第51話 別れ

「きて…起きて…起きて」


「んん……」


「そろそろ朝食だよ?」


「おはよう…」


「おはよう!!」


レイカの声でだんだんと目が覚めてきた。レイカの声がすぐ側で聞こえると思ったが、そういえば一緒に寝たのだった。それにしても少しひんやりしてる何かを抱いているようで気持ちがいい。


「んっ……」


少し抱くのを強くするとレイカが艶かしい声を出した。どうしたのか、と思ってようやく目を開けてみた。


「え??」


「おはよう♡」


なんと俺の腕の中にレイカがいた。それも体勢的に俺から抱きしめているようだ。


「え?えっと…えー……」


まだ頭が完全に働いていないのか対処法が全く思い浮かばない。


「あっ!大丈夫だよ?毎日抱きつかれてたから!」


「毎日?」


「毎日♡」


「でもいつもは扉をノックしてたから俺が起きた時には抱きついてなかったよ?」


俺とレイカのステータスは差があるので眠っているとはいえ抱きつかれていたら抜けるのは大変だろう。無理に抜けたらさすがに感知に反応しなくても目が覚めるだろう。


「透過を使ってすり抜けたの」


そうだった…俺も一応取得していた。だが透過は防具は大丈夫だが、武器はすり抜けてしまって持つことは出来ない。それに地面もすり抜けてしまうので透過は魔法特化かつ常に宙に浮いているレイカ専用のスキルと言ってもいいだろう。


「じゃあ…はいっ」


とりあえず抱きしめていた腕を離して抜け出せるようにした。


「??あっ!はいっ♡」


「ちょっ!!」


何を思ったのか今度はレイカから抱きついてきた。


「抱きついて欲しかったんじゃないの?」


「朝食だから抜け出せるようにと思って腕を離したの!」


「そうだったの!じゃあ行こっか!」


今までとキャラ違くない?と思いながらも朝食に行くのは賛成なので一緒に向かっていく。



「降りてくれない?」


「降りないよ?」


部屋を出てすぐにレイカをおんぶしている状態になっている。1度下ろしたが浮遊魔法と透過を駆使してもう一度同じ状態になった。


「次下ろしたら今度は前から抱きつくからね?」


そう脅されたせいで今度は無理に下ろすことができない。


「覇王様。おはようございます」


「あ、おはよう」


俺に絡んできた奴が通りかかると今までの態度が嘘みたいに挨拶をしてきた。ちなみに負かしてから毎日どこかに移動する度にすれ違って挨拶をしてくる。

1度どうしてそこまで変わったのかを聞いてみた。


「前と比べてだいぶ変わったけどどうしたの?」


「私は覇王様に敗れてから目が覚めました。力というものは威張ったりするものではなく、自分より弱いものを守るために使うべきだと気付いたのです」


どうやら余程頭の打ち所が悪かったようだ。俺はそんなことを伝えた覚えがない。

しかし、別に悪いことでは無いのでほっといておこうと思っている。




「覇王様!おはようなのじゃ!!」


「おはよう」


食堂に着くとレイカは背中から離れて席について透明化や隠密などを解除した。

そうしていつも通りの朝食が始まった。



「俺はあと3日くらいでダンジョン攻略に戻ろうと思う」


そう言った途端に賑わっていた食堂から音が消えた。そしてブラッドとレイカの目の光も消えてしまった。


「どうしてなのじゃ?」

「ど、どうして?」


2人揃って理由を聞いてきた。


「修行もだいぶいい感じにできたし、元々ダンジョン攻略でここに来たからそろそろダンジョン攻略に戻ろうと思って」


修行はほぼ終わったと言っていいほどできていた。

最初は連携も上手く取れず、個々にもそれぞれ弱点があったがそれらもほとんど無くなってきている。

それにそろそろダンジョン攻略をして地上に戻らないと家族や友人が心配でもあるし、心配しているだろう。


「じゃあ妾も連れて行くのじゃ」

「じゃ、じゃあ私も連れて行って…」


また2人揃ってそう言ってきた。


「それが無理なのは2人がよくわかっているよね?」


「「………」」


族長と長がここを離れたら他の魔族達が不安になると言うのをこの2人ならよくわかっているだろう。


「こ、攻略終わったら必ず1度ここに戻って来てね…」


「わかったよ」


「そ、それまでに私は付いて行けるようにしておくから……」


「妾もしておくのじゃ!!」


ほんとに付いてくる気なのなのだろうか?

だが付いて来てもブラッドは羽が生えているし、レイカは若干体が透けているので地上に出たら騒ぎになりそうだ。


〈なら人化のスキルを取得してもらいましょう。それならば地上でも大丈夫でしょう〉


ナービから良い提案があった。でもびっくりした。ナービは付いてくるのに反対だと思っていた。


〈人化のスキルは取得するのに少なくても半年はかかると思うので、ダンジョン攻略を終えるまでに覚えることは出来ないでしょう〉


どうやらナービはいつも通りだったようだ。


「なら人化のスキルを取得して、いなくなっても魔族が全く不安にならないようにしたら付いてきてもいいよ」


「わかったのじゃ!!」


「わ、わかった……」


こうしてブラッド達の修行が人化を覚える修行に変わった。他の皆も取得したいようだ。理由としてはもし俺が地上で困っていた時にすぐに手助けをできるようにしたいかららしい。ナービにやり方やコツを聞いてそれらを教えていった。





「じゃあ、行ってくるね」


「必ず戻ってくるのじゃぞ!!」


「い、行ってらっしゃい…」


長達が全員城からいなくなるのは問題だろうとブラッドとレイカがお見送りに来てくれた。

この3日間はとても大変だった。ブラッドやレイカだけでなく他の女性長達のあの手この手で迫ってこられた。絶対モクヨはからかってやっていると思う。迫ってくるのをナービが完璧に感知して絶対に躱させようとしていたので結局誰とも何もなかった……


「あ、ちょ、ちょっと待って…」


「ん??」


行こうと扉を開けようとしたがレイカに止められてしまった。


「ちょ、ちょっと目を閉じて…」


そう言われたので目を閉じた。


〈マスター…警戒を怠らないでくださいね…〉


〈そんな警戒することないと思うよ〉


そう言いながらも隠密と透明化のスキルを使ったので一応の警戒はしておいた。


「!?」


「汝は異性を抱きながら寝ないと安眠できない」


ナービの言う通り警戒していたのに一瞬感知できなくなってしまった。その時におでこをくっ付けて何かを唱えた。


〈何されたの!?〉


〈呪魔法…ですね〉


まだ俺は呪耐性を持っていないので低レベルの呪でも効いてしまうようだ。


「ふふ…今はレベルが足りなくて異性にしか限定できなかったけど、今度会った時はレイカだけに限定するからね♡それまでレイカのひんやり感を思い出して寂しく思いながら眠ってね」


耳元でレイカがそう話してまた元の位置に戻っていった。なんかとても大変なお土産を持たされてしまったようだ…


〈(今度は呪耐性を早く取得させないと……)〉


ナービのそんな声は聞こえず、ブラッドとレイカに手を振りながら90階層の攻略に向かって行った。





【名前】  斉藤 零

【種族】  覇王 

【年齢】  19   

【レベル】 1   ★

【ランキング】 1位


【HP】   24120/24120

【MP】   19000/19000


【攻撃】  2480+140   

【防御】  2044+100   

【魔攻】  2480+140   

【魔防】  2044+100   

【敏捷】  2698+40   

【運】   100       


【スキル】

・手加減Lv.MAX・指導Lv.MAX・騎乗Lv.3

・吸血Lv.8・超音波Lv.9・罠解除Lv.8

・偽装Lv.MAX・変装Lv.4・連携Lv.MAX

・指揮Lv.3・水中高速移動Lv.9・水中呼吸Lv.MAX

・無呼吸Lv.MAX


【ユニークスキル】

・【ステータス】極大強化・ナビゲーション

・絶対感知Lv.3・高速崩壊Lv.3

・神速多重思考Lv.3・全大耐性Lv.4

・超高速再生Lv.3・疾風迅雷Lv.4

・竜魔法Lv.7・修復Lv.6・神速飛行Lv.4・性聖Lv.3

・部分魔族化Lv.3 ・透明化Lv.3・透過Lv.3

・光合成Lv.3・硬翼Lv.3・不死鳥Lv.3

・空中水泳Lv.4


【エクストラスキル】

・覇王Lv.7・魔眼Lv.4・武眼Lv.4・強欲Lv.5


【称号】

・先駆者

・挑戦者

・一騎当千

・耐え忍ぶ者

・名付け親

・強欲

・新種

・種族の王

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