第68話 2人の時間
安心させるように頭を撫でていると落ち着いたのか震えるのが止まった。
そしてそのままくるりと回転してベットで座っている俺の胸に寄りかかるように座った。
「あ!そうだお兄!面白い話があるよ!!」
「ほう?本当に俺を楽しませてくれる話なのか?」
「任せてよ!」
妹の調子が戻ったみたいで良かった。やっぱり由紀は明るい方が合っている。
「世界ランキングってどんなランキングだと思う?」
「どんな?普通に人間のランキングじゃないのか?」
「それだと童貞卒業前に人間卒業したお兄は世界ランキングに入らないよね?」
「童貞卒業前は関係ないだろ!!」
「可哀想なお兄…私が貰ってあげようか?」
「兄妹でそういうのは俺達が良くても法律が許しません」
「いや?許してくれるよ?」
「はぁ?何を言ってるんだ?」
「だって私たちいとこだよ?」
「は??」
「あれ?やっぱり覚えてないの?」
それから詳しく話を聞くと由紀は母の妹の子供だった。母の妹は事故で夫婦ごと亡くなってしまってそこでうちの家族に引き取られた。
その時は俺が小学校1年生で由紀が幼稚園の年中だった。確かに言われて思い出した。当時は由紀は両親の影響で明るくなくて心配で学校が終わったら遊びにも行かずに急いで家に帰ってきていた。
「もう!忘れないでよ!」
「ごめんって!例え同じ親から生まれてなくても俺達は兄妹だからな!」
そう言って頭を撫でた。忘れていたが確かにいとこだった。突然由紀がやってきて父から「今日からこの子はお前の妹だ。お兄ちゃんのお前が守ってやれよ」と言われた覚えがある。
「気が向いたら言ってね。貰ってあげるよ?」
「余計なお世話だ!」
「いてっ!」
そう言って軽くチョップをした。
「痛い!DVだー!!許して欲しければ撫でなさい!」
「はいはい」
撫でられたいのなら素直に撫でてと言えばいいのに。
「で何の話?だったっけ?」
いとこが驚愕で前の話の内容が飛んでしまった。
「えっと…あっ!お兄が童貞卒業前に人間卒業した話!」
「違う!世界ランキングの話だろ!!」
人のことを童貞、童貞と言いやがって……お前だって経験ないだろ……
「私が処女だと思うの?」
「え?違うの?」
え!ちょっと待って…由紀が誰かとそういうことをしたのか?え?誰と……?
「まぁ処女だけどさ」
「そうなのかよ!!」
「私が処女じゃないとやだったの…?」
「い、いや!妹に先を越されるのは兄としてなんかそのあれだからな!」
「ふーん。まぁそう言うことにしてあげるっ!」
くっそ…由紀と話すといつもこう誘導されてしまう。今は神速多重思考があるからそんなことは無いと思っていたのに……ん?誘導?誘導…?
「あっ!由紀!お前誘導使ってただろ!!」
「あっバレた?モンスターにはステータス差がないと使えないけど知性ある人間に対しては相手が誘導されてる事に気が付くまでどんなにステータス差があっても使えるから便利だね!」
由に誘導のスキルはまさに鬼に金棒だろ…相性が良すぎる。
「まぁスキルの練習だと思って許してねっ!今日はもう使わないから!」
「今後も俺には使わないでくれよ…」
と、言ってもまた使うだろうな…そういう奴だもんな由紀は…
「あ!撫でる手止まってるよっ!それで世界ランキングの話なんだけどさ!」
そうそう!世界ランキングの話だ!あれ?なんで俺は素直に由紀の言う通り撫でてるんだ?誘導使った?
「もう人間では無いお兄に世界ランキングがあるって事は人間って条件じゃないよね?」
「確かに…なら地上で育ったってのが条件か?」
それなら魔族には当てはまらないし俺がまだ世界ランキングがあることにも繋がる。
「ハズレっ!正解は地上に少しでもいた事がある一定以上の知能を持った生物のランキングだよ」
なるほど…確かにそれでも全ての辻褄は合うことになる。あれ?なら……
「ある一定以上の知能ってどのくらいの知能だ?」
そう言うと由紀はその質問を待ってました!と言わんばかりに顔をして振り向いてきた。
「スキルを通してもいいけど会話ができるくらいの知能が必要。モンスターで言うとユニークモンスターの龍くらいの知能は必要ってこと」
そこまで言われるとさすがの俺でも由紀の言いたい事がわかる。なのでカグロとリュキのステータスを見てみた。
「2位と3位…」
リュキが世界ランキング2位でカグロが3位になっていた。カグロは自身のステータスは無いが、マッシュと戦うと予想すると変幻自在で簡単に倒せるだろう。
リュキとカグロが直接対決した時に、お互い決定打がなく決着が付かない。そのため、ステータスの実数値とスキルの多さからリュキが2位でカグロが3位なんだそうだ。これは由紀が検索で調べてくれたので、信憑性は高いだろう。
「そう!だからあいつは急に世界ランキング4位に転落!」
「今頃ダンジョンでステータスを睨みつけてるかもな!」
「そうだね!」
そう言って2人で笑いあった。
「世界中で2位と3位を探すだろうな」
「でもまず人じゃないから普通は絶対に見つからない!」
そう言って俺達は2人でニヤニヤし始めた。
「あっ!お兄!ダンジョンでどんなことがあったか教えて?」
「検索で知ってるんじゃないのか?」
「むぅ…私はお兄の口からも聞きたいのっ」
「じゃあ由紀が学校であったことも教えてくれるか?」
「もちろん!」
そこからは2人で色んなことを話した。やれあんなモンスターがいたとか、あいつがウザかったとか、こんな攻撃してくるやつがいたとか、告白された…とかずっと時間も忘れて話していた。
「そろそろ朝ご飯…あら…あらあら……」
「すぅ…すぅ……」
「すぅ……」
「2人仲良く寝ちゃってまぁ…」
結局体勢も変えず由紀が俺の胸に寄りかかる形で座りながら眠ってしまった。
「たまにの寝坊は許してあげましょう」
そう言って布団を2人にかけて部屋から出ていった。
2人は朝までずっと話していたので昼まで2人仲良く眠った。
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