第124話 強行突破

「今からこの道を24時間以内にクリアしてもらう」


俺もどきが手を向けると、俺の目の前に先が見えない幅が10mほど、高さが3m程のトンネルのような道?が現れた。


「クリアが早ければ早いほど、この前のようなボーナスが付くからな」


「分かった」


俺は道の前で身体を伸ばしたりしながら俺もどきの話を聞いていた。ボーナスがあるのなら、安全第一よりもスピード第一の方がいいだろう。


「それから、武器のカグロはいつでも念じれば現れるからな」


「了解」


試しに太刀を念じると、希望通りの太刀が現れた。それをカグロの時のように鎌に変更を念じると、鎌になった。また、消えろと念じると、手から鎌は消えた。

ちなみに、現れる武器の性能はカグロと同じらしいが、ステータス上昇効果は無いらしい。


「準備はいいか?」


「あ、ちょっと待って」


「……ああ」


身体的にはいつでもスタートできるぐらい万全な状態だが、少し待ってもらった。


『ナービ、作戦いいのある?』


『ええ。ありますよ』


俺はそれからナービの作戦を聞いた。そして、勝ちを確信した。


「準備いいぞ」


「そうか」


ナービの作戦を聞いて、頭の中で軽くシュミレーションした後、俺もどきに準備完了を伝えた。


「それじゃあ、スタート!」


「よっ!」


俺は始まった瞬間に道の1m程上空を飛んで進んだ。


「はあぁぁぁぁ!!?!」


後ろで何か叫んでいる声が聞こえてくるが、そんなのは知らない。

【敏捷】が1になってしまったので、普通に走ったらかなり時間がかかってしまう。しかし、神速飛行を使えば物凄い速度で移動できる。それは元々の【敏捷】で走るよりも速い。



『マスター、障害物です』


「了解」


数十秒飛行すると、目の前に壁が迫ってきた。その壁は道の左側のみ人一人がギリギリ通れるくらいの隙間が空いている。その隙間から奥を覗くとすぐ目の前に再び壁がある。これはジグザグに通らせて時間を消費させるつもりなのだろう。


「まあ、関係ないけど」


俺はその壁をすり抜けた。普段は持っている剣すらすり抜けてしまう透過はほとんど使わないが、剣を持っているわけでも無い今は透過が使い放題だ。



『マスター、子部屋が見えてきました』


「え?もう終わり?」


まだ1分程しか飛んでいないが、もう終わりなのだろうか?


「……よく来たな。小部屋では課題をクリアしてから通ってもら…」


「急いでるから早く課題を言えよ」


勿体ぶっているのか、ゆっくりと話ているので、急かした。これはスピード勝負なんだから少しは急いで欲しい。


「この筒をMPを使用せず破壊して…」


「あ、分かった」


俺は以前の試練で見たような六角柱のような形の筒に透過を解除して神速崩壊を使った。


「あ、道が出てきた」


5秒ほどで筒が崩れると、小部屋から新たな道が現れた。


「じゃあな」


「またな…」


そして、すぐに部屋から出て透過を使用してから飛んで行った。



「今回は障害物が無いみたいだけど…」


『これは凄い数の罠ですね』


飛んでいる俺に上から斧が振ってきたり、目の前から巨大な岩が転がってきたりしている。もし、地上を歩いていたらこれの何倍もの数の罠がやってきていたと思うと、かなりやばいよな。普通ならこれらを一つ一つ解除して進まなければならない。試練という名は伊達ではないな。



「それで次は?」


「今からする物理攻撃をそこから動かずに防いでもらう」


すぐ次の小部屋に到着した。下に現れた半径2mの円柱の上から出ずに物理攻撃をどうにかすればいいらしい。


「準備はいいか?」


「どうぞ」


俺がどうぞと答えると上からハンマーようなものが振り下ろされた。それを俺は透過ですり抜けた。ハンマーの後も巨大な剣などがやってきたが、全て透過ですり抜けた。

これで透過中に俺からの攻撃もすり抜けないのなら最強のスキルなんだけどな…。



「じゃあな」


「またな……」


そして、少しすり抜けていると、下の円柱が消えて、新たな道が現れた。俺は再び透過を使って飛んで行った。



「普通だったら漕ぐのかな?」


「泳ぐという選択肢もあるでしょう」


今度は下が水で満たされていた。もちろん俺は飛んでいるので関係ないが、普通だったら置いてあった一隻のボートに乗ってオールで漕いで進むか、泳ぐかしかないのだろう。



「次はあれをMPを使って破壊すればいいんだな?」


「…ああ」


次の部屋には最初の部屋のような円柱があった。多分、これらの小部屋はステータスの数値順に課題があるのだろう。つまり、今回は順番的に【魔攻】の試練だ。


「次元斬・改」


俺は念じて出した太刀から、次元斬・改を数回放った。これによって筒は何等分にもされた。魔力のゴリ押しで次元斬は空間ごと切断するので、【魔攻】の数値は関係ない。


「じゃあな」


「またな………」


現れた扉からまた道を進んで行った。



「これって落ちたらどうなるの?」


『前回の小部屋から再スタートです。そう看板に書いてありました』


「看板なんてあったのね」


俺は最高スピードで飛んでいたから知らなかった。

ちなみに、今回の道は空中だった。所々の1m程の雲が浮いているので、それらから飛び移りながら移動するのだろう。落ちても死なないというのは優しいだろう。



「はい、乗ったぞ。早く魔法」


そして、次の部屋には何かを言われる前に円柱の上に乗った。それで次々とやってくる様々な属性の魔法達を透過ですり抜けた。


「じゃあな」


「またな…………」


すぐに試練が終わったので、次の道に進んだ。



「うるさいな…」


『すぐに終わるでしょう』


次の道は最初の時と同じただの一本道のようだったが、天井が高く、上から雷がバンバン落ちてきた。もちろん、透過ですり抜けて全て無視して進んだ。


「次はこいつを捕まえてもらう」


「わぁーお…」


小部屋の中を凄い速さで跳ね回る物体を捕まえるのがこの小部屋の課題のようだ。龍眼によって眼にとらえることが出来るが、あのキングコボルトよりも速いだろう。



「時間停止」


俺は少し魔法を準備してからそう唱えて時間を止めた。


「転移」


俺の魔力の大部分を犠牲にしてやっと1秒ほど止めることができる。魔力がほぼ無くなるので、実践では使用できない。泣け無しの魔力を使った転移でその丸い物体の元まで転移した。

もちろん、別の方法でも捕まえることができただろうが、これが一番速く終わる。



「よし、捕まえた。じゃあな」


「またな……………」


捕まえると、次の道が開放されたので、最後であろう道を進んで行った。



「…最後の道がこれだったら心が折れそうになるだろうな」


『普通はそうかもしれませんね』


最後は全ての道を足したようなものだった。遠回りにさせる壁も罠も降り注ぐ雷も大量、更に落ちたら最初からの空のステージ。さらに、雲の半数程は水の塊となっている。浮いている水の球から水の球に飛び移らなければならない。もちろん、水の球を使わなくても行けるが、遠い雲まで跳ばなければならなくなる。

これってクリアさせる気があるのだろうか?



「最後は…何だこれ?」


最後は小部屋ではなく、大部屋だった。そして、部屋の床はもちろん、壁や天井に至るまで宝箱で埋め尽くされている。数で言うと軽く1000以上はあるだろう。


「最後は中身のある宝箱を選んでもらう。空の宝箱を3個開けたら中身はシャッフルされて最初からになる。ちなみに宝箱の破壊はできないからな」


「なるほどね…」


最後は【運】を見る課題のようだ。運が100だったなら1回でクリアできただろうな…。ただ運も今回1になっている。とはいえ、まだまだ時間は大量にあるから、運ゲーでやったとしても時間内には終わるだろう。ただ、ボーナスは少なくなってしまう。

さて、どうするか…。


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