第82話 二人の旅1

「初日から雨とはついてないな」


その日は朝から雨が降っていた。

小雨ではあったが、うっとしい湿気で肌がべたつく。

旅日和とは言えないが、傘の出費も大したことではない。


「これ、傘必要だったか?」


街を、道を行くのならば傘は使えたかもしれないが、森を行くのなら使いづらくてかなわない。


「水浴びで濡れるのと雨で濡れるのとでは違うの」


「それはわかるけど、枝に当たって凄く進みずらい」


がさがさと音を立て、いつ破けるかわからないような状態で進んでいく。


「それならもっと開けた場所を通ればいいんじゃない?」


「一直線に行くのが一番早い」


最悪マディは鎖で包んで運ぶ気でいた。

それならば、森でも平地でも何も変わらない移動速度で、直線が最も速く辿り着く道となる。

しかし実際は雨が降ったことにより持つことになった傘によって移動速度は下がり、濡れても気にしないと言ってもマディは心配する。

怪我に強くとも、病気や風邪にまで強いとも限らないとそう言って。


「確かに一番早いのはそうかもしれないけど、別に急ぐ必要もないんじゃない?」


「いや、それは…………それもそうか」


最初から時間を掛ける予定だったのだから、道を急ぎ過ぎることもない。

教団に任せた虹色の蛇の情報が手に入れば、そもそもこうして探す旅をする必要もないのだから。


「わかった、それじゃあ森を避けて行こう」


そう言ってミカは転進する。

目的地へ向かうのではなく、まず先に歩きやすい平地を目指し。

代わり映えしない歩きづらい木々生い茂る森を歩き続け、存外すんなりと平地に出ることが出来た。


「とりあえず森の外だけど、街はこの森の先。どうやって行くつもり?」


「森の外周でも回っていけばいつかつくんじゃない?」


「何も考えて無かったのかよ」


「いいじゃない、一緒に長旅しましょ」


表情は呆れから諦めに変わる。


「わかった。君がいいのならそれでいい」


二人は狭い傘の下で身を寄せて歩いていく。

カーリーと出会った街を目指して歩いていく。

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