第238話 孤独と悲劇の物語

ルイス達は、宿にて大地の母精霊から話を聞いていた。それは、孤独な精霊の物語…。


それは、もともと力のない妖精だった。


しかし、ミリカに拾われ魔界と呼ばれる場所で、そこに生息する毒花の精霊になった。


ミリカと共に、旅をしていたが…。


毒のせいで、精霊を殺したショックで鉱山に引き篭もった。ミリカは、会いに来てくれていたが。暫くして、来なくなってしまった…。


寂しかった…、温もりが欲しかった……。


そんな時、林檎が1つ転がって来た。お腹空いた、妖華の精霊はその林檎を齧ってしまった。


体には、激痛が走り妖華の精霊は吐き出そうとしたが。激痛のせいで、上手く吐き出せずしだいに体のコントロールが奪われてしまった。


妖華の精霊は、焦り母精霊に助けを求めた。


しかし、母精霊が駆けつけた時には、言葉を理解出来ず知能の低下した化け物と成り果てていた。


しかし、母精霊は確かに聞いたのだ…。


だから、何とかしようと頑張った。愛しい大地の子が、泣き叫び助けを求めている。それだけで、彼女には負けられない理由となったのだった。


しかし、毒によって弱ってしまう。


そして、それを見た精霊王に石に封印されたのだ。精霊王は、妖華の精霊を見捨てたのである。


でもそれは、仕方のない選択だった。


何故なら、マザーと呼ばれる母精霊は属性ごとに一体しか居ないからだ。精霊王族を除けば、次に力のある精霊なのだから死なせる訳にはいかなかった。


精霊王は、静かにずっと解放者を待っていた。


これは、三柱の罪…。


ゲレティーは、悲しげにルイス達を見ていた。ついに、来てしまったのかと。隣には、精霊王と龍王も座っている。ルイス達が、住民を庇って死ぬ度にゲレティーは悲しむ。精霊王も、真剣に戦闘を見つめて涙を流す。龍王は、沈黙して見守っている。


ここからは、少しだけ過去の話をしよう。


精霊王にとっても、妖華の精霊は愛しい我が子だ。だが、立場的に助けに行けなかった。言葉にならない悔しさと、息が詰まるような悲しさに精霊王はゲレティーに助けを求めたのだった…。


ゲレティーは、その林檎の正体を知っていた。


神聖者が、殺し損ね逆に殺された******である。ゲレティーは、精霊王に話を始めた。


これは、ゲレティーが信者を余り持たない理由だ。


プレイヤー達が、この世界を去りし時に世界の崩壊が始まり魔界と呼ばれる領域が出来た。


そこから、未知の魔物が現れて数々の英雄が散っていった。キリアの父親も、散っていった英雄の1人だと伝えておこう。危険を感じ取ったゲレティー達3人は、問題を解決すべく自分達の加護を手厚く受けた大切な信者を送り出した。


ゲレティーからは、神聖者。

精霊王からは、精霊王子と姫。

龍王からは、龍姫と精鋭部隊。


しかし、誰1人戻って来る事はなかった。


ゲレティーが、神聖者に呼ばれた時には既に…神聖者達は死んでしまっていた。無残な姿で…。


世界の柱たる彼らは、弱った******を封印したのだが…それは、賢かった。バレない程度の化身を作り、それを逃げた神聖者の荷物に紛れさせたのである。そう、逃げたミリカの荷物の中にだ。


しかし、彼女も死にかけだった。


死を悟った彼女は、体を引き摺りながら妖華の精霊に会いに行った。しかし、途中で力尽きた。


林檎に化けた、******は転がって妖華の精霊の元に辿り着くのだった。


後は、知っての通り妖華の精霊の体を奪った。


それ以来、ゲレティー達は動けなくなってしまったのだ。それは、邪神よりも太刀が悪く…世界の根源の1つで神をも殺せる凶悪な存在だからだ。しかもだ、******は他にも化身を放っていた。


ゲレティー達は、戻って来たプレイヤーにこの世界の未来を託す事にした。身勝手だが、自分達ではどうにも出来ないのだ。お願いするしかなかった。


龍王は、姫を助けに行き傷つき長い眠りに着いていた。起きてからも、巣穴から出て来る事はない。


精霊王も、精霊の国に引き篭もった。


ゲレティーも、あの日の出来事までは姿を現さなかったのだ。ずっと、部下に任せていた。


あの日、カリオストロの弟子に会うまでは。


ゲレティーは、ルイスの祈りに答えた。今ならば、引き剥がす事も可能なはずだ。そして、ルイスがトドメを刺した瞬間にゲレティーは嬉しさに微笑んだのだ。三柱は、プレイヤー達に希望を感じ取った。


精霊王は、リケに指示を出した。


龍王は、目を閉じて立ち上がるとその場を去った。

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