第38話 『接着剤』

 中学一年時。七月某日。


『かづきって、下の名前だと思ってた』

『ん……? 和樹とか一樹ってこと?』

『そうそう。みんな呼んでるからてっきり名前なんだと』

『残念ながら名字なんだ。両方名前みたいだから、小学校の頃は宝塚なんてあだ名をつけられた』

『ははっ、なんだそれ。……でも、実は裏で他の呼び名があったって知ったらどうする?』

『なんで君がそんなの知ってるんだよって思う』

『それは追々わかるよ。……香月はさ、俺たちの周りで、こう呼ばれてたんだ』

『もったいぶるなぁ』

『――接着剤』

『なんだそれは、たぶん僕のセリフだったみたいだ』


 二人が友人になる、少し前のこと。

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