第23話 炎天神楽解散と目標

さて、この日がやって来ました。クランどうしの決闘、これは運営公認で許可されています。そして、参加メンバーをいったんクランに入れて炎天に喧嘩を売ってみました。ちなみに、街の中で暴れる許可を貰えます。炎天は、勝負を受けました。


トキヤは、ルイスを見てから暢気に言う。


「それで、ルイス。どう、動くつもりだ?」


「そうですね、主要メンバーだけ残って他は攻めさせましょう。どうせ、相手の人数的に少数精鋭でホームを先に攻めるでしょうから。おそらく、敵のホームには双子が居るので、僕達が精鋭を全滅させても間に合うはずです。そして、馬鹿騒ぎします。」


簡単でしょ?っと笑うルイスを見て笑うトキヤ。


「おい、俺達ならホームを潰せるぞ!」


「いいえ、潰せませんよ。」


ルイスは、暢気に笑ってからあっさりと言う。


「何だよ、信じられないのか?」


すると、レンジは少しだけため息をついて言う。トキヤも、苛立ちを込めてメンバーに言う。


「お前らこそ、ルイスの事を信じてないだろ?」


「それにだ、このクランのリーダーはルイスだ。だって、俺達は場所をと立場をルイスから借りてるんだぜ?炎天を潰すため、クランに入れて貰いポーションも格安で取引してくれてる。作戦の為、このホームを借りてんだ。失敗すれば、このホームが潰される危険があるのに。俺達は、負けてもどこも痛まない。けれど、負けて一番の被害をくらうのはルイスだ。大金と、ホームを失うんだぞ?」


ルイスは、無言で成り行きを見守る。


そうですね。もし負ければ、ホームはボロボロで住めなくなり戦利品としてポーションをかなり奪われるでしょうね。だから、負けられません………。


奪えるポーションは、制限されますがホームを建て直すのに大金が必要になるでしょうし。


ルイスは、表情に出さないようにニコニコ笑う。


「………でも、勝てる戦いだろ?」


「それは、違うよ………。」


ルイスは、反射的に答える。すると、全員の視線がルイスに向けられる。ルイスは、真剣である。


「相手は、クランランキング15位の実力者。決して、舐めて掛かって良い相手じゃない。例え、僕達の戦力が上でも戦略的にひっくり返される可能性があるので。追い詰められた鼠ほど、怖いものは有りませんから。僕からは、以上です。」


ルイスは、立ち上がって周りを見渡す。


「後は、本番に指示どおりやるだけです。」


「いくら、リーダーだからって強引だ!」


「いくら、借りがあるからって調子に乗りやがって。龍人だから、更に天狗なんだろうよ。」


違う……。いつも、そうでした。また、負ける。


「納得が出来ない!ここは、炎天神楽じゃねぇ!ルイスの創った、breezeってクランだ!」


「まったく……、ごめんなルイス。」


グレンの言葉に、トキヤは疲れたように言う。


「ルイス様を、愚弄するな。」


「お前ら、ここは俺達のホームだ。」


「その言葉は、聞き捨てなりませんね。」


キリア・バロン・ランコルは、怒りを隠す事なく言う。ルイスは、ただ無言を貫く。しかし、とあるメンバーがナイフでランコルさんに攻撃する。


ルイスは、素早くランコルの前に立つと、そのプレイヤーを殴り飛ばした。そして、無言で椅子に戻って座る。誰も、何も言えなかった。ルイスは、リーダー権限を使ってランコルを襲ったプレイヤーを無言で除名した。そして、ランコルさんに言う。


「ランコルさん、冷たい紅茶が飲みたいなぁ~。」


「ルイス様、畏まりました。少々、お待ちを。」


ランコルは、頭を下げて部屋から出ていく。


「バロンさん、鍵が掛かっているか見回りをお願いしても良い?もし、開いてたら身内に裏切りの可能性がある。その時は、閉店準備をしてね。」


「ルイス様、了解だぜ♪」


バロンは、足早に部屋を出ていく。


「グレン、今回に使用するポーションの在庫確認とリストを比較してください。足りなかったら、やっぱり身内に敵が入り込んでるはずなので。炙り出して、リストにまとめてください。素早く、リーダー権限で除名しますから。任せて、大丈夫ですか?」


「おう、任せろ!」


グレンは、やる気満々で部屋を出ていく。


「さて、どうしましょうか………。」


「ルイス、俺達は何をすれば良い。」


トキヤは、真剣な表情でルイスを見る。


「おそらく、敵が入り込んでるので炙り出しと除名をお願いします。レンジさんは、メンバー達が変な事をしないように監視をお願いしますね。」


「「OK!」」


トキヤさんは、真剣に頷いて部屋を出ていく。レンジさんは、他のメンバーを観察しているようだ。


「キリアさんは、僕の護衛を任せるね。」


「私の護衛など、必要が無いのでは?」


すると、ランコルさんが冷たい紅茶を渡す。


「やっぱり、美味しい。これで、少しだけ頭が冷えて落ち着ける。ありがとう、ランコルさん。それと、護衛は必要だよ。絶対にね……。」


ルイスは、笑顔で含みの言葉を言う。


「そうですか、分かりました。」


「ちょっと、このまま寝ますね。レンジさん、メンバーを移動させてください。それと、ランコルさんはお使いを頼みたいんだけど。」


レンジは、頷いてランコルはルイスの手紙を懐に入れる。そして、ルイスは暢気に笑って言う。


「キリアさん、この手紙は大切なものだから、やっぱりランコルさんを護衛してください。僕は、このまま少しだけ眠いので寝ますね。」


そう言って、机に突っ伏すルイス。ルイスは、一人になる。すると、静かに数人が入ってくる。


ルイスは、来たねと思いつつ狸寝入りする。


「おい、何をしてるんだ?」


「ルイスに、何をするつもりだよ?」


低い声音で、トキヤやグレン達が更に入ってくる。ルイスは、ちょろいと思いつつ起き上がる。


「バロンさん、キリアさんとランコルさんのフォローに向かって!レンジさんも、出来れば行ってください。ここは、僕達3人がどうにかします。」


すると、二人は急いで走り出す。


「すみませんが、手加減はしません。」


龍人になり、拳を敵に叩き込む。トキヤも、負けじと拳を叩き込む。グレンは、次々に暗殺する。


「さて、茶番は終わりです。ここからは、本気で指揮します。まずは、予定どおり本陣にメンバーを攻めさせて、待ち伏せの精鋭を沈めましょうか。」


ルイスは、龍人のまま外に出るとプレイヤー達は驚いて見ている。まぁ、公認試合なのは知っているので騒ぎにはなりませんが。目立つのは、嫌いです。


「では、敵の本陣に行ってきてください。」


「ふん、潰してやるよ。」


すると、ルイスは困ったように言う。


「皆さんは、時間を稼ぐ動きをしてください。」


「だから、勝てるって言ってるだろ?」


ルイスは、ため息を吐き出して言う。


「なら、貴方は除名するので個人で戦ってくださいね。僕は、無意味な事は言いません。味方を、巻き込んでまで意思を通そうと言うのならば個人でやれば良い。他にも、個人でやりたい人は言ってください。ちなみに、相手にはトリックスターだけではなく天人のわさびさんも居ますが勝算はあります?」


すると、除名された人達が青ざめた。


「かっ、勝てる訳がない!」


「はい、だから時間稼ぎの指示なんですよ。シークレット種族が、二人居れば本陣を守るのなんて容易いですからね。ちなみに、龍人はトリックスターと天人のキラー種族です。そして、僕が最初から行かない理由は警戒を強めさせない為です。彼らも、僕達のメンバーである君達が逃げ回れば気が抜けますからね。それを、僕達主要メンバーが襲撃します。生き残ったメンバーは、ホームで全回復してそのままホームを守って貰い万が一に備えます。」


ルイスの、堂々とした発言に黙り込むメンバー。


「まさか、引き抜きに成功してたのか!?」


「はい、3日前に確認しています。こちらに引き抜くのは、とても容易いのですがクランの方針に合わない人物だったのでやめました。」


ルイスは、素っ気なく言って笑う。トキヤは、驚いてから真剣な表情でルイスを見る。そして、息を呑む。ルイスの目は、笑ってはいなかったからだ。


「ルイス、何か怖いぞ?」


「それは、言わないお約束ですよ。」


ルイスは、暢気に笑ってから言う。


「まぁ、わさびさんは戦闘狂なので予想はしてましたよ。炎天神楽が、簡単に引き下がるとは思っていませんでしたし。はぁー…、早く籠って生産したいのに。僕は、生産が本業なんですから!」


「嘘つけ!生産頭にして、第2参謀だっただろ!さりげなく、俺が手の回らないメンバーに指示を昔は出してたし。逃がすかよ、リーダーだろ!」


トキヤは、思わずって雰囲気で言う。グレンは、驚いてからルイスを見るが、笑顔で本心は見えない。


「確かに、そうだったな。でっ、トキヤ……ルイスは、本気宣言を今回はしているのか?」


レンジさんが、ランコルさん達と帰ってくる。


「してる。敵からは、無慈悲な絶望宣言だって言われてたっけ。何か、懐かしいなぁー。」


メンバーは、驚いて聞いている。そして、時間稼ぎの為にメンバーは炎天ホームに向かうのだった。


「まぁ、俺達の創立者だけの秘密にしてたけど。」


「ルイスは、後半は戦闘に参加しなかったしな。」


2人は、ルイスを見る。リルとソルが、ルイスにじゃれている。ルイスは、もふもふしながら呟く。


「早く終らせて、蘇生薬の素材を集めなければ。」


すると、トキヤとレンジとグレンは驚く。


「ルイス、レシピを持っているのか?」


「………蘇生薬の解放者は、僕ですから。」


ルイスは、真剣な表情で言えば固まる3人。


「ルイス、レシピの解放条件はレベル150だ。つまり、お前は150レベル越えって事かよ?」


「153でしたが、イベントが終わって経験値が入り現在は157レベルですね。」


トキヤは、驚いてから真剣に考える。


「わかった、俺達はヒューマンだから3人で行って来る。終わったら、素材集めを手伝うよ。」


「ちなみに、1つは素材を持ってます。」


「「「はぁ?…………はぁああっ!?」」」


ルイスは、暢気な口調で言う。


「出来れば、鎖を解放してください。そして、素材を集めながらレベル200を目指しましょう。」


3人は、驚いてからワクワクした表情である。


「それ、良いな。絶対に、楽しいだろ♪」


「うぉおおー、何か楽しみ過ぎる!」


「目標も出来たし、頑張るかな。」


ルイスは、ニヤニヤしてから言う。


「そうでしょ?実は、僕も楽しみなんです。ですから、さっさと終わらせちゃいましょう。」


「「「了解♪」」」


さて、精鋭達が来たので歓迎をしなければ。


マッキーさん達も、直ぐに合流して最強メンバーが揃う。ルイスは、動き出しながら言う。


「迎撃開始!」


『了解!』


こうして、一方的な戦闘はあっという間に終わってしまった。ルイスは、戻ったメンバーを待機させ本陣を攻めるべく炎天のホームに向かう。


ちなみに、裏切り者が混ざってた場合に備えて、バロンさんとキリアさんに監視をお願いしています。


そして、本陣……。最強メンバーに、いくらシークレット種族で強いとはいえ複数の強者相手には耐えられず光となって消えた。そこからは、祭りである。


とことん、ホームを壊し吹き飛ばす。


もう、炎天神楽には解散しかないですね。さて、終わりましたぁー。ルイスは、ため息を吐き出す。


「帰りましょう、僕達のホームに。」


「だな。」


グレンは、頷いてホームに皆で帰るのだった。戦利品として炎天神楽のエンブレムを奪った。そして、さりげなくルイスは火の中に放り投げた。


これで、炎天神楽とは縁が切れたと呟いて。




ルイスは、ポーションを作っている。すると、3人がバタバタとアトリエの調合部屋に入ってくる。


「ただいま、ルイス。」


「待たせたな、ルイス。」


「これで、素材を集めに行けるな♪」


ルイスは、嬉しそうに笑って言う。


「3人とも、お帰りなさい。待ってましたよ。」


フィールドは、既に秋になっており紅葉が美しい。ルイスは、立ち上がると満面の笑顔で言う。


「それでは、行きましょうかユニコーン狩に。」


2匹は、ピクッとして立ち上がる。


「大丈夫、置いてきぼりにはしないよ。」


すると、2匹は嬉しそうに笑うのだった。グレンの肩には、鷹の姿の妖精。トキヤの頭の上には、リスの妖精。レンジの腕には、蛇の妖精がいる。


これで、全員のパートナーも揃った。


「目指すは、現在の最前戦の隠れ草原コルパだったよな。でも、凄く遠くないか?」


「問題は、移動手段か……」


ルイスは、二匹を見ると頷いてる。【急成長】が、突然に消えて二匹は進化しました。名前は、変わらないですが人が乗れるくらい、大きく成長したんですよ。そして、スキルが追加されて【幼獣化】に。


つまり、元の姿や大人に自由になれるようになったのです。しかも、シャルムが乗りやすいように鞍を作ってくれました。なので、一人が騎乗を持っていればもう一人が騎乗を持ってなくても乗れるようになったのです。ルイスは、グレンを後ろに乗せる。


「リル、行くよ!ソルは、僕達を追いかけて!」


すると、二匹は答えるように短く吠える。トキヤさんが、騎乗持ちなのでソルに乗って貰っている。


ルイスが、リルに走るよう指示を出せば遠吠えをして走り出す二匹。プレイヤー達は、その光景に見とれたり羨ましいと思ったりした。


二匹は、荷物も人も乗っているのに軽やかに走っている。とても、嬉しそうな雰囲気である。


お店は、ランコルさんに任せてお手伝いNPCを雇う事にしました。だから、大丈夫なんです。


ちなみに、グレンの鷹ボルクは空から追いかけます。そして、トキヤさんの栗鼠ノンノはソルの頭の上です。レンジさんの蛇ヤマタは、腕に巻き付いたままですね。


さぁ、ユニコーンの角を求めてコルパ草原へ!

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