使うだけでそうなったから驚きだ。


「それと、いずれバレることだから伝えておきます。俺と秋ヶ瀬先生は異世界人です」

「「い、異世界人!?」」

「……へぇ」

「だからかもしれませんが、先生の魔力は他の方々よりも高くクイーンドラゴンの討伐も可能だと判断しました」


 ドラゴンはレベル1であっても人間のレベル10相当だと以前に聞いたことがあるが、それはこの世界の人間を基準に考えられたものだ。

 異世界人ならばレベルアップ時の能力の上り幅が大きいのでその限りではない。それゆえの成功率100%ということなのだろう。

 それに、こう言っておけば先生の魔力を果物で底上げして強力な魔法をぶちかましても怪しまれることはない……はずだ。


「まあ、私は討伐できるなら詮索はしないわよ」

「ありがとうございます」


 さすがは上級職の冒険者というべきか、依頼を達成できればそれでいいのだろう。

 俺は素直にお礼を口にして、クイーンドラゴンの討伐へと向かったのだが――結果から言おう、先生だけで十分だったよ。

 物陰に隠れてクイーンドラゴンが舞い降りるのを待ち、着地のタイミングを狙って魔力500オーバーのサンダーボルトを全力で放ってもらった。

 すると、クイーンドラゴンの大きさを超える雷が降り注ぎ一撃で黒焦げになってしまったのだ。


「「「……これからもよろしくお願いします、姉御!」」」

「うふふ、よろしくね」


 今までずっと冷静だった女性冒険者も声を大にして先生のことを尊敬の眼差しで見つめている。

 先生も嫌ではないのか笑顔で応えていた。

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