第45話 陸上の秋季大会に出ました。
「陸先輩頑張ってください!」
「頑張ってくるわ。 サポートお願いね」
「はいっ!」
「陸。 気持ちで負けんなよ」
「頑張ってみる。 ユウマも頑張ってね」
「おう! 今回の大会で良い成績出して、次の大会ではお前と同じグループで走ってやるからな!」
あの夏の大会から早くも2ヶ月が経った。
3年生が引退し、各学校新体制に変わっている。
3年生が引退したことにより、部活内で2年生は一番上の学年になった。
各学校の2年生はこの秋季大会で名を上げてやろう、目立ってやろうと息巻いているに違いない。
まぁ、俺もその内の一人なんだけどな。
「それでは5000メートル競走1組目開始します。 選手の皆さんは係員について行き、スタート位置に並んでください」
俺は日陰から出て、ユウマ達の声援を受けながらスタート位置へと向かう。
今回俺は前の大会で良い成績を残したこともあり、1グループ目になった。
番号は遅く、俺より下の番号は2人しかない。
その2人は前回の大会で4位と5位だった人達だ。
俺は前回の大会では2グループ目の3位。
あの激戦を繰り広げたライバル達が最後尾か……。
気を抜いたら俺が最下位でしたとか普通にあるな。
…………負けたくないな。 ここで最下位になって次の大会ではまた2グループ目でしたとか嫌だからな。
俺は足首を回し、その場で2.3回軽くジャンプをする。
そして、頬を2回叩いて気合を入れたのだった。
『On your marks(オン・ユア・マークス)』
俺はスタートの姿勢を取る。
すると、審判が全選手の動きを見て、ピストルを空の方に向けた。
そして、少ししてパァン!というピストルの音が鳴ると同時に選手たちが走り出した。
俺は最初の位置取りでいいところをとるために走る。
前回はそれでいいところをとれたが、今回は1グループの猛者達。
俺より早い人達は沢山いて、俺は最初の位置取りに失敗してしまったのだった。
今回の1グールプ目は総勢35名。
俺の後ろには15人ぐらい。
今の順位は20位ぐらいだ。
……まずいな。 これ以上の速さで走ったら後半ばててしまう。
今のペースを保ちつつ、気持ちは前を向くしかないな。
「はぁはぁはぁ!」
懸命に走る。
でも、なかなか上位グループとの差は縮まらない。
それどころか、今いる中位グループの中でも出遅れ始めた。
俺の調子は悪くない。
それなのに差を詰めるどころか、差が縮まらないなんて。
これが1グループ目の凄さか……!
「はぁはぁはぁ!!」
走り始めて中盤。
俺はなんとか中位グループにしがみついていた。
でも、順位は少しずつ落ちてきている。
……くそっ!
「陸! 気持ち負けてんぞ! 前でろ前!」
ユウマの声援が聞こえる。
「陸先輩ファイトです!」
ユウマの隣にいる後輩が必死に声をかけてくれる。
「ゴーゴーレッゴーレッゴー陸!!」
スタンドにいる仲間達の熱い声援が聞こえる。
…………負けてたまるか!!
俺は必死に走る。
途中、後輩からペットボトルを奪い、水をぶっかけて身体を冷やした。
「はぁはぁはぁ……!!」
気持ちは常に前を向いていた。
負けるもんか!と強い心を持って走った。
でも、俺と同じかそれ以上に前を走っている選手達は必死だった。
『カンカンカンカンッッッ!』
300メートルぐらい離れている先頭の選手がついに最後の1周になった。
俺は中位グループにいることもできなくなり、下位グループの一番前を走っている。
……1周抜かしはされたくない。 それは俺のプライドが許せない!!
ゴールまで残り700メートル。
俺は1位に1周抜かしをされたくない、少しでも順位をあげたいという気持ちで走った。
しかし、健闘空しく、俺は順位を変えることができずにゴールしたのだった。
「ぜぇ! ぜぇ! ぜぇ!」
俺は走り抜けてレーンから外れ、少しずつスピードを緩める。
ゴール地点にある電子時計を見れば、自己新記録が出たことは分かる。
でも、嬉しさよりも悔しさの方が圧倒的に強かった。
よく部活の顧問から『他人よりも自分と闘え! 相手は自分だ!』と言われてきた。
それを聞いて確かにそうだなと思った。
でも、やっぱり新記録を出しても悔しいもんは悔しいよ……!
俺は強く拳を握る。
予選を突破して本選、県大会に出場できるのは上位12名ぐらいだ。
俺の順位は35人中、26位。
自己新記録を出しても、予選突破することはできなかった。
「次の大きな大会は来年の5月。 それまでに記録会とかに出て記録を伸ばす……! 冬は走り込みに筋トレだ……!」
俺は悔しさを忘れないようにしながら、次はもっと良い成績を出すのだと誓ったのだった。
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10.000PVいきました。
これも読者の皆様のおかげです。
ありがとうございます!
これからもこの小説をよろしくお願い致します。
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