第44話 会議と同盟戦

さて、会議が始まりました。


ちなみに、普通のクラン戦や同盟戦ならば運営も介入してきません。万が一の、対策としての運営介入ですからね。異常がなければ、動きません。ランクとか、戦力そして戦況が同じくらいならば。


ですが、今回は戦力差が圧倒的だった。そして、僕達の殆んどが生産クランである事。それと、運営側から見て理不尽な戦況を見過ごせなかったから。この3つが、大きな理由ですかね。あ、忘れてましたね。もう1つ、劣化蘇生薬の作り方を難しくし過ぎた事は許せてもです。一部の作れる人に、迷惑がかかる前に対応を出来なかったからでしょう。


本当に、ランク戦が決まってから対応するなんて。


本音を言えば、予想が出来たはずなのに遅い!って叫びたいです。本当に、運営さんしっかりお願いしますよ。本当に、大変だったんですから。


と言うか、お店に居る時に修正が入ったので思わず『今更ですか?』と呟いてしまいました。


マッキーさんは、修正報告を見て苦笑。トキヤさんも、同じく見てから『遅いだろ。』と呟く。グレンは、ケーキを運びながらも『だよな。』と頷く。


いけません、会議に集中しなければ……。


さて、進行は運営がするので考えますか。


「さて、まずは提案を出してください。」


すると、クロイツが言う。


「この試合、同盟のランク戦ではなくクランのランク戦にしないか?その方が、そっちの被害を最小限に出来るし。何より、いろいろ痛くないだろ。」


すると、運営は考える仕草をしてルイスを見る。


「うーん、私もそうすべきだと思いますが。」


「その提案は、良いと思います。まぁ、受けるか受けないかは別ですけどね。ですが、言い方が気にくわないです。何故、僕達が負ける前提で話しているんでしょうか?まだ、試合も始まっていないのに。運営さんも、負ける前提の会話ですし。何故?」


すると、運営さんは慌てたように言う。


「それは……、もう勝敗が決まったようなものですよね?だから、被害を押さえれられるなら………」


「仲介者である、運営が片方の肩を持っている。そう、認識しても?そもそも、相手が全員参加する前提で話していること事態がおかしいのですが。」


ルイスは、冷静に言えば運営さんは驚く。


「た、確かに……。その、申し訳ありません!」


「それに、もしガウェイン同盟が全員参加じゃなかった場合。クラン戦の方が、僕達にとって圧倒的に不利になります。それは、どう考えているのでしょうか?僕は、参加メンバーの提示を要求します。」


すると、クロイツが苦々しい表情をする。勿論、ルイスは暢気に笑って待っている。暫しの、沈黙。


「それは、ルイスさんも提示するんですか?」


運営さんが、沈黙に堪えられなくなったのか言う。


「勿論。言い出しっぺは、僕ですから当たり前ですよ。ただ、クロイツさんが呑めれますかね?」


ルイスは、さっきの仕返しとばかりに笑顔で言う。


「むぅ………、呑めない。それでは、ジョブがバレるし不利になるだろ。ルイス達は、かなり知られているけど俺達はそうでは無いんだぞ?」


「ほう……。」


ルイスは、ニヤリと笑う。


「べつに僕は、職業を明かせとは言ってないですよね?単純な話、人数と参加クランだけ教えてくださいと言っただけで。それに、仮に今から調べたとしても当日まで2日。とても、間に合いませんよ。」


クロイツは、観念したのかギブアップのジェスチャーをしている。そして、ルイスを見て苦笑する。


「分かった、降参だ。」


そう言うと、リストを出す。ルイスも、リストを出して交換する。そして、ルイスは嬉しそうだ。


やりました!参加クラン5、人数997人です。


うちが、975人なのでこのまま続行ですね。


「人数的には、変わりありませんし良いのでは?」


ルイスは、暢気に言う。


「確かに。」


「それなら、提案がある。いや、提案というよりはお願い……だな。大きく、3つ程あるんだが…。」


ルイスは、腕を組んでから椅子に深く座り直す。


「まずは、聞いてから判断します。」


「1つ目、脳筋戦にしてくれないか?」


※脳筋戦……ここでは、参謀による作戦なしの戦闘。


すると、ルイスは驚いてから笑う。


「却下。それだと、面白く無いですしね。」


「それに、ルイスさんが不利になりますが。」


運営も、これには黙っておれず言う。


「………そうか。」


「「そうです。」」


運営さんと、ルイスが真剣に頷く。


「2つ目、降参するからクラン戦を無かった事に出来ないか?真面目に、敵対したくないのだが。」


すると、ルイスは少しだけ意地悪な口調で言う。


「クロイツさんが、居ないとはいえ………あれだけ、僕達を見くびっといてですか?舐めプの状態で、3日も待機していた事。掲示板で、クロイツさんのメンバーが僕の事を馬鹿にしていた事とか。他にも、いろいろと有るのですが………聞きたいですか?」


「………本当に、申し訳ない!あんの、馬鹿ども!」


クロイツは、思わず絶叫しながら言う。


「それで、3つ目は?」


「例え、勝っても負けても互いに報酬を受け取らない。まぁ、上2つを断られるのは予想内だ。だがしかし、これだけでも呑んでくれないだろうか?」


ルイスは、考える仕草をする。運営さんも、少し遅れて慌てて言う。その声には、戸惑いが含まれる。


「ふむ………」


「え、それは反対です。一方的に、喧嘩を売られたのに報酬なしは周りが納得しないと思います。」


ルイスは、暢気に笑ってから言う。


「確かに。ですが、ここでクロイツさん達から報酬を取れば、間違いなく1つの同盟が消えますよ?」


「へ?」


運営さんは、キョトンとしている。


「別に、僕達はクロイツさん達の同盟を潰そうなんて考えていません。ただお仲間が、色々とやらかしているので此処でけじめを付けた方が、後先の対応が楽になるかなって思っただけです。このまま、仲間を放置すれば僕達よりも格上に喧嘩を売りかねない。そうなった時では、もう全てが遅いんですよ。それに、プレイヤーの繋がりが優しいものだけとは限らない。それは、十分に理解してますよね?」


「ああ。」


クロイツは、ルイスの言わんとしている事が理解できた。ルイスは、自分の名誉を踏みにじられても、クロイツの事を思って動いてくれているのだと。


「さて、3つ目の案件は呑みます。では、2日後に会いましょう。他に、話す事は無いですよね?」


クロイツは、無言で頷くと運営の人は宣言する。


「…………では、これで話し合いを終わります。」


ルイス達は、その場で解散した。




同盟のクラン戦は、ゲーム内の運営動画部によって生中継されます。リアルタイムライブで、ゲーム内外でも見れるのです。勿論、その分…視聴者数も多い訳で…マッチングがマッチングだけに、生中継側が落ちてしまいそうになるくらいの視聴者数に。


僕達は、相手がホームに何人を置いて来たか。グレンに調べて貰い、変わらない人間をホームに残して来た。そして、ルイスとクロイツは向き合う。


「お前、何を考えてる。俺達と同じ人数を、待機させるだなんて。此処で勝っても、絶対にホームは潰されるぞ?もっと、増やすべきじゃないのか?」


すると、ルイスは落ち着いた雰囲気で笑う。


「プレイヤーの人数は、把握済みなんですか。それに、アドバイスするなんて余裕があるんですね。」


実は、クロイツ達はお店の隣。結界に、囲まれた場所の所有者がルイスだとは知らない。ルイスが、周りに口止めしたのもある。そして、この戦いに置いてマップにはプレイヤーしか表示されない。


そう、プレイヤーしか表示されないのだ。


つまり、NPCと使い魔そして……


ゴーレムなどの、錬金生物もそれが該当する。


相手に、NPCが居るはずなのに表示されない。しかし、自分のマップにはNPC達の表示がされている。


そこで、キリアさんに隠密してもらい相手のマップを覗いて貰って来た。自分達のメンバーに、マップを開かないように注意する事も忘れない。


これは、後から修正されそうですね。


つまり、今度からNPCや使い魔。そして、錬金生物が色別に表示されるようになるとルイスは予想。


ルイスは、内心苦笑しながら自分の考えた作戦を思い返す。勿論、表情には出さずノホホーン笑う。


「いや、余裕なんてない。ただ、少し……」


「クロイツさん、現状ですが僕は敵です。要らぬお節介をして、結局は自滅するなんて笑い話にもなりません。現状で、貴方の最善を考えてください。」


ルイスは、同盟のリーダーとして、クロイツにピシャリと言い切る。勿論、堂々とした雰囲気で。


「それ言うなら、ルイスだって激励してるだろ?」


少しだけ、クロイツはムスッとして言う。


「激励?違います、流れで此方の作戦を読まれないよう、会話を封じただけです。貴方が考えているほど、僕は見た目も中身も生易しくて可愛くはないですよ?少しは覚悟しておいてくださいね。」


ルイスは、少しだけはっちゃけた雰囲気で言う。


背中に、冷たいものを感じて思わず後退る。それを見て、マッキーやトキヤは乾いた笑い。


グレンは、そんな2人を見て首を傾げる。


「お前な、何するつもりだ?」


「クロイツさん、何故に僕がクロイツさんの3つ目の案件を呑んだか分かりますか?」


ルイスは、暢気にクロイツに問いかける。


「?」


クロイツは、首を傾げる。


「これから、貴方のホームが受けるダメージが酷い事になるからですよ。と言う訳で、やりますか。」


ルイスは、信号銃を撃つと青い煙がたつ。


「クロイツさん!大変だ、ホームにゴーレムが!」


クロイツは、驚く。


「君達が、舐めプしている間に仕組みました。」


ルイスが、さらっと言えば青ざめるクロイツ。


「だが、おかしいだろ!信号銃で、動く訳が!」


「僕は、ゴーレム達にリルが3回吠えたら動くように指示しました。信号銃の信号を、リルが聞いて見えたら3回吠える指示も忘れずにして。」


そこで、クロイツは仕組みを理解して呻く。


「仲間に、探させたのに……」


「舐めプ初日、敵陣視察と地形把握は終わらせていましたからね。バレても大丈夫なように、ダミーゴーレムを置いたりダミー罠を置いたり。」


ルイスは、銃をホルスターに入れて笑う。


「いくら何でも、やり過ぎだ!卑怯だ!」


敵のメンバーが、怒りを込めて言う。


「怒りたいのは、僕の方なのですが?」


とても、怒ってるとは思えないはっちゃけた雰囲気のルイス。しかし、βのフレンドは知っている。


ルイスが、はっちゃるのは現実逃避の時そして……


激怒する心を押さえ込む為だ。


稀にしか、お目にかかれない激怒状態のルイス。しかも、激怒状態であるものの冷静。この状況が、クロイツにとってどんな地獄な状況なのか。クロイツの表情を、思わず見れば誰でも分かった。


「ルイス、仲間が何かしたのか?」


「可愛い、初心者メンバーを集団でPKした。」


トキヤは、ルイスの代わりに答える。


「……っ!?」


クロイツは、それを聞いて覚悟を決めた。


もともと、この集まりは脳筋で荒っぽい者達の集団だ。しかし、ルイスの逆鱗に触れてしまった。しかも、圧倒的にこちら側が悪い。


「俺、クロイツはこの戦いに敗北したら。クランを解散し2度とクランを作らないと誓う。」


すると、仲間達が騒ぎ出す。


「リーダー、ホームが落ちました。」


「そうか……。breeze奇襲班は?」


すると、俯いてから青年は力なく言う。


「信号銃の煙を見た、ルイスさんの使い魔が3回吠えて、隣の結界の中からゴーレムがゾロゾロと。」


地図に、のってないから知らなかった。


「さて、僕達も遊びましょうか。」


ルイスが、短刀を抜けばその後にマッキーとトキヤとグレンが武器を抜く。その後に、残りの全員が武器を構える。全員から、怒りを感じる。


「降参だ。ホームが、落ちたんだ降参だ。」


「いいえ、ホームは無傷です。プレイヤーは、全滅ですけど。ゴーレム達は、アビスの指示に従ってますからね。だから、落ちてはいませんよ?」


すると、その場の全員が驚く。


「だって、あのホームってミラさんが作ったんですよね。壊したの、僕だってバレたらゲームに戻って来て、絞められる気がしてならんのですよ。」


ルイスが、とても真顔で言えば笑い出すマッキーとトキヤ。クロイツは、思わず感謝してしまう。


「あー、あり得るな。エビ反りの刑とか言って。」


「懐かしいな、久しぶりにあれが見れるなら。ちょっと、壊しても良いかも。壁に、穴を空けるぐらいなら殺されはしないだろうし。」


「お2人とも、何言ってるんですかっ!?」


ルイスは、振り向くと抗議する。


そして、総力戦をする事になる。ちなみに、クロイツはキリアさんに暗殺させました。運営から、ゴーレム達を使うのを禁止されたが余裕で勝つ結果に。


「ルイス、悪いね。」


ミラが、現れて謝罪する。ルイスの怒りを、感じて素直に謝る事にしたのだ。ルイス達も含め、全員が驚く事になる。ミラは、苦笑して生中継の画面を見せる。ルイス達は、納得して頷く。


「幸い、近くにベテランプレイヤーが居たので。そこまで、トラウマにはなってはいないようです。」


ルイスは、その言葉とは裏腹に表情は怖い。


「初心者へのPKは、禁止して欲しいよな。」


グレンが、苦々しく呟けば真剣に頷くルイス。


「さて、皆さん帰りましょうか。」


全員が、頷くと撤退した。




ルイスは、約束通り報酬を奪う事なく、何事も無かったかのようにホームへ撤退していった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る