第42話 動くルイス
さて、まずは一番厄介な教会からです。ランコルさん、顔が険しいですね。まぁ、元教皇ですしね…。何かしら、思う事もあるのでしょう。
「ルイス様、私には二人の息子が居ます。」
「それで?」
目の前には、槍を構えた30代の男が居る。
「あれは、長男のルルガスです。」
なるほど………。ランコルさんの、キャラクエストが発動すると。まぁ、想定内なので進みます。
「待て!ここに、何しに来た!」
「教皇に、会いに来ました。」
すると、ルルガスは槍をルイスに向ける。
「会われる訳、無いだろう!」
「ちょっと、眠っててください。」
ルイスは、ルルガスの横を通り過ぎる時に息を止めて試験管の蓋を開ける。すると、ルルガスは驚いた表情をして倒れる。ランコルさんは、受け止めて脇に寄せるとルイスを追いかける。ルイスは、試験管に蓋をしてから小さなため息を吐き出して進む。
「お邪魔します。教皇、初めましてですね。」
「何者だ!」
ルイスは、現教皇を見てから称号スキル傾国を発動させる。そして、満面の笑みを浮かべる。教皇に、ハートのエフェクトが出たのでかかりましたね。
ちなみに、ランコルさんは驚いています。
ですよね。教皇は、異常に対するかなりの耐性を持っているはず。なのに、この教皇はあっさり傾国の魅了に落ちました。ちなみに、ランコルさんが傾国に落ちてないのは、元教皇でいまだに耐性が強いからです。さて、聖女様が現教皇を冷たい視線で見ています。これは、してやったりです。
傾国を、消してから聖女様に言う。
「聖女様、偽物には用がないのですが?」
「…………そうですね。だとすれば、本物はランコル様なのでしょうね。本当に、申し訳ありませんでした。お詫びに、私達に出来る事はありませんか?その、奥様は亡くなられ息子さんお二人は、教会に勤めています。ぜひ、会いに行ってください。」
ルイスは、ランコルを見てから言う。
「だって、何かあるの?あ、あの件は僕が自分で解決するから。ランコルさんは、自由にして。」
「しかし、私が頼んだ方がよろしいのでは?」
すると、ルイスは優しい笑みで言う。
「ランコルさん、実は僕……これでも、聖王なんだよね。つまり、僕の言葉は教皇と同等かそれ以上。」
すると、その場の全員が驚く。
「なるほど、では遠慮なく。息子達の、強制労働の解除。それと、私の無実を広めてください。」
「それは、勿論します。それ以外です。」
ランコルさんは、困った表情をする。
「私は、何も無いのですが。困りました……。」
「時間はあるし、考えたら?」
ルイスは、そう言って笑う。ふと、壁にかかれた旗の絵が気になり近づく。そして、ルイスがその壁に触れると天使が現れる。そして、ルイスを襲う。
ルイスは、一瞬でヤバいと判断し、素早く回避すると上から旗が落ちてくる。ルイスは、右手で旗を掴むと旗にはゲレティーの神聖紋の刺繍が現れる。
すると、天使は驚いて壁に戻ってしまった。
「はぁ……、びっくりしました。」
「ルイス様……。本当に、聖王だったのですね。」
ランコルは、驚いている。周りも、固まっている。
「え?」
「それは、七王武器の1つ。太古より、教会に封印されていた聖王武器……神託の御旗です。」
ピコーン♪
聖王が、七王武器を手に入れたので、武器情報が公開されました。聖王には、ボーナスを送ります。
《剣王》希望の剣(剣)
《魔術王》祝福の杖(杖)
《聖王》神託の御旗(旗)
《拳王》正義の籠手(籠手)
《盾王》慈悲の盾(盾)
《暗殺王》断罪のナイフ(短剣)
《錬金王》革命の書(本)
やってしまった……。どうせなら、錬金王の方が使いやすいのに。どうして、聖王の方なんですかぁー!いやまあ、ありがたいのですが。ありがたいのですがぁー!これは、最終手段として封印です。
「皆さん、これは極秘ですからね。」
すると、全員が姿勢をピシャッとさせて頷く。ため息を吐き出して、旗を収納すると聖女様を見る。
「さて、本題です。教会は、個人的な戦いへの参加は禁止されてますよね?例えば、クラン戦や決闘です。ですが、いつその教えが消えたんですか?」
「消えてません。ですが、教皇がお金の為に権力で新人や若い神官を参戦させていたのは……。ですが、私は教皇より上の権限はありません。」
なるほど……。まったく、面倒な設定ですね。
「なら、聖女カミアを教皇に推薦します。」
すると、カミアが驚く。
ピロリン♪
称号スキル【審判者】・【神託者】を獲得。
神称号【神の代行者】※条件発動を獲得。
カミアが、教皇になりました。
嘘ぉ~ん!冗談で言ったのに、ゲレティー様は許可するんですね。まぁ、大丈夫なはずです。
「教皇として、個人的な戦いへの参加は禁止し致します。それと、神の代行者様に最大の感謝を!」
ランコル以外が、真剣な表情で深く頭を下げて感謝を示す。よし、これで教会は大丈夫ですね。
「ランコルさん、お願い事は個人で行ってくださいね。今日は、忙しいのでごめんなさい。」
「お気になさらず。」
次は、神殿ですか。面倒ですが、急がなければ。
「ランコルさん、要件は終わりました。」
「はい。」
さーて、神殿です。あ、ゲレティー様にお世話になったので、お供え物してから入りましょう。
よし、神殿に入り偉い人を呼びます。
「神殿は、派遣しているのですか?」
「いいえ、我らは神に仕える身です。なので、怪我人を治癒する事はあれど、私情の争いには関与しません。もしや、誰か関与したのですか?」
ルイスは、無言で頷けば青ざめる大祭司様。
「そう……ですか。分かりました、我らも動くべきですね。では、早速ですが行動で示しましょう。」
これで、大丈夫かな?
「ありがとうございます。」
「汝に、神の御加護があらん事を。」
そう言えば、神の御加護もってませんね。
まぁ、特に必要ではありませんが。この世界には、7神の柱神いがいに神様は居ます。例えば、工芸神エスーとか商業神ルゴスですね。僕に関係する神様は、どちらかと言うとそっちの生産神なのですが。
後で、教会と神殿に行ってみましょうか?
ピロリン♪
【主神ゲレティーの恩寵】
待て!待て!待て!いきなり、ぶっ飛ばして来ましたね!やめて?本当に、やめて?
加護や愛護を、ぶっ飛ばして恩寵っ!?
あの、ゲレティー様?ちょっと、過保護になってません?僕は、大丈夫なのでやめましょうか?
て言うか、今からでも良いですから取り下げて?
あー、無理っぽいですね。えっと、急にどうしたんでしょう?まさか、他の神様に祈っては駄目とか?
ですが、そんな事は聞いた事ないですし……。
「ルイス様、大丈夫ですか?」
「うん、考えるのを放棄しましょう。」
さて、ホームに戻りますか。同盟のメンバーも、揃ったとチャットが入ってましたし。
さて、帰って来ました。ちなみに、お店はクラン戦が終わるまで閉店します。お客様に、迷惑を掛けない為ですね。どうやら、アトリエの会議室に集まっているようなのでノックをします。
すると、トキヤさんの声がしてドアが開く。
「すみません、遅くなりました。」
「よっ、お疲れ様。それで、話し合いだけど。」
ルイスは、椅子に座る。すると、キリアさんが紅茶を置いてくれる。全員が、ルイスを見ている。
「そもそも、これってクロイツさんの作戦なんですかね?余りにも、酷いと思うのですが。」
すると、マッキーは暢気な雰囲気で言う。
「あ、やっぱりだよな。しかも、ルイスがこんだけ動いているのに無反応なのも気になるし。」
「うーん、油断を誘うつもりか?」
トキヤも、苦笑しながらあり得ないと思う。ルイスは、グレンから渡された紙に目を通す。
「完全に、※舐めプですよね?」
※舐めプ……舐めプレイの事。対戦相手にも、分かるくらい手を抜いたプレイをすること。
「「「うん、完全に舐めプだよな………。」」」
トキヤとマッキー、そしてグレンも思わず頷く。
もしかしたら、クロイツさんは不在なのでは?いいえ、油断しては足元をすくわれます。それに、クロイツさんが途中参加する可能性も否定出来ません。
「ふーむ、どうしましょうかね。」
「別に、お前がしたいようにすれば?」
マッキーは、クッキーを食べてから言う。
「そうですね。まぁ、舐めプも当たり前ですか。総力戦に持ち込めば、僕達には勝ち目がないのですから。まぁ、総力戦に持ち込めたら……ですが。」
まぁ、最大規模の同盟とはいえプレイヤーはそこまで強くありません。ぶっちゃけ、クロイツさんが居ないなら潰すのは簡単です。まだ、試合が始まっていないので何も出来ませんがね。
それに、蘇生薬が欲しいのはβプレイヤーやベテラン達もです。ですが、我慢して僕との友好を取っている状況。ここで、僕達と敵対したんです。
おそらく、敵の同盟全員参加は不可能でしょう。
参加した、リスクが大きすぎます。それに、敵を増やしたくは無いはず。クロイツさん、知ったら泣きそうですね。しかも、僕が既に動いているとなればクロイツさんも下手には動けないはずですし。
「さてさて、僕の釣竿に引っ掛かりますかね?」
「釣竿?」
ルイスが、含みを込めたように笑えばグレンはキョトンとする。ルイスは、真剣に考えるように椅子に背中を預ける。そして、紅茶を飲んで紙を見る。
「あー、寒気がヤバい。」
「ルイス、何を考えた………。」
マッキーとトキヤは、苦笑してルイスを見る。
「ん?」
「ん?じゃねーよ……。」
マッキーは、苦笑してルイスを見る。
「クロイツさん、僕の罠を回避出来るかなぁ~と思っただけですけど。まぁ、クロイツさんは頭は良いのですが。少しだけ、堅い所がありますからね。」
ルイスは、珍しく心底から楽しそうに呟く。堂々としていて、真剣な雰囲気なのに何処か楽しそうだ。
グレンは、そんなルイスを見てから微笑む。
今のルイスは、ポーションを作る時並みに楽しそうな雰囲気。マッキーも、口では『寒気が』とか言いながらもワクワクした雰囲気は隠せていない。トキヤも、ニヤニヤしながら地図の建物を指差してルイスに意見を言っている。他の生産職業も、物資や鍛治師の待機場所について話している。
グレンは、紅茶を飲みながら会話を聞いていた。
「ルイス様、そろそろログアウトする時間では?」
ランコルさんが、心配そうに言う。
「あ、本当だね。いや、延長して残ろうかな。」
ルイスは、紙に羽ペンで内容をまとめながら言う。
「畏まりました。では、紅茶のお代わりを。」
「ありがとう。皆も、自分のペースでログアウトしても大丈夫ですよ。あ、お疲れ様でした。」
数人が、ログアウトしたのを見送る。
そして、ルイスとグレン……トキヤとマッキーそしてレンジだけになる。他は、ログアウトした。バロンさん達も、寝るらしくお店に戻りました。
「……僕には、とても荷が重いです。投げ出したいなぁ……。でも、投げ出せないなぁ……。」
ルイスは、思わず弱音を吐き出してしまう。
確かに、クラン戦は楽しいが不安や負ける恐怖が、無いわけではない。ルイスは、苦しそうな表情だ。
それを見て、トキヤ達は心配そうにルイスを見る。
「お前が、参謀をしなくなった一番の理由だな。」
トキヤは、思い出したように呟く。
「負けるのは、いつだって怖いですよ。迷惑をかけるのは、嫌だし足を引っ張りたくないですし。」
「気にするな、お前は真面目に頑張っているし。例え負けても、怒る奴なんて居ねぇーよ。」
マッキーは、優しく笑う。
「はぁ……、嫌だなぁ……。クロイツさんのクランって、確か氷華の剣姫ユンゼさんが居ますね。」
「あ、それだけど。お前と敵対するって、聞いたとたんにクランから抜けたらしいぞ。」
すると、トキヤとレンジはニヤニヤする。
「まぁ、β時代のお前のお気に入りだしな。」
「可愛いし、やっぱり惚れてたとかか?」
ルイスは、少しだけ苛ついたが素っ気なく言う。
「あの、才能があったから教えただけですよ?」
「へぇー、気になるな。つまり、β時代のお前の相棒だった訳だろ?やっぱり、強いのかな?」
グレンは、興味と対抗心の視線でルイスを見る。
「強いです。」
ルイスが、あっさり言ったのでグレンは驚く。
「うーん、グレンだったら互角に戦えるんじゃないか?相手は、氷だしグレンは業火だろ?」
トキヤは、ニヤニヤしながら言う。マッキーも、トキヤの考えを理解したのか肩を震わせ笑いを堪えている。レンジも、暢気に笑っている。
「ふーん……」
グレンは、考える仕草をする。ルイスは、ジト目でトキヤ達を見てからため息を吐き出すと言う。
「そのうち、絶対にグレンに敵対するはずです。出来れば、戦って欲しくないですが………。」
「え?何で?」
すると、トキヤとレンジが爆笑する。
「僕からは、何も言いませんよ。」
ルイスは、ため息を吐き出して目を閉じる。
「ユンゼは、ルイスに執着?してるからな。だからさ、奪いに来るぞ。ルイスの相棒、その立場を。」
少しだけ、ルイスの顔色が悪くなる。
「絶対に、クランには入れませんが。」
「うん、俺も入れたくない。」
トキヤは、ルイスの言葉に同意した。
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