3月3日
母は雛人形を、ひな祭りの翌日にはすぐ片付けた。婚期を逃すとかなんとか。まあ結局婚期は逃したので、母の努力は虚しかった。申し訳ない。心からおもってないけど。
いま私は母と二人暮らしだ。母は年老いて、わたしのことをまるで幼い娘のように扱う。だったら幼い娘に味噌汁作らすなよ、とは思う。死期の迫った母親が幼い娘に味噌汁の作り方を教える、みたいな話、実話でなかったっけ。
何十年ぶりかに、わたしはひな壇を作り、雛人形を飾った。わりに立派なのだ。
「早く片付けなくちゃ、お嫁さんになるのが遅れてしまうわ」
組み立てているあいだに、母は言った。
せっかちなのだ。準備の段階で、片付けのことを心配している。
「素敵じゃない、いつまでもあっても」
わたしは言った。
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「今日はなにー?」
「今日は桃の節句〜」
雛壇を飾る習慣は廃れ気味ですが、SNSで見かけると、ああ、と感動しますね。
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