第67話 義妹の怒り
(月奈視点)
私たちは無事に神装を手に入れることが出来ました。
そして私はみんなに回復魔法をかけ、体の調子を確認し終え立ち上がります。
「ではすぐに兄さんのもとに行きましょう!」
さすがの兄さんでも、一人では魔王軍幹部を倒すのは苦戦してるでしょう。
正直すぐに兄さんの手助けをしたいという気持ちでいっぱいです。
「そうだね。みんな回復したみたいだし、行こうか!」
そして私たちが神装の部屋からでた瞬間、
「皆さん、伏せて!!」
頭上から強力な魔力を感知し、魔力の障壁を張ると同時に叫びました。
そしてみんなが伏せ、その上にフクロウがみなを守るように羽を広げ、その上から障壁を張った数秒後、頭上から魔力の光線が天井を突き破って落ちてきました。
「ゴホッ、ゴホッ。みんな大丈夫?」
魔力光線により半壊した物置とそれにより舞い上がったほこりに姉さんが咳をしながら姉さんが声を上げる。
「はい。無事です!」
「私も、問題ありません」
私とメイさん、そしてフィートとフクロウの鳴き声もしみんなが無事であることが確認できました。
そして起き上がると共に、私は光線が放たれた方を見ると、膨大な魔力を持つ人影が見えます。
その魔力はとてつもなく気味が悪くおそらく奴が魔王軍の幹部でしょう。
舞い上がったほこりが晴れ、視界が良好になった時、私たちは上空で黒い羽を広げ角を生やす、いわゆる悪魔と呼ばれる者の姿がありました。
「ふむ。すでに神装は入手済みでしたか、すこし厄介ですね」
悪魔は姉さんの方を見ながらつぶやきます。
この国の王と同じ声で。
「あなた、王様なの?」
姉さんは鋭い眼で悪魔を睨みます。
そんな姉さんの問いかけに悪魔は笑いながら答えます。
「えぇ、わたしがこの国の王をしていたビラド=セカンですよ。もっとも本来のわたし名は、バリスと言いますが」
そうしてバリスと名乗った悪魔。
ですが私には他に聞かなければならないことがあります。
「兄さんはどうしたんですか?」
先ほどから兄さんの魔力が感じられません。
あの悪魔の魔力が強くて魔力感知が機能しにくくなっているとういうのもありますが、それでも全然感じることができません。
「彼なら上の方で気絶してますよ」
気絶?兄さんが?
なんの冗談かと思った瞬間、悪魔は言葉を続ける。
「あぁ、でもかなりの傷を負わせましたからね、死んでいるかもしれませんね。はははは!」
「そんな、冷夜くんが……」
姉さんが言葉を失い、
「落ち着いてください。おそらく悪魔の嘘です」
メイさんが私たちに言い聞かせるように言う。
ですが正直それらの言葉は私の頭に入っていません。
私の頭にあるのは、……あれ?なんでしょう。
メイさんの言う通り兄さんがやられるはずがありません。
ですが兄さんの魔力を感じられないのも事実です。
でも兄さんは大丈夫だと言いました。
けど兄さんはこの場に居ません。
私の頭の中はぐるぐると回ります。
そのたびに深い絶望や不安が襲い掛かり、ですが兄さんなら大丈夫だという思いが浮かんでは消えます。
そこで私は一つの結論を出しました。
それは、
「あの
兄さんの安否を確認するのにも、あの悪魔が邪魔をするに決まってます。
それにどのみち
完全に一致した思考に私の頭はクリアになりやるべき行動を起こします。
「『彼の者に絶望を……』」
私は熱くなる魔眼を発動させ、なぜか浮かんでくる魔法の演唱を唱えます。
「月奈ちゃん?」
姉さんが心配そうな目で私の方を見ますが、私は気にせず続けます。
「『彼の者に断罪を……』」
私が演唱をするたびに、大量の魔法陣がどんどんと展開されていきます。
「ふむ兄妹そろって妙な技を使いますね。どうにも早めに潰した方がよさそうです!」
悪魔がこちらに向かって魔法陣を展開させます。
ですが今攻撃されると面倒です。
私がそんなことを考えていると、姉さんとメイさんがフクロウに乗り、悪魔に向かって行きます。
「月奈ちゃんの邪魔はさせないよ!」
「カグラ様、悪魔は魔法か魔法の武器で無ければダメージは与えられません!」
メイさんの言葉に姉さんは「分かってるよ」と腰のホルダーから短魔剣を取り出し魔力込めます。
「冷夜くんから貰った短魔剣、使わせてもらうよ!」
姉さんはフクロウに乗りながらすれ違いざまに短魔剣を悪魔に突き刺す。
その攻撃は悪魔に効いており、展開していた魔法陣が閉じられる。
「っ!?これは、魔剣ですか?しかも勇者の魔力が、ほんとに面倒ですね」
悪魔は短魔剣を抜き取ろうとする。
だがそれを姉さんたちは許さない。
「ぶっつけ本番だけど新しい力を試すよ、フィート!」
姉さんはフィートに魔法を発動させます。
すると、フィートどんどんと大きくなり、人を乗せられるくらいに巨大化しました。
「神装から得た魔法、上手くいってよかった。わたしはフィートに乗って攻撃するから、メイさんはフクに乗って攻撃を!」
それぞれを乗せた二匹は悪魔を翻弄するように飛び回り、攻撃を仕掛けていく。
そんなみんなのおかげで私は演唱に集中できます。
「『その力は全てを壊す。その力は全てを滅ぼす。その力の名は……』」
私は全ての魔法陣の展開を終え、二人と二匹が悪魔から離れた瞬間をに発動をさせます。
「『破滅』」
その瞬間、魔眼が激しい熱と共に光、魔法陣からは赤い光線が放たれました。
それは悪魔に直撃し、
「が、あぁぁぁあああぁぁあぁぁ!!?!!?」
一瞬にして、悪魔を戦闘不能まで追い込みました。
ぼろぼろになった悪魔ゆっくりと地面に落下していきます。
殺しきれなかったのはおそらく直前に障壁でも張ったのでしょう。
さすがに私も魔力が空っぽなのでこれ以上の戦闘は避けたいですが……。
______
(バリス視点)
赤い光線が放たれる直前、
「あれはまずい!『魔力障壁』」
わたしは持ちうる魔力のほとんどを使い、障壁を張りました。
それでもこれほどの威力。
今のわたしは意識を保つのがやっとで指の一本も動かせず、ゆっくりと地面にらっかしていくのが分かります。
ですがわたしはこのまま死ぬわけにはいきません。
なぜならわたしは魔王軍幹部、魔法様から頂いたこの力、地位をやすやすと手放すわけにはいきません。
どうか魔王様、今一度わたしに力を!
そう願った瞬間、
【よかろう。この力で勇者と神の手先を殺せ】
わたしの身体に力が満ちていくのを感じた。
___________
(月奈視点)
「………嘘、だと言ってほしいですね」
悪魔が、あの
ですがその眼はとても意識があるようには見えず、ただ魔力量が増大していくのを感じます。
これは、
「月奈ちゃん!」
姉さんがフィートから降りて私に近づいてきます。
「大丈夫?」
「はい、ですが魔力はもうほとんど残っていません。それに、とどめまでいけませんでした」
私は姉さんの肩をかりながらフィートに乗ります。
「うん。でも今はこの場から離れないと、っ!?」
フィートが飛ぼうとした瞬間、膨大な魔力が私たちを上から押しつぶすように襲ってきます。
「これは、あの悪魔のせいでしょうか」
「これじゃあ、飛べない。メイさんは!?」
姉さんが上の方を見るとよろよろとしながら降りてくるフクロウとメイさんの姿が見えます。
「メイさん!」
私たちは落下したメイさんとフクロウに近づきます。
幸いにも二人に傷は無いようです。
「これは、少し困ったことになりましたね。上から逃げられないとなると、正直逃げる手段がありません。それに、」
メイさんはいまだ魔力の増大を続ける悪魔を見る。
「今の私たちであれを倒せるとは思いません」
「っ、それはわたしでも無理かな?」
確かに姉さんの勇者の力は有効だと思いますが、
「正直に言えば、まだ勇者の力を使いこなせていないカグラ様では厳しいと思います」
私もメイさんの意見と同じだ。
でも姉さんは笑顔を浮かべながら私とメイさんの頭を撫で、鞭を手に取ります。
「フィート、フク、二人を守って。あれはわたしが相手をするから」
私とメイさんは「だめだ」と言おうとしますが、
「大丈夫、勇者の力があればきっと。二人を守って見せるから」
姉さんは笑いながらそう言い、悪魔のもとに歩きます。
私はダメだと思いながら、姉さんを止めることはできません。
おそらく、いえほとんど確実に姉さんは勝てません。
ですが私はこういう時、頼りになる人を知っています。
その人は私が望めばいつだって助けてくれると、
「王様、ううん。悪魔バリス、あなたを倒す!」
姉さんの声に、意識が無いにも関わらず悪魔が反応します。
そして瞬時に魔法を放ち、姉さんに直撃する直前、
「切り裂け!」
上空から飛んできた黒い斬撃が魔法を切りました。
その斬撃を追うようにして降りてくる、全身を黒で統一し、黒い剣をその手に持つ私が世界で一番信頼してる人。
「兄、さん」
兄さんが星空冷夜が上空より現れました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます