第88話 異世界
飛ばされた先は暗く狭い部屋。
「…………箱の中か?」
窓のない知らない部屋。
唯一の扉に手を掛け外に出れば、見知らぬ光景が広がっていた。
立ち並ぶ建物も、行き交う者も、何もかもが未知であった。
唖然とするミカを、鎖の音が現実へと引き戻す。
何もかもを救えなかった、護れなかった現実へと引き戻す。
嗚咽を漏らして、暗い暗い部屋の中に閉じこもろうと振り返るとそこには、一人の少年がいた。
誰かなんてわからない。
だけどひとつわかることがあった。
その少年は、紛れもなく自分よりも強い。
いつの間にか、鎖を出していた。
涙を流しながら、何も救えなかった英雄への、死者の意思を護れなかった墓守への、罰が欲しかった。
何が起きたかなど気付けなかった。
突然、地面に落ちた。
鎖を意に介せず少年は、ミカを圧倒的な力の差で沈めた。
「僕はギルティ。これから君は、僕の部下だ」
少年の冷たい声。
冷徹で、波の無いその声が、今は嬉しかった。
「お願いです。僕を、強くしてください」
仰向けに倒れたままミカは涙を流し懇願する。
「神を、神を殺せるくらい、強くなりたい」
涙を流し嗚咽を漏らすミカを、ギルティは温度の無い瞳で見つめる。
「そう。けど僕は何もしない。君が君なりの方法で、勝手に強くなればいい」
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