第二章 全てを見渡す島
第9話 プロローグ 2 世界情勢
あたしの話に口も出さず黙って聞いていた
「その
「そう、ね。でも、あの場所になかったのよ?
簡単に見つかると思う?」
「なにがなんでも探し出すさ。
それで他に手掛かりはないのか?」
「……あるわよ。だって、まだ話は終わってないもの」
若干にやけながら話したのがいけなかったのか、ルキに代わってアスナが口を挟みだした。
「はぁぁぁ? まだ終わってないですって!?
長いのよ、長いの! 私はともかくルキは一刻を争うのよ! 無駄話をしてる暇なんてないのっ」
「まぁまぁ、落ちつけってアスナ。
大陸に渡って色々見聞きしてきたが、そのドラキュリアとやらは今も島にいて大陸に渡ろうとしている魔人王のことか?」
「そうよ、今も人々の脅威として君臨している魔人王よ」
「ではその剣は見つからず、ということか」
「ん? そんなこと誰が言ったの?」
「あんたが見つけてればとっくに倒してるって話をしてるのよ、ルキは!」
「誰が『あんた』なのよ!
アテナだ、って何回言えば分かるのよ!!」
ことあるごとに突っかかってくるアスナをどうにも好きにはなれない。馬が合わないというかなんというか、どうにも話が上手く噛み合わない。
「待て待て待て、二人とも。
見つけたとしても倒せなかったこともあるだろうし、見つけられなかったっても不思議じゃあない。
甦った魔人王に持ち去られた剣。中々興味深とは思わないかい?
今後のオレ達にも役に立つ話があるかも知れないし、ここは続きを聞いてみようじゃないか」
ルキの言葉にアスナは苦虫を噛み潰したような顔であたしを見返すと、顔をアスナに向け二度三度と軽く頷いて見せた。
「だったら話すわね。
その前にもう少し今の世界のことを教えようかしら?」
「そうだな、オレ達も地理的に詳しくないところもある。そうして貰えると話も飲み込みやすくなる」
「良いわ。
知っての通り、今、世界は大きく分けて二つの軍勢に分かれて争っているわね。人間と亜人の勢力と、人間と魔者の勢力にね。
その二つによって世界の国々はバラバラになり、地域によっては激しい戦闘も起きているってとこまでは大丈夫よね?」
「ああ、オレ達の島でも起きていることだからな」
「なら話は早いわ。ここまで来るのに魔軍に
この島から大陸に渡り北西へ行ったところに小さな国々が集まる場所があるのよ。
そこは世界で唯一激しい紛争地域だと言われ、半数の国は魔の軍勢に攻め落とされつつも反旗を翻すべく今もまだ抵抗し続けているの。
その中の一つ、海沿いにあるルマリア公国から海へと出た小さな島に魔人王ドラキュリアが存在し、その軍勢の進行を海軍が食い止めているっていうのが現状ね」
「なるほどな。
ともすれば、そちらの方に向かうとなれば危険は元より命の保証は出来ないということか」
ルキの理解にあたしは両腕を軽く開きその通りだと示した。
「ま、そうなるわよね。
それでも探さなきゃならない理由があるなら止めはしないし、あたしのせいにはしないで欲しいってことよね」
「ああ、オレには助けたい人が、愛する人がいるからな。このままではいられないんだ」
「愛する人……か。だったら止めることは出来ないわよね。あたしもその為にこうしているんだもの。
……にしても、女の子連れて愛する人を助けるなんて良く言えたもんよ」
「はぁ? ルキはそういう軽い男じゃないのよ! あっちこっちに手を出しそうなあんたと違ってね!!」
「言わせておけばっ!
えぇ、そうね。子供を相手にする大人なんてたかが知れてるものね。
あたしみたいな美貌があれば男なんて勝手に寄ってくるもの、あんたみたいなガキとは違うのよ!」
売り言葉に買い言葉。
そんな喧嘩にルキは呆れたのか、おもいっきり頭を抱え出したが、あたしと
「今の現状は理解したが、当時とは変わっているんだろ?
その時の地理も教えてくれないか?」
「え? あ、そうね。
情勢は今とは違うから若干分かりづらいわよね。
いいわ、教えてあげる」
当時のことを思い出し、頭の中で整理しながら口を開いた。
「当時にも魔者は居たけど、それは魔法大戦の折の生き残りが繁殖した、あるいは何らかの形で魔界との
だから争いは多々あっても、人対人の領土支配の戦争が
国々は復興を諦めた
その中でルマリア公国は大戦の折りに四つに分断された地方を
それがあの辺りの情勢ね。
ちなみに、亜人の存在もほとんど知られることなく隠れ住んでいたりしたのよ」
「それだと、当時は旅をするには苦労しなかったってことか」
「まあ、今よりはって感じよね。
見た目が怪しくない限りはあまり国境で止められることもないし、ある程度の国々はすんなり往来することが出来る状況ではあったわ」
「そういうことか。これで話にもついていけそうだな。
それで、洞窟を出た後はどうしたんだ?」
言われてどこまで話したのか一瞬戸惑ったが、思い出すと人差し指を突き立て二度ほど頷くと
「そうそう。
洞窟を無事に出た後に布に書かれていた内容を話してそのまま船に戻ることにしたんだけど、その前に世界には色んな場所や物が有ることは分かるわよね?」
「ああ、それとなく分かっている。
オレの国にも予言者の塔なるものが造られたしな」
「別名『ラプラスの塔』ね。他にも嘆きの谷や天空の橋、失意の湿原みたいな場所もあるの。
その中の一つ、絶海の孤塔と呼ばれる簡単には近づけない場所があるのよ」
「名前からしても近づけなさそうだもんな。
海の孤島みたいな所なんだな?」
「そうよ。
けど、その場所自体は教えることは出来ないからこれからの話をよく聞くことね。
貴方達に有益な情報になるかもだから」
そう片目を瞑りながら話すとアスナは深い溜め息をついた。
「はぁ。なんで素直に話してくんないのかしら? 教えられないけど話を聞けだの、剣もあるんだか無いんだかさ、何一つとしてハッキリしないんだもの」
「いいのよ、別に聞かなくっても。
聞きたい人には話すし、聞かないなら話さない。今のあたしに出来ることはそれだけだからね」
「待った待った! しっかり聞くから話してくれないか、アテナ。
アスナも頼むから聞いてくれ」
「ふんっ! 別に私はただ本音を言ったまでよ」
「だったらルキには話すから黙ってて頂戴ね。
ええっと、船に戻ることにして先ず海を目指して歩いたの。道中、剣の行方に関して色々と模索したけど何も答えは出ずに無事に船へと辿り着いたわ。
船に残っていた海賊達に簡単に事情を説明した上で、あたし達は街へと戻ることになったのよ」
「まあ、そこまでは何事もなくってことか」
「そうね。けど、それからが大変だったのよ。
何せ海賊達の長がいないんだから、街に残っていた海賊にどう説明するかってね」
あたしは天井を見上げ記憶の片隅まで詳しく思い出すと、一息ついて続きを話し始めた。
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