第22話 デート

今日は、いわゆる初デートというやつだ。

駅に行くと、ほたるが待っていた。


「やっほー!」


今日も元気印だ。


「暑いね~GW明けの学校、暑くてヘタりそう~~」


「ほたる、体力あるから大丈夫じゃね?」


来た電車に乗り込みながら話す。


「でも中学校と違って、登下校も時間かかるから、帰ってくるとヘトヘトだよ」


「そ?意外」


「も~タケルさ、私のこと何だと思ってんの?」


「運動系の部活してる女子って、なんかタフなイメージあるしさ」


「そうだね、君は完全に文化の香りしかしないからね」


僕は背はそれなりに高いのだけど、スポーツが得意というわけでもないし、することも体育の時間くらいだから、細身でひょろひょろしているように見られる。完全に文化系男子なんだろう。


「パルコでいいんでしょ?」


高校生女子が買い物に行くとなると、このあたりではパルコが定番だった。電車を2駅分乗って、パルコに向かう。折り畳み傘は、日傘兼用ができるものが欲しいらしく、デザインが~重いのは嫌だし~などと物色して、ようやく気に入ったものを見つけたようだ。


「なんか飲む?」


歩いていたらマックを見つけて、声を掛けてみた。


「飲む!マックシェーク!!」


ほたるらしい、そう、こういう時にちょっとホッとするというか、可愛いところがあるな、と思えばいいんだ。少しずつ、そうやって思えるようになれば…。


「あれ?タケルくん?」


後ろから良く知った声で話しかけられた。振り返ると、スーツケースを引っ張ったパンツスタイルのはるか先生が立っていた。


「先生…」


「あ、こんにちは」


先生は、僕に女の子が連れがいることに気付いて、ほたるに向かって笑顔で挨拶した。


「ごめんね、邪魔しちゃったかも。私今から旅に出るの~!またゴールデンウィーク明けのレッスンでね!」


「はい、あの…気を付けて」


「ありがとう!またね~」


先生は重たそうなスーツケースを引っ張りながら、改札の方に向かって歩き出した。


「はるか先生って、あの人だよね?ってゆーか、いくつなの?」


「たぶん35歳くらいじゃないかな」


「なんか、想像してたより若くてアグレッシブな人だった。ピアノの先生ってもっとおしとやかな、吹けば風に飛んでっちゃうような人なんじゃないの?」


「少なくも、あの人はそんなことじゃ飛んでかないね。マックシェーク飲むんでしょ?行こ」


「うん…」


どこに旅行に行くんだろう。次のレッスンで聞いてもいいかな。偶然会えたんだから、聞くくらいなら迷惑にならないかも。

僕たちはマックシェークを飲みながら、宿題が終わってないことや、バレーボール部のメンバの話などをして、健全なデートは無事終わった。


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