第68話 義兄と力の契約
(冷夜視点)
【目覚めろ】
……頭が痛い、身体もあちこちが痛い。
【目覚めろ】
力を入れようとしても上手くいかず、考えようとしても頭が働かない。
【目覚めろ。………めざ、目覚めろと言っているだろうが!】
「ん。さっきからうるせぇなっ……」
ぐったりとしたまま目を開くと、目の前に白い杖が浮いてる。
………どうやら壁に打ち付けられたときに頭も打ったらしい。
俺はちゃんと目を覚まそうと再び目を閉じる。
【だから、目を閉じるな!起きろ!】
う、うるせぇ。
頭に直接響くせいでうるささ倍増な声に仕方なく従い、目を開ける。
やはり目の前に杖は浮いている、幻覚ではなかったらしい。
「お前は、剣の神装の遺跡にいた奴だよな?」
【ようやく目を覚ましたようだな】
「あぁ、目は覚ましたが……で、お前は何なんだ?」
【今は我のことを気にしてる場合じゃないだろう。今の状況を理解していないのか?】
……なんだろう、こいつ。一人称が我で話し方もなんか古い、こいつを気にするなってほうが無理だと思うが。
【
あぁ、そうだ。あの
今すぐ殺しにいかないと……。
「……体が動かない。しかも魔力が……これはお前が影響だろ?」
身体が動かないのは壁に打つ付けられた影響だろう。
そして身体のそこから湧き上がってくる黒い魔力、これが杖に吸い取られているのが薄っすらと見える。
【ふむ、それはすまないな。ただ、我が起きたのは主のせいというかおかげというかだからな……】
「どういうことだ?」
【そも我はあの遺跡から主の身体に入り、失った力を回復していた。そんな中突然憎悪や憤怒の大きな感情、そして膨大な魔力を感じ取り起きたのだ】
「それで俺の黒い魔力を使って回復したと?」
【そういうことだ】
剣の神装の遺跡で封印され、俺の黒い魔力を吸い取って回復し、話す浮いている杖。
ほんとこいつ何なんだ?
「なんにしてもだ。俺の魔力の吸収を止めろ。じゃないととてもじゃないが戦えない」
【あぁーそれなんだが。ちょっと無理っていうか、なんというか】
「はぁ?」
【待て待て、そう睨むな。えぇっとだな、主の身体に入り、魔力を吸収したことで主と我との間にパスができたのだ。それにより我は継続的に主の魔力を自動で吸い取ってしまうわけだ】
「………」
【お、おい?】
「………」
さて、どうする?
魔力がなくなったわけじゃないが、吸い取られる魔力が多すぎる。
黒い魔力が十分に使えないとなると、あの魔力を妨害される魔法を使われたら戦いようがない。
【おいっ、おいっ。……おいと言っているだろうが!】
「っ!?びっくりした。いきなりでかい声だして、こちとらお前のせいでやりづらくなった
【う、うむ。それについてはすまないと思っている。だが少し我の話を聞け。今から我が言う通りにすれば、悪魔を殺すことも容易になるぞ?】
「そんなもんがあるなら最初から言って欲しかったんだが。………何をすればいい?」
【いい判断だ。まぁ、そう難しいことは無い。我と主の間にあるパス。これを強固で明確なものにする。つまりは契約を結ぶ】
「契約か。まるで悪魔みたいなことを言うな」
【確かにな。だが力というものはどれも似たようなものだ。相手に勝とうと思うならば、相手と同等以上の力か、相手と対する力。この二つの力しかない】
相手と同等の力と対する力。
「お前はどっちなんだ?」
【我がどっちかだと?決まっているだろう、どっちもだ!我の力は悪魔を凌駕し、悪魔の天敵たる力を授けよう!】
「そいつはとてつもなくありがたいな」
【そうであろう!では始めるぞ。と言ってもやることは二つだ。一つ目は我の力の形を決めろ】
「力の形……」
俺は目を閉じ、意識を集中させる。
【形は明確に、細かなところまで作ることで専門的に、大幅に作ることで汎用的になる】
杖の言葉を聞きながら、一つ一つの力を組み合わせ組み立て作り出す。
やがて杖は杖の形から、俺の思い描いた形に変化していく。
【いいぞ、力が明確になりパスが安定している。次で契約最後の工程だ。我に名をつけろ】
名前かそうだな、お前の名前は……。
【………なるほど、いい名前だな。我は万能の神装、ヤミ。今より星空冷夜を
こうして万能の神装と名乗ったヤミは俺の思い描いた黒い剣となり俺の手に収まる。
「……ふぅー。魔力は安定した。魔力で強化すれば身体もなんとか動かせる。それに最強の武器が手に入った。よし、行くぞ【
【うむ。記念すべき初陣としよう、わらわの
俺たちは悪魔を殺すため、月奈たちがいる地下に向かった。
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