第116話 発見
「いやー、楽だね」
「グオォォォ!!」
マドラがモンスターも障害物も全部薙ぎ払ってくれるから、ダンジョンを進むのがかなり楽になっている。まあ、俺が空を飛べばそんなのは全て無視できるのだが、ダークエルフを探すためにそれはできない。俺が空を飛びながら探すという選択肢もあるのだが、物陰に隠れたり、探知スキルを妨害するスキルを使われたりしたら面倒なので、普通に歩いて探す方が楽だ。
「あ、ボス部屋に付いたから、一旦影に入ってくれる?」
「ガッ!」
一応、ダークエルフを探すために90階層をぐるぐると周りながらボス部屋に向かっていた。しかし、ボス部屋にたどり着くまでにダークエルフは見つからなかった。
「ボスを倒したのかな?」
「それか、もう既に死んでいるかですね」
「そんな不謹慎なこと言ったらダメでしょ…」
そんなことをナービと話しながらボス部屋への扉を開いた。
「ステータスを見せますか?」
「いや、いいや」
「「ギチュギチュ!!!」」
ボス部屋に居たのは、一言にするなら巨大なムカデだ。一本一本の足が剣のようになっていたり、前と後ろの両方に頭がついているなど、レアボスらしいツッコミどころは多いけどな。
「よし!できた」
俺は適当にムカデの相手をしながら、空中に大きな魔法陣を作った。その魔法陣はカラフルな色をしている。
「龍星群!!」
俺はその魔法陣から、俺の中で最大威力の魔法である流星魔法での龍魔法を使ってみた。
「凄いですね」
「うん…凄いね」
ムカデが跡形もなく消え去ったのは当然として、地面もあちこち巨大な隕石が落ちたようなクレーターだらけになっている。
地面が元通りになってから宝箱が現れた。宝箱の中身はムカデみたいな気持ち悪い蛇腹剣だったので、カグロに食べさせて次の階層に向かった。
「荒野か」
91階層からは荒野になっていた。
「ダークエルフを探すのが簡単そうで良かったですね」
「そうだね」
障害物も何も無いので、人探しにはピッタリの場所だ。
「あ、マドラ出てこい」
「グオ!」
91階層に着いたのに、マドラを影から出すのを忘れていた。
「マドラ、またさっきのように人間のような姿の者が居ないか気を配りながらなら暴れていいぞ」
「ガアァァァ!!!」
俺のその言葉を聞いて、マドラは嬉しそうに飛び上がった。
「人が居たらちゃんと伝えにくるんだぞ!」
「グゥ!」
俺は飛んで行こうとしているマドラにそう大声でそう言った。エルフと人は違うかもしれないが、マドラにはその区別は付かないだろうし、人って言っていいだろう。
「これからの階層のどこかにマドラを置いて行きましょう」
「そうだね」
ここなら広いし、マドラも住みやすいだろう。例え、マドラが階層のモンスターを倒し過ぎたせいでユニークモンスターが現れたとしても、SSS+ランクのマドラには敵わないだろうからな。
「マドラ!影の中に戻って。次の階層に行くよ」
「グルゥ!」
階層を大体見終わったら、一旦マドラを影の中に戻して次の階層に向かう。次の階層に着いたら、再びマドラを解き放つ。
それを繰り返しながら下へ下へと進んでいった。
グルアッ!!!
「ん?」
「マドラの声ですね」
96階層で解き放ったマドラの大きな鳴き声が聞こえてきた。
「行きますか?」
「行かないとダメでしょ」
今までマドラが鳴くことは無かった。それなのに、鳴いたということは何かあったのだろう。それがダークエルフなのか、強いモンスターなのかは分からないが、行かなければならない。
「ナービ、場所わかる?」
「……大体の位置なら分かります」
さすがはナービだ。聞こえた鳴き声からマドラの居場所を割り出してくれた。
「転移」
ナービに転移位置の補助をしてもらいながら、転移を行った。
「ガァァァ!!!!」
「はあっ!!!」
「っ!?」
俺が転移した場所はダークエルフとマドラの攻撃が交わる寸前の場所だった。
一応、転移する前にマドラに近いだけで、どこに転移するかは分かりませんとは言われていた。しかし、こんな戦いの中間地に転移することないじゃないか!【運】100が機能してくれない…。
「龍気!」
俺は急いで龍気を発動して、ダークエルフのナイフとマドラの爪を双剣にしたカグロで受け止めた。時間が無かったから咄嗟に龍気を使ってしまったが、体が軋むように痛い。やはり、龍気は人型である俺にはきつい。
「ガアッ!?!!??」
「人間!?……では無いか」
俺が急に間に割って入ったので、2人は驚いていた。そして、地味にダークエルフに人外認定されたのは傷付いた。
「コラ!」
「ギャンッ!」
わたわた慌てているマドラの頭を殴り付けた。
「人が居たら伝えに来いって言っただろ!」
「キューー……」
マドラから「だって……」みたいな感情が伝わってきた。
「先に攻撃をしたのは私だ。だからそれについては私が悪いから、あまりその竜を責めないでやってくれ」
ダークエルフがマドラを庇うようにそう言ってきた。改めてこのダークエルフの女性を見てみると、服装はエルフの国に居たエルフと同じような軽装なだが、肌の色が黒色だ。さらに、少し他のエルフよりも耳が長いようにも見える。
「…そういうことなら分かりました。
でも、マドラも相手が攻撃して来ても、すぐにやり返さずに、言われたことを思い出して行動できるようにな」
「キュイ!」
マドラからも「わかりました!」というような感情が返ってきたから大丈夫だろう。
「初めまして。私は覇王の零と言います」
「初めまして。私はエルフ王国元第1王女である罪人のダークハイエルフです」
どうやらダークエルフではなく、ダークハイエルフだったようだ。ハイエルフからダークエルフになると、ダークハイエルフになるのか?
「俺はあなたのことをエルフの国の王に聞いて探していました」
「!?」
それを聞くと、ダークハイエルフは俺が現れた時よりも驚いた表情をした。
「…どうやってエルフ王国を見つけた?もし、エルフ達に何かしたって言うなら、刺し違えてでもお前を殺すぞ」
ダークハイエルフは強い殺気を出して、2本のナイフを構えながらそう言ってきた。
「誓って何もしていない。エルフの国にはエルフに案内されて行っただけだ」
俺はカグロを鞘に戻して、両手を上げながらそう言った。
「…どうやら嘘は言っていないようだな」
ダークハイエルフは嘘をついているか見極めるスキルでもあるのだろうか?
「それから、エルフの王からあなたに伝言を預かっている」
「………」
俺はダークハイエルフに王からの伝言を伝えていった。
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