　手袋がひとつだけ落ちていた。

　あー。持ち主はかわいそうだな、気づいたら片方だけとかって、セットで売ってるものだから、バラ売りなんてしていないだろうし。

　以前AirPodsを片方落としたときは、たしかバラ売りあったんだよなあ、でもなんか新品と前からので電池の減りが違ってなんかイラッとするんだよなあ。

　さまざまなことを考え、立ち尽くしてしまった。道のどまんなかにあるし、少しはしに置いといてあげたほうがいいか？　警察にもっていくか？　かたいっぽの手袋一つでなにやら書類を書くのも面倒だなあ。

　しばらく待っているが、誰も来ない。

　仕方なしにわたしは手にして、少しだけ、道の端に寄せて置いた。

　なんだか、なんだか、猛烈に、自分がふがいなくなった。これがお前の優しさか？　とだれかに咎められているみたいに。

　なんと去ることすら申し訳ないのか、すまねえ、手袋。

　はやく持ち主が来ることを祈る。

✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

「今日はなにー？」

「今日はクリスマスツリーの日〜」

ハロウィンが終わると街はクリスマスムードなんですが、ツリーの飾り付けって楽しいですよね。このあたりがタイミングなのか。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい