義兄妹の異世界無双

第69話 義姉兄VS悪魔 決着

「兄、さん」

「月奈っ！？」

　城の地下で大きな魔力を感じ『黒斬撃（ブラック・スラッシュ）』を放つと共に降りた俺と万能の神装ヤミこと、黒色の剣【闇夜ノ剣（やみよのつるぎ）】。

　そんな俺たちを迎えた光景は、倒れている月奈とメイさん。その二人を守るように立っているフィートとフクロウのような魔物。そして一人で悪魔に立ち向かおうとしてる姉さんだ。

「月奈、月奈！」

　そんな光景を見て、すぐさま月奈に駆け寄る。

　見たところ魔力がかなり減っておりほぼ魔力枯渇状態だにある。そんな状態にあるにも関わらず、月奈は無意識的なのか魔眼を発動しており、その色が黄色に加えて、薄っすらと赤色が加わっている。

「兄、さん。無事で、よかったです」

「あぁ、何とかな。……頑張ったんだな。あとは俺に任せてゆっくり休んでくれ」

　月奈の頭を優しく撫でると、月奈は力が抜けたのか目を閉じ眠る。

「メイさん。すみませんが、月奈をお願いします」

「えぇ、任せてください」

　月奈をメイさんに任せると、その二人を守るようにフクロウが羽を広げて二人を囲む。

　そんなフクロウを見ると、まるで「二人は任せろ」とでも言ってるような目をしている。

　初対面だが、なかなかに有能なフクロウだな。

　俺はフクロウに二人を任せ、姉さんのもとに歩く。

　そんな俺の横にフィートがミャ―と鳴きながら飛んでくる。

「そうだな、お前も戦いたいよな」

　俺はフィートを連れ姉さんのもとに着く。

「冷夜くん……」

「姉さん。神装手に入れたんですね」

「うん。みんなのおかげでね」

　姉さんが手に持つ鞭を見せてくる。

　その瞬間、【闇夜ノ剣】が反応する。

「きゃっ！？」

【闇夜ノ剣】は勝手に俺の手を離れ、鞭の神装に触れて魔力を奪う。

「おい、ヤミ！」

【闇夜ノ剣】は俺の言葉を無視して魔力を奪うと、満足したのか俺の手に戻ってくる。

「何をしてたんだ？」

【なに、ちょっと奪われたものを返してもらっただけだ】

「？……まぁいい、今は悪魔（あいつ）を殺すのが先だからな。姉さん」

「あ、うん！」

　姉さんはあっけに取られたように固まっていたからか俺の声に大きく反応する。

「いろいろと聞きたいことはあると思いますが、すべてはあの悪魔を殺した後っていうことで」

「うん、そうだね。まずは目の前のことから」

　俺たちは互いに武器を手になじませ、暴走している悪魔（ばりす）のもとに歩く。

「……いくぞ、『狂戦士（バーサーカー）』」

　黒い魔力が俺を包み込み片目に紅が灯る、さらに【闇夜ノ剣】が俺から溢れ出す魔力を吸いとり俺の暴走を抑制する。

「いくよフィート。『巨獣化』」

　次いで姉さんが魔法を発動させ、フィートを巨大化させる。

　そんな近づいてくる俺たちに反応し、バリスが手を向けてくる。

「『魔力重圧（マジックプレッシャー）』」

「っ！？重いっ……」

　その瞬間、大量の魔力が真上から押しつぶすように襲ってくる。

　だが今の俺なら黒い魔力により、そんなものは効かない。

　見たところ姉さんもなんとか耐えているが、

「今義妹が寝てんだから魔力重圧（そんなもの）使うんじゃねえよ！『黒斬撃（ブラックスラッシュ）』」

　俺は大量の黒い魔力を込めた【闇夜ノ剣】を振るう。

　すると魔力重圧が消え、姉さんはいきなり重圧から解放された影響かわずかに体勢を崩す。

「はぁ、はぁ。冷夜くん、何したの？」

「まぁ、端的に言いますと部屋全体の魔力重圧を斬りました」

「そんなこと出来るの？」

「本来なら無理ですね。でも【闇夜ノ剣（こいつ）】のおかげでそれが出来てます」

【闇夜ノ剣】はもともと万能の神装だ。

　この万能というのは、持つ人によって姿かたち能力を変えるということらしい。

　俺の場合はこの万能の神装を剣の形にした。

　そして俺の万能の能力は『絶対斬撃』。

　その名の通り、ありとあらゆるものを斬ることが出来るという能力だ。

　本当は「全てを破壊する」とかの能力にしようと思ったが、ヤミが言うには、「剣という形をとっている以上、その形に一番合った能力が無理なくその力を発揮できる」ということらしい。

「俺があいつを斬るので、姉さんとフィートはサポートをお願いします！」

「うん！任せて！」

「ミャ―！！」

　姉さんとフィートの力強い返事を聞き、俺はバリスに向かって走る。

「『魔力大砲（マジックブラスター）』」

　バリスは空虚な目でこちらを見ながら、巨大な魔法陣から巨大な魔力の光線が俺に向かってくる。

　俺はそれを目の前にしながらも速度を落とすなく【闇夜ノ剣】を突き出し、魔力大砲を防ぎながら突っ込む。

　魔力大砲を防ぎ切り、バリスまであと数歩まで来た。

　だがその瞬間、

「……『魔力大砲・連射』」

　俺の周囲を囲むように、いくつもの巨大な魔法陣が出現する。

　さすがにこれには足を止めざるを得ない、と思ったが

「フィート、『火炎球』！」

「ミャッ！！」

「……『魔力障壁（マジックバリア）』」

　フィートが口から巨大な炎の球を吐きバリスを攻撃する。

　バリスは一瞬考えるような素振りを見せながら魔力障壁をはりフィートの攻撃に備える、だがそのせいなのか俺の周りに展開された魔法陣が消える。

　フィートの炎の球は見た目以上の威力があるようで、バリスの魔力障壁を破壊するがさすがにバリス本体には届かない。

　だがその攻撃はバリスに危機感を抱かせるには十分なようで攻撃対象が俺からフィートに移り、フィートの目の前に巨大な魔法陣が現れる。

「『魔力大砲』」

「フィート！避けて！！」

　姉さんは必死に叫ぶ。だがフィートが避けるよりも先に魔法陣から光線が放たれるその瞬間、

「『黒斬撃』」

　俺が放った黒斬撃が光線が放たれる前に、魔法陣を切り裂く。

「ありがとう。冷夜くん！」

　俺は姉さんの感謝に頷いて答えながら、バリスに向けて黒斬撃を飛ばす。

「『魔力障壁・多重展開』」

　だがすぐにバリスは魔力障壁を大量に展開する。

　黒斬撃はすべての障壁を破壊するが、バリスは上空に逃げ黒斬撃を避ける。

「ちっ、やっぱ直接斬らないと厳しいか……」

　俺は足に魔力を込め、上空に向かって跳ぼうとするが、その前に姉さんがフィートに乗って近づいてくる。

「冷夜くん乗って！」

　言われた通りにフィートに乗り、フィートはバリスに向かって飛ぶ。

　そんな俺たちに向かって、バリスが大量の魔力光線を放ってくる。

「無駄だ！『黒斬撃』」

　今さらどこから来るか分かっているような魔力光線など効かず、俺がすべて切り裂く。

　そうして近づいてくる俺たちから逃げようとバリスが翼を動かすが、

「もう逃がさないよ！」

　姉さんが鞭を振るい、バリスを拘束する。

「冷夜くん！」

　姉さんの声と共に、俺はフィートの背を降り、バリスに向かって跳ぶ。

「………『魔力大爆発（マジック・エンド・バースト）』」

　バリスは俺を巻き込んで死のうと魔力を限界まで上昇する。

「ヤミ、これで終わらせる。頼むぞ」

【うむ。主（あるじ）の力、魔力、感情、その全てを我に込めよ！】

「いくぞ！！『狂戦士（バーサーカー）』アァァッ！！！！」

　俺は狂戦士の力を限界のギリギリ、それ以上に引き出す。

　そして増大した黒い魔力と、あふれ出るバリスへの怒りと憎しみを、【闇夜ノ剣】に込める。

「【闇夜ノ斬撃（ダークナイト・スラッシュ）】」

「っ！？…………」

　黒い魔力を纏った【闇夜ノ剣】がバリスを切り裂いた。

　斬られたバリスは、意識が永遠の闇に消えながら落ちていく。

「魔王、……さま………」

　床に落ちた瞬間、バリスの身体は粉々になりながら消滅し、その身に宿した魔力は霧散していく。

「はぁ、はぁ。終わっ、た……」

「冷夜くん！」

　力を使い過ぎたせいか、戦いが終わったせいで力が抜けたのか、俺は空中でよろよろと降下しているところをフィートと姉さんに拾われる。

「ありがとうございます。姉さん」

「ううん。こっちこそ、ありがとう冷夜くん。少しだけ寝ててもいいよ」

　俺は姉さんの言葉に甘え、姉さんの肩を借りて少し眠りについた。