エッセイ まいにち一歩クン

episode 4 お星さまが降って来る！

　「一歩（いっぷ）、起（お）きて。一歩（いっぷ）、ほら、一歩（いっぷ）ってば」

「ん、なぁ～に。あ、ボク、寝（ね）ちゃってたんだ、ママ」

どうやらボクは、チャイルド・シートで転寝（うたたね）していたみたい。

「ほら、着（つ）いたわよ」

「一歩（いっぷ）、ほら、凄（すご）いぞ～。見（み）てごらん」

「うん、パパ」

ボクは欠伸（あくび）をしながら目（め）をこすって空（そら）を見（み）た。

「うわぁ、凄（すっご）いなぁ。これ、みんなお星（ほし）さま？」

「そうよ。みんなお星（ほし）さまよ、一歩（いっぷ）。まるでお空（そら）から降（ふ）ってきそうね」

「どうだ、手（て）が届（とど）きそうだろ。一歩（いっぷ）」

パパに言（い）われて、ボクは手（て）を伸（の）ばしてみた。でも、届（とど）かなかった。

「ア・ハ・ハ・ハ・ハ。＜ハ・ハ・ハ・ハ・ハ＞」

パパがボクを肩車（かたぐるま）してくれた。

「どうだ、一歩（いっぷ）。今度（こんど）は届（とど）きそうか」

「無理（むり）だよ～」

「やっぱり、無理（むり）かぁ」

「ア・ハ・ハ・ハ・ハ。＜ハ・ハ・ハ・ハ・ハ＞」

「ここは、どこ？　お星（ほし）さまは、どうしてこんなにいっぱい見（み）えるの？　ボク、ビックリだよ」

「ここはね、前（まえ）にキャンプしたことがあるお山（やま）の公園（こうえん）よ」

「パパもビックリだよ。でも、お星（ほし）さまは、ホントはいっつもキラキラ光っているんだよ、このくらいは」

「でも、おウチじゃ、こんなに見（み）えないよ。お月（つき）さまは見（み）えるけど」

「それはね、お家（うち）の周（まわ）りが明（あか）るいからよ」

「明（あか）るいから？」

「そう。一歩（いっぷ）のお家（うち）も、お友達（ともだち）のお家（うち）も、コンビニも夜（よる）は電気（でんき）が点（つ）いてるでしょ」

「ウン。道路（どうろ）も明（あか）るいし、自動車（じどうしゃ）のライトもね」

「ここはどう？　周（まわ）りが真っ暗（まっくら）でしょ」

「ホントだ、ママ」

「いいこと教（おし）えてやろうか、一歩（いっぷ）」

「なになに。教（おし）えて、教（おし）えて、パパ」

「ホントはお星（ほし）さまは、昼間（ひるま）も光（ひか）ってるんだ」

「えっー。昼間（ひるま）も～」

「昼間（ひるま）はお日（ひ）さまが眩（まぶ）しいから、見（み）えないだけなんだ」

「へー、そうなんだ。パパ、凄（すご）いねぇ」

「いつか、一歩（いっぷ）がもう少（すこ）し大（おお）きくなったら、富士山（ふじさん）に登（のぼ）ってみようか」

「富士山（ふじさん）って、お風呂（ふろ）の富士山（ふじさん）？」

「“滝の湯”の富士山（ふじさん）じゃないよ。アレは登（のぼ）れないだろ。ホンモノの富士山（ふじさん）だよ。日本一（にっぽんいち）の富士山（ふじさん）」

「ア・ハ・ハ・ハ・ハ。＜ハ・ハ・ハ・ハ・ハ＞」

「富士山（ふじさん）、行（い）く、行（い）く～」