水谷一志のエッセイ「クラインの壷」

閑話 ゲティア問題に関して～JTBの反例～

1.　JTBに関して

知識とは、正当化された真なる信念であるという定式がプラトン以来の伝統であり、これを「JTB定式」と呼ぶ。

JTB定式によれば、ある命題についての信念が

(a)その命題が信じられている

(b)その命題が真である

(c)その命題を信じる人が信じるに足る理由を持つ

の場合知識となり、かつこれらが満たされている場合のみ知識となるとされている。

では、この「(a)かつ(b)かつ(c)は知識を持っている」は真であるか。

尚、この問題は基本的にはすべての人が関係しうるものである。

2.　JTBの反例

Ⅰとある宗教～天動説～

ジョンはとある宗教に入信しており、その宗教では天動説が支持されている。

この場合、

(a)その命題（天動説）が信じられている―真

(b)その命題が真である―偽

(c)その命題を信じる人が信じるに足る理由を持つ―真

（ジョンは天動説を支持する宗教に入信している―真、であるため）

この場合、「(a)∧｛￢(b)｝∧(c)は知識を持っている」は真である。

Ⅱとある視覚障碍者

マリーは視覚障碍者である。またマリーは、「地球は青い」と言うことを直観で信じている。

この場合、

(a)その命題（地球が青い）が信じられている―真

(b)その命題が真である―真

(c)その命題を信じる人が信じるに足る理由を持つ―偽

（マリーは地球が青い証拠を見ている―偽、であるため）

この場合、「(a)∧(b)∧｛￢(c)｝は知識を持っている」は真である。

3. 終わりに

JTB形式には無数の反例が存在する。そのため、我々はJTB形式を「知識」に関する一つのツールとして使用することが有効である。