第83話 同じ塾で隣の席の女の子の誕生日に、デートをします。 ⑥
「こちらのヘルメットを着用してください」
俺は係員のお兄さんからヘルメットを貰い、装着する。
そして、ハンドル操作やアクセル、ブレーキの説明を聞きながら、順番を待っていた。
今から行うアトラクションはゴーカートだ。
どうやらここのゴーカートは凄いらしく、車がまず本物に近い。
エンジンの音は迫力があるし、走るとスピードも結構出るようだ。
後、コースが初級コースから上級コースまであり、上級コースは丘から下るようになっていて、結構クネクネ道がある。
ちなみに俺達は初級コースを選んだ。
流石に車運転したことないのに、中級、上級に行く勇気は俺たちにはなかった。
「ねぇねぇ陸くん。 どっちが上手に運転できるか勝負しようよ!」
「いいよー! でも、どっちが先にゴールできるかでは競わないんだね」
「だってそんなことしたら、勝負に夢中になっちゃってぶつかっちゃうかもしれないじゃん! ここで怪我人は出したくないよ」
「それもそっか」
「ふふーん♪ 負けないんだから」
鈴は胸を張って手を当てる。 ドヤ顔が絵になっていた。
でも、このドヤ顔はきっとすぐ崩されることになるんだろうなぁ。
「俺も負けないよ! だって自信あるもん!」
「え? なんで?」
「俺はゲーセンのレースゲームに一時期ハマりまくってたからね! 運転技術にはちょっと自信あるよ!」
1年生の頃、学年でゲーセンのレースゲームが凄く流行った時期があった。
あの頃はどれだけランクが高いか、タイムが良いかでその人のヒエラルキーが変わるほどだった。
俺は全体で見たら上の下ぐらいの実力だったけど、仲間の中では常にトップクラスの実力だった。
だから、正直負ける気はしない。
ゲームとリアルは違うとは思うけど、繋がっているところはちゃんとあるはずだ。
「あーそういえば1年生の頃、男の子たちの間でレースゲーム異常に流行ってたよね。 それに前遊んだ時、確かに陸くんレースゲーム上手かったね」
「そうそう。 俺もその流行りに乗ってやってたから、結構自信はあるよ! 前は……どっちが勝ったんだっけ?」
「私が負けたんだよ。 でも、あれからテレビゲームで鍛えたから大丈夫なはず! その自信はわたしが砕いてあげるよ!」
そんなことを言っていると、俺たちの順番が回ってきた。
そして、係員のお兄さんの指示で俺達は進み始めた。
「おぉ〜早い速い!!」
俺の前髪が風でなびき、オールバックのようになっていることが分かる。
風切り音がうるさいけど、不思議と嫌ではなかった。
「んあ〜!! 陸くん早すぎるよ〜!」
後ろから鈴の焦った声が聞こえる。
カーブを曲がった時に少し後ろをチラッと見ると、ノロノロだけど安全運転をしている鈴が見えた。
ちょっとスピードを落として一緒に走るか。
俺は他のお客さんの邪魔にならないように運転しながら、隣に鈴が来るのを待つ。
すると、少しして鈴が俺の隣へと来た。
「くそ〜陸くんに情けかけられた〜! 悔しい〜〜!!」
「はっはっは! レース系は俺の方に分があるみたいだね!」
「くそ〜! 次こそは勝ってやるからな〜!」
俺たちは仲良く並んでコースを走りきり、見事にゴールしたのだった。
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