第11話 独白と後始末
「あの、私が掃除します」
意外にもミーシャさんがそう言った。
「え?でも……」
「大丈夫です……さっきはちょっとびっくりしただけです……
それに、血を見るのはもう慣れてるんです」
そうなのか……??
「店主から魔女狩りの話はお聞きになりましたか?」
「うん、聞いたよ」
「実は私、いや正確には私の両親は魔女狩りにあったのです……」
え?!そうなの、ミーシャさん?!
「はい。
うちの家族は、あなたがお買いになった邸宅に住む下流貴族でした。
ある日、うちに騎士がたくさんやってきて、父と母を連行していったのです。
それはもう、本当に突然でした。」
そう言いながら彼女は雑巾で床を掃除し始めた。
「そして、残った私に彼らはこう言ったのです。
『お前の両親は魔法を使う悪魔だ。
生きて帰ることはない。
そして、お前は悪魔の子だ。お前は王宮に来い。可愛がってやろう』と」
「本当にミーシャさんのご両親は魔法を使えたんですか?」
「いいえ。
私は王宮に連れられて奴隷のように働かされましたが、王様に一度も愛想よく振舞ってないうちにこの店主のもとに払い下げられてきたのですが……
店主が私に教えてくれたことには、
『お前の親は王家のことを知りすぎたんだ、それで魔法を使う悪魔の嫌疑を無理やりなすりつけられて連れて行かれたのさ』
ということでした」
まあ、大体予想通りだ。
「そして、ある日、私は再び騎士に街の広場に連れて行かれました。
そこに行くと両親がいたのです。
両親はムチでうたれ、血だらけでした。
両親は、ずっと悪魔なのか?と尋問されても否定し続けていたのですが……
次第にその声も小さくなっていき……
血だらけになったところに更に傷ができ血が吹きでる……
そんな両親の姿を見ても非力な私は何もすることが出来ず、ただ泣き叫ぶしか出来ませんでした。
最後は火に炙られ両親は死にゆきました。
最後には涙も声も枯れて、ただ呆然としました」
ひどい話だ。血になれているってそういう悲惨な過去のせいなのか……
ますます、王家をしばかないといけないと思った。
「そんな体験をして感覚が麻痺してるのかもしれませんが……
店主は私には良くしてくれました。
同情してくれて私に手を出すことも無く……まあ後でどうにかするつもりだったかもしれませんがね?」
そう言ってミーシャさんは肩をすくめる。
「ただ、狡い人なのは間違いないです。
金に執着してますし、今回もお客さんからふんだくろうとしてましたもんね」
「確かに!!なんか言おうとしてくれてたのはこの事だったんですね」
「お気づきでしたか」
ふふっと笑みをこぼす。肉片散らばる床を掃除しながら……でなければ微笑ましい光景なのに……
にしてもミーシャさんは強いな……と改めて思う。
「これは私がしたことにしてください
1度捨てられたようなものなので私のことはどうなろうと気にしません。
お客さんはどこかに行ってください」
「僕がした事なのにそういう訳には……」
「少しは恩を感じてた店主を殺した騎士を殺してくださったことは感謝してるんです。私のせいにしてください」
自分のした事を人のせいにするのは好きでない。まして相手は薄幸の猫人の少女だ。
少し思案してこんな提案をした。
「私が買った家はミーシャさんがもともと住んでた家なんですよね?
うちに来ませんか?というか雇われてくれませんか!!」
「えっ?雇う?」
驚いたように目を見開くミーシャさん。
「あの家かなり広かったですし……勝手のわかる方がいると心強いです!!
それに、街から少し離れてますしこの事件も有耶無耶に出来るかもです
嫌なら無理にとは言いませんが……」
一日だけだけど彼女の働きぶりを見てると有能そうなのが伝わってきた。有能な人材は手元に欲しい。
「私でよければぜひ!!あ、でも一つだけ言っとかないといけないことが……」
なんだろ?
「私本当に魔法が使える……魔女なんです」
なんだそんなことか……
「そんなこと気にしなくていいですよ、僕も使えますから!!悪魔だとか思いはしませんよ……」
ミーシャさんの顔がぱあっと明るくなる。
「それじゃあ、早速あの家に行って色々話し合いましょうか」
「はい!!よろしくお願いします!!」
だけど、その前に……
「「書類ごとここを燃やしましょう」」
うん。彼女も同じ考えのようだ。
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