第28話不穏・・・

さて、竜国に着きました。僕は、龍人の姿になって歩くとサラの声がする。ルイスは、振り向く。


「おや、龍人様じゃないかい。相変わらず、可愛いねぇー。お姉さんに、会いに来てくれたのかい?」


「七龍様に、緊急の話があって来ました。」


すると、サラは驚いてから真剣に頷く。ルイスが、真剣に言っていると理解したからだ。


「そうかい。でも、七龍の洞窟は神聖な場所。そこの、ヒューマンと精霊獣は街で待機させな。」


「分かってます。では、トキヤさん達は街を探索しつつ待っててください。それと、2匹を暫くお願いしますね。終わったら、僕から合流するので。」


ルイスは、サラの言葉に頷いてトキヤ達に言う。


「分かった、行ってらっしゃい。」


「リルとソルは、任せろ。」


2人は、笑顔で頷く。そして、歩き出した。





さて、まずは七龍へ邪龍討伐戦の報告を。そして、太陽龍様に文句を言いに参りましょうか。


「そうか、ついに目覚めるか………」


「はい。それと、太陽龍様に会いたいのですが。」


事情を説明中………。


「あー、なるほどのぉ………。うん、ワシが連れて行こう。そして、存分に文句を言ってこい。」


大地龍が、苦笑するような雰囲気で言う。


「およ?何か、用か?」


「太陽龍様、何で大切な秘薬を渡すんですか!」


すると、月龍と聖龍はなるほどと頷く。ルイスは、ムスッとしている。しかし、太陽龍は苦笑してからルイスに謝る。聖龍と月龍も、黙っている。


「現時点で、秘薬の調合が出来る可能性のある者はルイス……お前、ただ1人だけだった。報酬と、言っておきながら厄介事を押し付けたのは申し訳ない。だが、邪龍の目覚めが近い今……蘇生の秘薬は必要だったのだ。だが、成功して良かった………。」


ルイスは、深いため息を吐き出してから言う。


「カリオストロでは、駄目だったんですか?」


「………あやつは、蘇生薬を作れなかった。それは、何故だか知っているか?おそらく、カリオストロは言ってないだろうな。そして、知られたくもないはずだ。特に、継承者であるお前にはな。」


聖龍は、真剣な雰囲気でルイスを見る。ルイスは、キョトンとして真剣な表情になる。


「それは、どういう事ですか?」


「太古の昔、蘇生の秘薬を使って邪神を目覚めさせたのは………カリオストロとプレイヤーなのです。」


月龍の言葉に、ルイスは息を呑んで青ざめる。


「カリオストロの、主は誰ですか?」


「もう、この世界には居ません。アカウントを、バンされて戻って来れなくされたようですね。」


ルイスは、真剣に考える。そして、呟く。


「なるほど、1回は成功していたのですね。」


「そうだ。だが、邪神復活の際に濃い瘴気を受けてしまい、錬金術で物を作れなくなってしまった。」


太陽龍は、悲しそうに告げる。


「………どうしたら、良いでしょうか。」


ルイスは、深刻な表情で考える。


「邪神の力を、削ぐしかあるまい。まずは、邪龍を倒してくれると助かる。今の邪龍は、邪神の傀儡だからな。倒すだけで、大きく邪神の力を削ぐ事が出来るであろう。頼む、力を貸してくれ!」


太陽龍は、必死にルイスを見ている。


なるほど、そしたらカリオストロも錬金術が使えるようになる訳ですね。そして、カリオストロは邪龍討伐戦の限定スカウトNPCなのでしょう。


「そうですね。邪龍討伐戦、ワールドクエストですしね。それに、引き金を引いたのは僕ですから。僕も、真面目に全力で参加しましょうかね。」


ルイスは、真剣な雰囲気で考えるように呟く。


「ありがとう……、では秘薬集めを頑張ってくれ。それと、鳳凰は秘薬を持ってはいないからな。」


「まさか、麒麟と霊亀が?」


そうなると、かなりハードですよね。麒麟は、臆病者だし霊亀は頑固者です。ちなみに、鳳凰はお調子者で龍が真面目な設定らしいです。


もう、嫌な予感しかしない。


「それと、これはお詫びだ。」


幼獣の欠片(赤)

何かのキーアイテムであり素材。


ルイスは、少しだけ考えて受け取る。


「分かりました。それでは、行ってきます。」


まず、一番厄介な霊亀からですね。


ルイスは、2人と合流してから始まりの街でレンジと合流。そして、霊亀の住む山に向かった。


「霊亀様、主神ゲレティー様より秘薬を回収しに参りました。私に、どうか生命の秘薬を預けてくださいませんか。必ず、主神様にお届けするので。」


「………ならん。」


拒否ですか?さて、やっぱり頑固ですね。


「何故、駄目なのでしょう。」


「フン、お前のような女紛いの軟弱者に守れるか。」


なるほど、見た目で判断されたんですね。そして、女紛い………。この、失礼な石頭……少しだけ、殴っても良いですかね。女紛いとは、随分と馬鹿にしてきますし。まぁ、出来れば戦闘は回避しますが。


「守れます。どうか、私を信じてください。」


「プレイヤーなど、信用が出来んわ!」


やっぱり、その話を出して来ましたか。


「私は、主神ゲレティー様の命で来ました。」


「だとしても、プレイヤーなんぞに渡せるか!」


うー、石頭!頑固!頭でっかち!


仕方ありません、そういう考えなら僕だって考えが有ります。余り、時間が無いんです。


「なら、どうしたら信じてくれますか?」


霊亀は、鋭い視線で雑用を次々に押し付けます。川の掃除に、樹の伐採や魔物の排除など。僕は、素早く効率よく終らせて何度も交渉します。


「まったく、心配して来てみれば………」


太陽龍は、不愉快そうに言葉を吐き出す。


「霊亀、お前は主の認めし聖王に何をさせてる!」


「我は、プレイヤーが聖王など認めない!」


ルイスは、ため息を吐き出して言う。


「ですが、プレイヤーの力を借りないと、絶対に邪神を倒す事は出来ないのでは?」


でないと、ワールドクエストというイベントが成立しませんからね。さて、どうしましょうか?


「まさか、1000年前みたいに四神だけで倒すつもりか?それは、無理だと言っているだろう。主神様が、四神だけでは倒す事なんて出来ないくらい、力を蓄えてしまっていると言っていた。だから、今だけても協力して貰わんと世界が滅ぶのだぞ!」


太陽龍は、真剣な表情で霊亀を見ている。そして、ルイスは冷静な視線で霊亀を見て微笑む。


きっと、霊亀も自分達だけで倒すことが不可能な事くらい、知っているのでしょうね。ですが、プレイヤーが嫌いな自分の心と役目としての心が反発し、どうして良いか分からなくなっているのでしょう。


ルイスは、トキヤの傷を癒してから立ち上がる。そして、真剣な表情から優しい微笑みを浮かべる。


「僕は、無理に奪うのは嫌いです。予定変更して、麒麟様に会って来ます。だから、その間に答えを見つけてください。もし、渡さないと言っても僕達は霊亀様に怒ったりしませんから。」


ルイスは、荷物を持ちトキヤ達に視線を向ける。2人は、頷いて立ち上がると歩き出す。すると、霊亀に呼び止められてルイスはキョトンと振り向く。


霊亀は、のそのそとルイスに近づき小瓶を魔法で浮かび上がらせ渡す。ルイスは、少し驚いている。


「待て。………秘薬は、主の命だから渡そう。だが、邪龍討伐は手伝わん。精々、頑張る事だな………。」


そう言うと、山奥に入ってしまった。ルイスは、秘薬をストレージに入れて太陽龍を静かに見る。


「かなり、ツンの強い方ですね。」


「………分かるのか?」


ルイスは、苦笑して頷く。


霊亀は、頑固者だが優しい。その証拠に、戦闘にはなりませんでした。おそらく、雑用は僕達の実力を計る為だったのでしょう。ずっと、近くで真剣に様子を見ている感じでしたし。勿論、プレイヤーは嫌いなのでしょう。ですが、実力を認めて秘薬を預けてくれました。何気に、この世界の事を思っての行動だったりするのです。素直では、ありませんが。


最後、邪龍討伐は手伝わない……。でも、応援はしてくれてる訳です。言葉は、素直じゃありませんが。


まぁ、簡単に言ってしまえば霊亀は………。素直じゃない、ツンツンな亀さんなのですよ。


全然、嬉しくありませんが………。


「だいぶ、時間を使ってしまいました。3人とも、大丈夫ですか?あー、無理は駄目です。」


これは、駄目ですね。仕方ありません、最前線の街に行きましょうか。今頃、パニックでしょうけど。




という訳で、戻って来ました♪


取り敢えず、どこかお祭り騒ぎですね。早く、シャルムさんのお店に急がなくては。


「あら、ルイス。どうしたの?」


「装備を、急ぎで修理して欲しいのですが。」


シャルムは、トキヤ達を見てからルイスを見る。


「うん、2人は修理で良いかも。でも、ルイスは新しい装備を作れば?装備が、レベルに負けてて実力を出し切れない状態みたいだし勿体ない。」


「うーん、少し急ぎのクエストを受けてまして。」


ルイスは、悩むような様子を見せる。


「ふーん、何のクエスト?」


「ワールドクエストです。」


ルイスは、疲れたように言う。


「ふーん、ワールドクエスト~♪…………はっ?ワールドクエストっ!?ルイス、あんたまさか!」


「はい、引き金を引いたのは僕です。」


少し、死んだ目でルイスが言えば笑うトキヤ達。


「うわぁーん、生産したいです!」


「それは、大丈夫じゃないか?邪龍討伐戦、ポーション不足が予想されてるし。参加するなら、嫌になるほどポーションを作らされるだろうよ。」


トキヤは、お茶を飲みながら笑う。


「残念ですが、僕は戦う方で参加します。」


すると、その場の全員が驚いて固まる。


実は、このイベントが龍と邪神関連という設定なので関連ボーナスが3つ設けられています。


・龍人とシークレット聖職者1人参加で、防御力が5%上昇。

・7王1人参加で、攻撃力が10%上昇。

・トリガープレイヤー参加で、報酬3倍。


全部、当てはまるんですよね。しかも、7王に関しては称号2つ持ちなので………バレたら、殺されますねぇー。主に、ガチプレイヤー達にですが。


いえ、称号2つ持ってるのバレても殺されますが。


どのみち死ぬなら、貢献してから死にたいです。まぁ、そしたらメンバーが黙ってないでしょうが。


グレンは、真剣な表情で言う。


「だけど、ポーション不足は?」


「お店とアトリエ、2つの全倉庫を解放します。それに、食料も必用でしょう?イベント後、暫くbreezeはお休みしますが。これなら、イベントでの食料とポーション不足は解消されるはずです。」


すると、トキヤは冷静な視線でルイスに言う。


「そうなると、人手が足りないんじゃないか?」


「物資は、全ての生産職業で出し合う作り合うのがルールです。おそらく、お店の倉庫だけで間に合うはず。アトリエには、メンバー以外は入れられませんし。それに、当日は生産職が作るのですよね。なら、人手は必要ないと思われます。もし、物資が足りないとすればそれは………分かりますよね?」


ルイスは、少し冷たい笑みを浮かべる。


「どこかの生産クランが、物資を出し渋っている可能性がある。もしくは………、だな?」


トキヤも、真剣な表情で冷たく笑う。


「まぁ、それをすれば僕達のクランに喧嘩を売る事になります。それを、分かっててしてたなら………容赦は要りません、本気で斬り捨ててくださいね。」


ルイスは、まるでお店をお掃除する時の〔ゴミは、綺麗に掃除しましょうね。〕 というあっさりな雰囲気で言っている。それに、思わず寒気を感じたグレンは悪くないとトキヤは内心頷くのであった。


「「了解。」」


「さて、装備ですが新しいのを頼んでも大丈夫なんですか?その、忙しいのでは?」


すると、シャルムはドンと胸を叩いて言う。


「誰に、言ってるの?あたしは、装備生産No.1クランのリーダーよ?あたしに、任せなさい!」


ルイスは、キョトンとしてから笑って言う。


「本当に、装備に関しては人一倍頼もしいですね。では、よろしくお願いします。出来たら、連絡くださいね。なるべく、早く取りに行きますので。」


「ふふーん、期待して待ってなさい!まずは、2人の装備、きちんと修理するから5時間後に来て。」


ルイス達は、少しだけ不安になったが頷く。


「それで、5時間どうする?」


「まず、マッキーさんに状況を聞きに行きましょうか。今回は、何処のクランが指揮を取るのか。物資の納品場所も、聞かなくてはいけませんし。」


グレンの言葉に、真剣な表情で答えるルイス。


「イベントにおいて、1番大切なのは情報だしな。ちなみに、指揮を取るのは聖騎士こと副団長ノエルと〔聖紳士騎士団〕らしいぞ。納品場所は、ルルド中央公園だそうだ。他に、質問はあるかルイス?」


マッキーが、後ろに立っていた。ルイスは、少しだけ考える仕草をする。マッキーは、頷いて言う。


「もう、本部は出来てるし案内しようか?」


「それで?あちらは、何が目的なんですか?」


ルイスは、疲れたように言えば苦笑するマッキー。


「あちらは、お前さんとのパイプを持ちたいようだぞ?出来れば、同盟参加も希望している。」


「マッキーさんは、どう思いますか。」


ルイスは、マッキーが苦笑したのを見てから呟く。


「なるほど、本当の狙いはパイプを持つ事でも、同盟参加でも無いんですね?狙いは、同盟の掌握ですか。出来れば、彼らの戦闘の幅は広がるでしょう。今回の指揮は、力を示す為と交渉を不利にさせるため……ですか。早めに、指揮を取る人物を変えるべきですね。幸い、まだ決まったばかりで彼の風当たりはまだ強いはず。今なら、外す事も可能ですね。」


マッキーは、ルイスの聡明さに安心する。グレン達は、それを聞いて思わず笑ってしまった。


「まさか、相手が小動物の皮を被った化け物だって知っているだろうに。真っ向から、喧嘩を売る奴が現れるとはな。こりゃ、悲惨だろうな……。」


マッキーは、ルイスを見ながらこっそり言う。すると、聞こえたトキヤとグレンは笑顔で暢気に言う。


「だな。たぶん、同盟関係だし容赦しないだろうからな。プレイヤー達に、激怒されても舌戦と頭脳戦では勝てる人は少ないんじゃないか?理由も正当だし、先に手を出したのはあっちだし。何より、上から見下して圧力かけてくるのルイスは大嫌いだ。」


グレンは、頷いてから言う。


「それに、珍しくイベントにノリ気だったのに。立場を利用して、不利な交渉を挟んできたのに激怒しているんだろうな。でも、ルイスなら大丈夫か。」


すると、トキヤとマッキーは同時に言う。


「「寧ろ、相手側の被害が凄まじいだろうな。」」


「うん、心配すべきは敵側なんだな………。」


そんな、本音………失礼な会話をしているとルイスは呆れた表情である。そして、ルイスは暢気に言う。


「過大評価し過ぎです。僕に出来るのは、相手の立場を陥れて再起不可能なまでにホームを破壊してエンブレムを焼くくらいですよ。まったく………。」


ルイスは、やれやれとため息を吐き出す。


「お前な、普通ならそんな事……出来ないからな?」


「エンブレムは、クランの象徴だぞ?それも、焼くだけでクランの名が落とされるって言うのに……。」


マッキーとトキヤは、疲れたようにルイスを見る。ちなみに、ルイスはというとキョトンとして首を傾げている。グレンも、苦笑している。


〔〔〔本当に、容赦ねぇ………。〕〕〕


ルイスは、暢気に笑うと言う。


「では、案内してください。」


マッキーは、頷いてから歩き出す。

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