第15話 夢物語
今まで貯めてきたお金の使い道が決まった。まずは奴隷を買う。そうだな、男女の子供を三百ばかし集めてもらうとしよう。いや、男を少し多めにしてもらおうか。
今時分であれば一人頭二十文かそこらで買えるだろう。御屋形様から貰った黄金は二十貫以上。えーと、一貫で千文だから……うん、余裕で買えるな。
それで精鋭部隊を育成しよう。日ノ本版のなんちゃってイェニチェリといったところだ。それから山羊を買う。そして飼う。山羊であれば山でも育てることができるし、乳も出る。
山羊は良い。なんでも食べてくれるから山である芦屋城には適しているだろう。あれ、そういえば日本に山羊は居るのだろうか。わざわざ朝鮮や明から輸入する財力はない。居なければ諦めよう。他の家畜といえば牛か。
やはり乳は栄養価が豊富だし、蘇にすれば高値で取引されるだろう。椎茸の栽培と蘇の生産を資金源としよう。それからやはり石鹸は必須だな。これも奴隷たちに作らせよう。
あるのとないのとで病気の蔓延率が変わってくる。この要因がもっとも大きい。もし、籠城なんかになった日には大いに活躍してくれるだろう。
最後に農業改革だ。これは来期以降にはなるが、塩水選と正条植えを導入させる。ああ、そのためには田植定規もつくらないと。これは手の空いてそうな三男坊以降につくらせようか。
それから家鴨を家禽として仕入れよう。合鴨農法だ。正条植えをして綺麗な水田であれば家鴨も活躍してくれるはずである。それに家鴨は卵も羽毛も余すことなく使える。悪くない。
本当は鶏を飼いたいのだが、鶏を神の使いだと信じてる者が多い。流石にそれを食せと言うのは罰当たりだと罵られようか。卵も食べてはいけないのだろうか。
あと、平地にある家は全て取り壊しだな。住居は全て山に建て直させる。平地は田畑、つまり作物の栽培に当てたいから。もちろん費用は俺持ちだ。これはいくら掛かるだろうか。
そして空いた土地に三男坊たちの畑をつくってやろう。そしてら積極的に働いてくれるはずだ。これで石高の増加が見込めるぞ。全てが成った暁には同じ二方郡でも四割、いや五割増しで生産できるだろう。と言うかして欲しい。それでも石高は一万二千石でしかないが。
やはり金だな。金が要る。これら全てが早急に叶うとは到底思えない。夢物語よ。むしろ出来ないことの方が多いだろう。すぐに動けるのは奴隷を買うことくらいだ。
奴隷を買うと言うことは彼らに食わせる米も買わねばならん。先行投資とは言え、このままでは金ばかりが減っていくぞ。
これは弥右衛門と四郎兵衛と相談しなければなるまいな。そんなことを考えながら弥右衛門を見送って、俺は城へ戻るため急な坂道を登り始めた。
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