第80話 勝負

「ぐぅっ!!」


一発目で拳をぶつけ合った時にわかったけどこいつの武聖のスキルは恐らく俺よりも高い。覇王に統合したせいで一個一個のスキルレベルが確認できないのが厄介だな。


「オラオラ!!その程度かァ!!」


「っ!!一旦離れろ!!」


最初に殴り合いになったが、それも一方的に殴られるのを何とかガードするだけになってしまった。そのため爆発魔法で無理やり吹き飛ばして距離を取らせた。


「1段階上げるゾ?」


そう言うとロウは紫色のオーラのようなものを纏い始めた。


「ああ、そうかい」


そう言って俺も覇気を纏った。


『マスター、覇気の色が…』


『ん?』


確認してみると俺の纏っているオーラの色が前に使った時は赤色だったのに今回は赤色に少し黒を足したような色になっていた。


『ご主人様!カグロとお揃い!!』


『そうだな』


ただ何となく前の赤よりも強い感じはしているのでまぁいいだろう。


「いくゾ!」


そうしてまたロウが突っ込んで来たので、ガントレットを今度は2本の棍棒にして迎え撃った。



「お前の反射神経どうなってんだよ!?」


今度は防戦一方ではなく拳を棍棒で防ぎながらも攻撃を時々出せるようになってはいた。


「お前の攻撃が遅いんだヨ!!」


しかし出した攻撃は足でガードされ更には足でも攻撃してくるようになりまた防戦一方に近くなってきていた。


「だから…離れろ!!」


今度は暴風魔法で岩にまで吹き飛ばして叩きつけようとした。


「オッラ!!」

ドゴンッ!!!


それをなんとロウはぶつかりそうだった岩を殴って粉々にしてぶつかるのを回避した。



「また1段階上げるゼ?」


「何段階あるんだよ!」


「あと2段階だゼ?着いてこれるカ?」


「俺もお前を置いて行かないか心配だぜ」


これは強がりではない。限界突破と極限突破の2つがまだあるのでその2つを使えば倒せると思う。しかしHPが減っていくので使いどころが重要だ。


「なら良かったゼ!!!」


そう言うとロウのオーラが何倍にも膨れ上がった。


『おそらく限界突破と極限突破の2つをお使いになられたと思います』


『マジかよ!!』


ということはそこから更に強くなれるということかよ…やばいな。


「っていってもやるしか選択肢ないよな!」


そう言って俺もロウと同じように限界突破と極限突破を使った。


「第3ラウンド行くゾ!!」


「来い!!」


向かってくるロウを見ながら2本の棍棒を2本の刀にした。このレベルの戦闘になると慣れ親しんだ刀や鎌じゃないと厳しい。ナービの言う通り他の武器ももっと使っておくべきだった…


「刃物だからって卑怯って言うなよ!!」


「そんなこと言うわけねぇヨ!!」


刀で斬りかかったが構わず拳を出てきたが最悪切断しても後で直せばいいと思いそのまま斬りつけた。


「フンッ!!!」


「ぶっ!!」


結果だけを先に言うと顔を思いっきり殴られた。そしてそのまま何十メートルも吹き飛ばされた。


『おいおい…あいつ……』


『はい。中指と薬指で挟みましたね…』


ロウは拳を握りながら少し中指と薬指の間隔を開けてその隙間で刀を挟み込んでそのまま殴ってきた。

刀は斬るための武器なのであまり力を入れすぎないようにするため、あのパワーファイターの相手には相性が悪いだろう。


「俺と闘うやつはいつも刀や剣を使いたがりやがるから必然と対応策が完璧なわけダ」


「ちっ!ああ!そうかい!なら見たことない武器で相手してやるよ!」


吹き飛ばされた俺にロウが追いついたので刀を今度は蛇腹剣にしてこちらから向かっていった。


「ふんッ!剣くらいどこでも見っ!!」


一見普通の剣に見えたが明らかに普通の剣の射程外で振って剣が伸びたのにはびっくりしていた。


「…傷が付いたのは久しぶりだな…面白イ!!」


避けきれずに頬に軽い切り傷ができた。そこから垂れた血を舐めとって向かってきた。




「くッ!!!」


「胴が空いたぞ!!」


「ぐハッ!!!」


蛇腹剣という見たことがない武器に翻弄され隙ができたところに拳や足で攻撃していくとだんだんと形勢が逆転してきていた。


「ちッ!!」


そして初めて獣王から距離を取ったので追撃をやめた。いつもの負けたら死んでしまうかもしれないモンスターとの戦闘ではどんなに相手が不利になって距離を取ろうとしても絶対に距離を取らせないが、今回はあくまで獣王に俺を認めさせるための闘いである。ここで攻めて勝ったとしても多分獣人からの協力は得られないだろう。


「魔法無効がある時点でお前にとって俺との相性は悪イ」


確かに相性は良くないだろう。なんてったってこちらは物理攻撃と魔法攻撃の両方のオールラウンダーだから片方封じられただけで結構きつい。


「だから本当はこの段階で終わらせるつもりだっタ。だから認めてやル。獣人はお前に協力をしてやるヨ」


良かった…何とか協力をしてもらえることにはなったようだ。


「だからここからは延長戦ダ。勝てるものなら勝ってみロ!!」


「もちろん勝つに決まってるだろ!!」


最初っからロウに勝つ気で闘っている。名付けをして負けたとなっては結構ダサい。


「俺が本気を出すのはこれが初めてダ!!」


マジ?通りで怠惰なんて似合わないスキルがロウに付くわけだ。今までだらけていても勝っちゃうのだろうからな……

そしてロウはそう言うと人の姿からだんだん変化していった。






「デハイクゾ…」

「テカゲンデキナイ」

「シヌナヨ?」


「はは……」



ロウはケルベロスに姿を変えた。

その姿を見て俺は乾いた笑いしか出てこなかった。

そしてロウは俺に向かってきた。



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